- 森岡 篤
- 有限会社パルティータ 代表
- 建築家
対象:住宅設計・構造
ベランダの手摺は、建築基準法で高さが110cm以上と規定されており、安全性から、さらに高めの手摺を採用するマンションも少なくない。
ヨコの手摺子(手摺の立上り部分)は危険なので、高層マンションではタテの手摺子か、パネル状がほとんどと思われる。
それでも小さな子供が、手摺を乗り越え、落ちてしまう。
なぜなのか。
ベランダに置かれた「モノ」
多くのマンションのベランダに置かれている、エアコンの屋外機が原因となっていることが、多いようである。
屋外機の高さは、60〜70cmである。
何らかの方法で屋外機の上に登ると、手摺上まで50cm程度になってしまう!
幼児は頭が重いため、手摺に鉄棒のように寄りかかると、そのまま落ちてしまうことが少なくないという。
屋外機以外でも、ベランダに箱状のものを置くと、その上に登ることができ危険。
手摺に物干しを取り付けていることも多いが、これもよじ登る要因になるという。
高所平気症
もう一つの大きな側面は、高層マンションで育った子供達の恐怖心の欠如で、高所平気症と呼ばれている。
成人は、成長過程での恐怖体験等、無意識のうちに、大なり小なり高所に対し恐怖心を持つ。
ところが、高層マンションで育った子供は、生まれた時から高さ数10mのベランダを見ているので、高所に対する恐怖心を持たない。
室内と同じ感覚で、ベランダではしゃいでしまう。
ジャングルジムやブランコ等の遊具で遊ぶことで、実体験として高所の恐怖を身につける必要性が言われていて、私もそのとおりだと思う。
その遊具はというと、こちらもさまざま事故を起こしており(高層マンションの落下とは重大度合いが異なるが)、責任を負いたくない自治体は、次々と撤去し、今公園から遊具が消えている。
自分の成長過程で、取り立てて特別な注意を払われた記憶もなく、子供は放っておけば育つのではないかとも思うのだが、環境は確かに変わっている。
これからの子育ては、自分の体験による価値観だけでない、一歩踏み込んだ配慮が必要なのかもしれない。
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