【実例】 ビジネス改革の副作用 - 経営戦略・事業ビジョン - 専門家プロファイル

伊藤 健之
ユー・ダブリュ・コンサルティング 代表
経営コンサルタント

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閲覧数順 2024年04月19日更新

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【実例】 ビジネス改革の副作用

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社員のやる気がない「真の原因」
こんにちは。グランデコンサルティング 伊藤健之です。

今回は、誤ったメソドロジー導入による副作用の代表例を、我々が現場に行ったヒアリングの
結果からレポートしてみたいと思います。

(前コラム「社員がやる気を失う原因 〜 ビジネス改革の副作用」の続きになります)
コラムリンク


*業務改革(BPR) 
業務改革の検討を行う場合、まず初めに現行業務分析をしますが、その代表的な作業は「業
務フロー図の作成」です。現行業務の流れを「見える化」し、ムリやムダを見つけ出し、それを
排除した新しい効率的な業務プロセスを描いていくわけです。

しかし、実務を回していくために必要な「情報共有」「助け合い」「イレギュラー処理をこなす柔
軟性」などといったものは業務フロー図に表すことはできません。
ましてや、その背景にある「気持ち」「スキル」「知恵」「人間関係」「風土・文化」などといったも
のは、紙に描いて共有することができないため、検討のスコープ外になります。

この結果、何が起こるのでしょうか?

前述した可視化しづらい工数は切り捨てられ、スリム化された業務と体制が出来上がり、人が
削減されるわけです。
短期的には業務コストが下がり、企業としては成果がでましたが、こうした効果は長続きするの
でしょうか?
イレギュラー処理が発生したり、助け合いが必要な場合、どこからその工数(時間)を捻出する
のでしょうか?

業務改革後に、一人当たりの事務量が増大し、人が疲弊している組織はたくさんあり、そうした
組織では、昔なら当たり前にできたことが、機能しなくなってきております。

「例外的な案件を担当者がこなす柔軟性がなくなった」
「仕事の手順ややり方を押し付けられ、やる気や工夫する意欲がそがれた」
「業務フロー図に表現できない仕事が切り捨てられて、そうした仕事に関わるノウハウ・知識が喪失した」
「ベテランの経験に依存した業務やイレギュラー業務が回らなくなった」

などという副作用を生み出してしまっているケースがとても多く見られます。


*目標管理制度(MBO)
組織の目標を個人目標に落とし込み、個人に数字をコミットさせます。
組織は、その数値を定期的にチェック・評価していく、という非常に論理的かつ合理的な管理
方法ですが、どんな問題があるのでしょうか?

代表的な副作用を挙げましょう。
「自分の数字にならないことはやらなくなってしまう」
(コミットしたこと以外はやらない)
「会社全体やチームへの貢献などを考えなくなる」
(シナジーがなくなる)
「合格点指向になる」
(できる人は目標値以上のことをやらなくなり、できない人は仕事の質を下げてでも、目標達成
しようとする現象を生む)

次第に職場がギスギスしてきて、人と人とのつながりの希薄化します。
「声をかけてくれない」「声をかけられない」「相談できない」。
結果として真面目な人から潰れていくケースが多いです。
ある会社では、毎年10%近い人たちが長期の休養をしなければならない状態になり、従業員
の疲弊の連鎖が止まらなくなっています。


以下、そのほかのメソドロジー(合理的な方法論)の副作用を簡潔に挙げてみたいと思います。

*成果主義
短期的には、数字への意識が高まりぶら下がり社員の意識を変えることに貢献しましたが、
数字以外の貢献を軽視してしまった場合には、
「仲間との競争や助け合わない雰囲気などで、職場が楽しくない」
「ニンジンをぶらさげられているようで、馬鹿にされている気がしてやる気を失ってしまう」
などといった副作用を生み出しています。


*人材の流動資産化
短期的には、雇用契約期間内の成果にこだわるようになり生産性向上に貢献しましたが、従
業員に「自分たち交換可能な部品」という誤った認識をもたれてしまった場合には、
「短期に成果があがることしかやらない」
「次の仕事があるか分からないため、いつも不安」
「もらっている給料以上のことを会社に貢献したいという気がしてこない」
といった副作用を生んでしまっています。


*メソドロジーの副作用のまとめ
私は、こうした副作用を2つの大きな問題に分けて考えることができると思っています。

**【生産性の低下】
「協力し合えばスピーディに判断・行動できたことができない」
「お互いに押し付け合い、調整に時間がかかる」
「ちょっとしたお願いが反発を生み、仕事が止まってしまう」
「役割分担すれば早く終わる仕事が協力を得られず、時間がかかってしまう」

こうした経験を何度もすると嫌になり、人に頼まず、すべて自分でやるという感情になります。
本当は任せればいいものも、自分で抱えてしまい、さらに生産性を低下させることにつながる
のではないでしょうか。

**【品質の問題や不正の発生】
「お互いが関わらず、協力し合えないことで、互いのミスが発見できない」
「あるいは、互いが仕事を押し付けあって、空白地帯ができてしまう」
「問題と感じていても、お互いが踏み込んで指摘しない」

これが最終的には、組織の自浄作用を失わせ、品質への信頼を揺るがせるような大きな問題
を引き起こしてしまうのではないでしょうか。


みなさんは、どのように感じましたでしょうか?


次回からは、「人間的な要素とはどんなもので、どのように痛められ、どうしたら回復できるの
か」について書いていきたいと思います。


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