- 野平 史彦
- 株式会社野平都市建築研究所 代表取締役
- 千葉県
- 建築家
対象:住宅設計・構造
うちの息子が通っていた中学では、クラスの4人にひとりが一人親家庭であるという。
それを聞いたときは驚いたが、調べてみると、この中学だけが特別ではないことが分かった。
一人親家庭(単親世帯)とは、母子世帯か父子世帯のいずれかになる訳で、
平成15年の調査では、母子世帯が122万5,400世帯、父子世帯が17万3,800世帯となっている。
日本の全世帯数からみると、単親世帯は3.1%に過ぎないが、年代別にみると20代から30代後半までの単親世帯が圧倒的に多いのである。
従って、クラスの4人にひとりが単親世帯である、というのは特別この地域だけに限って多いということではないのである。
単親世帯になる主な原因は勿論、離婚によるものだが、しかし、離婚の増加によって日本の家族が崩壊して来ていると見るのは短絡的すぎる見方である。
実は、明治期の離婚率はそんな現代の1.5倍もあったのだ。
それで日本の家族が崩壊したか,と言えばそうではなかったのだから。
この単親世帯の収入を見てみると、父子世帯の平均年収は320万円、母子世帯は162万円となっており平均的な一般家庭の年収500万円台を大きく下回っている。
このように、単親世帯には“家を建てる”という余裕はないのであり、「クラスの4人にひとりが単親世帯」ということを僕が知らないで来てしまったのは、住宅の設計を依頼して来る人達は、常に残りの4人のうちの3人の親だからである。
僕らの仕事がどれだけ社会的な意味を持っているのか、と考える時、
こうした単親世帯に対して、僕ら設計者は無力なままでいいのだろうか、とフッと思ってしまった。