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林仲宣「租税手続法の解釈と適用」

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雑感 書評
今日は、税理士(特に試験組)が意外と弱い租税手続法の分野やそれに
係わる判例研究をまとめた研究書を紹介したい。

林仲宣「租税手続法の解釈と適用―納税者の視点からの考察―」
(税務経理協会2009年2月)

林先生は横浜で長年税理士事務所を開業されていながら、大学でも教鞭を
取られ、現在は名古屋の椙山女学園大学の教授でいらっしゃいます。

林先生とは、我が師匠西野敞雄国士館大学教授について日本税法学会に
参加させて頂いて以来ですから、もう10年以上、日本税法学会関東部会を
中心にご指導を賜っている私が理想とする実務家教員の1人である。

本書は、林先生から頂戴したものであり、
そのお礼も兼ねてここで紹介させて頂きます。

本書は林先生が書きためた論文の中から、特に租税手続法の分野にあたる
論文をまとめ、収録したものですが、適切な加筆訂正がなされております。

特に本書で読んで頂きたいのは、見落とされがちな更正の請求に関する
第1部第1章〜第4章である。
国税通則法が試験科目にないためであろうか、多くの税理士が苦手とする
分野であり、更正の請求の期間徒過によるミスは少なくない。

例えば、今年の確定申告であれば、法定納期限は3月15日であるが、
当日は日曜日で税務署はお休みである。
そのため、申告期限は休み明けの3月16日(月)となっている。

多くの税理士はこの休み明けの申告期限ということを、
常識であるように感じているであろう。

本当にそうであろうか。

休み明けの申告期限というのはあくまで自己申告や自己納付を円滑に
行うための特例措置であり、特例措置が設けられていないものについては、
あくまで法定申告期限厳守であり、法定申告期限内の開庁日が期限なのである。

更正の請求には特例措置が設けられていないため、今年であれば、
3月13日(金)5時までに更正の請求をしないと、
期限徒過になってしまうのである。

この点については、本書では取り上げていないが、本書が取り上げる
事案も問題が多いところである。

更正に関連して、第2部第3章では嘆願書の問題が取り上げられている。
嘆願書の存在は、法が予定しているものではないが、実務的には
それなりの効果が期待されているものといえよう。
嘆願書を提出することによって、税務署長による職権更正をお願いするという
効果である。

その意味で、
「嘆願書は、最終的に納税者にとって有利になることを目的とするが、
任意とはいえ課税庁側から要請されることは多い。
しかし納税者が自主的に嘆願書を提出することは、納税者の事情をアピール
する意味からも何ら問題はない。
その意味からすれば、本事案におけるB税理士は、不手際があったといえるだろう。
顧問契約上の義務というより、税理士業を情報サービス業とする見地からすれば、
少なくとも嘆願書の提出という手段があることは説明すべきであったといえよう。」
(本書117ページ)との指摘は、業界に対する警告を含んだ至言である。

また、第2部第7章では、平和事件最高裁判決を取り上げ、
「さらに「当時の裁判例等に照らせば、被上告人の顧問税理士等の税務担当者
においても、本件貸付けに本件規定が適用される可能性があることを疑って
しかるべきであった」と指摘する。
判決で引用された昭和55年10月22日東京地判は、通常の経理処理で発生
したと思われる無利息融資に対する課税を容認した事例であり、経理事務の
日常からすれば異論を呈したい判決である。
しかも解説書等の発行時よりも古い時期に出された判決である。
税務の現場においては、残念な現実といわなければならないが、判例より
国税職員等が執筆した解説書の記載の方が優先される。
本事案の場合、「個別、具体的な事案に則した検討」ではなく、運転資金の
無利息融資の是非という本質論で検討するならば、本件各解説書を踏まえた
判断は実務上、しごく当然な行為である。」(本書154ページ)
と指摘する。

実際、現在でも、大蔵財務協会等から出版される実務指南書は、
表書きから執筆者の官職名が外れてからも、業界内のベストセラーである。

実務的には、国税職員の執筆した実務指南書がバイブル的に使用されている
現実には判決後も何も変化はない。
しかし、裁判所が以上のように考えている限り、判例研究の重要性が
薄れることはない。

最後に本書第2部第9章において税理士の役割について言及する。

「裁判所は、「本件契約は税理士にも税務労務の対価として報酬等の利益が
ある有償契約であるから、民法651条の適用はなく、期間の定めなき
継続的契約の解除として、民法617条、627条の趣旨も斟酌し、事務処理等に
必要な相当期間を経て終了するとみるのが相当であ」る、と判示する。
税務労務という見解は、裁判所が、会計業務が税理士の本質と定めている
ことから、当然の帰結であるが、筆者にとっては初見の表現である。
確かに会計業務を概観すれば、会計資料をコンピュータに入力することや
会計データを精査することで、会計帳簿や関係文書を作成する作業は、
会計帳簿等を製品と考えれば、出来高制の労務の対価と見えるに違いない。
しかしながら、会計ソフトは、会計処理を容易にするが、会計ソフト自体は、
簿記会計の知識や会計処理に影響を与える税務知識の修得を増進させるもの
でもない。
税理士の持つ専門的知識が付加されることで会計基準や租税法規に適合した
形式が整う。
会計業務は、機械的な単純な作業ではない。」(本書170ページ)

税理士は専門家としての矜持を持って情報サービス業を旨とする
プロフェッショナルとして、計算屋ではない適正な租税知識の提供を
推し進めていく必要があろう。

税理士会において積極的に租税法の啓蒙活動を取り組んできた林先生の
後を追うものとして、専門家責任という問題に取り組んでいきたいですね。

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