- 寺崎 芳紀
- 株式会社アースソリューション 代表取締役
- 東京都
- 経営コンサルタント
-
03-5858-9916
対象:経営コンサルティング
- 戸村 智憲
- (経営コンサルタント ジャーナリスト 講師)
こんにちは!株式会社アースソリューションの寺崎でございます。
今回は、地域包括ケアシステムをを構築するために、医療ニーズの高い方をどう支えるかについて、引き続き述べさせていただきます。
前回、訪問看護ステーションにおける現状と介護保険上の報酬算定についてお伝えしました。
今回は、グループホームについてです。
グループホームは「認知症高齢者共同生活介護」と呼ばれます。少人数(5~9名/1ユニット)の認知症高齢者が、介護職員のサポートのもとで共同生活をしていくサービスです。
要支援2以上の方が利用対象となり、かつ地域密着型サービス(原則として施設所在地に住民票のある方しか利用できないサービス)となります。
グループホームは共同生活の場ですので、例えば寝たきりの方や医療ニーズの高い方は、基本的に入居対象として想定しておりません。その理由もあって、いわゆる施設系(厳密にはグループホームや有料老人ホームは介護保険上の「施設(特養・老健・介護医療院)」ではなく、在宅系のサービスに括られますが、説明の便宜上「施設」と言います)で唯一「看護師」の配置が義務付けられていません。
その代わり、地域の訪問看護ステーションと連携し、定期的に入居者の健康観察等を行います。その取り組みに対して「看護連携体制加算」を算定することが可能となります。通常は利用者1名あたり1日39単位となります。
1日約400円の計算になりますので、入居数18名でしたら1日7200円程度ですね。
この金額では、とてもじゃないですが看護師を1日雇用することは難しいため、通常のグループホームは「訪問看護ステーションとの連携」を活用するケースがほとんどです。
実際では、施設とステーションとで連携契約を結び、施設が算定した加算額のうち一定割合をステーション側に支払うという運用です。
しかしそれまで元気だった方も、入居年数が長くなると、認知症等の病状の進行やADLの低下が顕著となるケースも出てきます。共同生活ができなくなると、場合によっては退去していただくことにもなります。
サービスの性質上やむを得ない部分もありますが、実際はそんなに杓子定規に測ることはできません。
従いまして、施設の判断により、入居者ご家族とよくよく話し合いつつ(あるいは入居契約時に説明)、重篤化した場合の対応について取り決めをしているのです。
現実には、グループホームでできる医療行為には限界があります。全面的に介助を要する方についても、ある程度の線引きをせざるを得ないこともあります。だから、方向性(施設としてできることとできないことの線引き、限界が来たときに施設がどう対応するするかについて)を定めるのです。
しかし、近年ではそれが難航し、結果として施設側が大変な苦労をしてサービスを行っている現状があります。
そこに、地域包括ケアシステムの構築という話が出てくるものだから、グループホームとしてはたまりませんね。
そこで、前回報酬改定において「看護連携体制加算」が拡充されました。具体的には3種類に増え、1名あたり1日49単位(加算Ⅱ)、同59単位(加算Ⅲ)が新設されたのです。従来の加算は「加算Ⅰ」となりました。
しかし、これがまた厳しいものでして・・・
新設された「看護連携体制加算Ⅱ」「同Ⅲ」は、施設内に看護師を配置することを必須としています。しかも、「常勤換算で1名以上配置」となっているだけでなく、たん吸引等の医療的ケアの実績も求められます。単に看護師を配置するだけではダメで、医療的ケアを行う実績を求めるということは、重篤な入居者様の存在が必要ということです。
1日59単位ということは、約600円。18人でしたら約1万円強です。
常勤換算とはいえ、私は看護師を1日1万円のコストで配置できる自信はありません。これができるのは、複数の事業を併設している大手の法人位しか思いつきません。
実際に、当該加算(加算Ⅱ・Ⅲ)の取得率は、Ⅱが1.04%でⅢが1.94%とのこと。
加算Ⅰを算定しない事業所はいかがなものかと思いますが、ⅡとⅢについては算定するのは極めて困難。というより、ほぼ不可能だと思います。
グループホームの入居者は、入居年数が長くなれば経年変化によりADL低下や病状進行は避けられない。
それでも、地域包括ケアシステムを構築しようというなら、グループホームの現状も何とかしなければなりません。
少なくとも、看護師を1名普通に配置出来る位の基本報酬もしくは加算を確立しないと!
次回は、介護付き有料老人ホームについて取り上げます。
このコラムの執筆専門家
- 寺崎 芳紀
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- 株式会社アースソリューション 代表取締役
介護事業所の開設から運営まで、オールワンでお手伝いいたします
有料老人ホーム施設長・訪問・通所介護管理者・老健相談員、事業所開発等の経験を活かし、2007年7月に弊社を設立しました。介護施設紹介サービスをはじめ、介護事業所の開設・運営支援等を行い、最近では介護関連の執筆活動にも力を入れております。
このコラムに類似したコラム
~医療ニーズへの対応~地域包括ケアシステムを推進するために⑤ 寺崎 芳紀 - 経営コンサルタント(2020/07/05 08:00)
これからの介護② 寺崎 芳紀 - 経営コンサルタント(2020/10/20 08:00)
~医療ニーズへの対応~地域包括ケアシステムを推進するために③ 寺崎 芳紀 - 経営コンサルタント(2020/07/03 08:00)
~医療ニーズへの対応~地域包括ケアシステムを推進するために② 寺崎 芳紀 - 経営コンサルタント(2020/07/02 02:00)
今後の介護保険を取り巻く状況について④ 寺崎 芳紀 - 経営コンサルタント(2020/06/18 08:00)