コンピュータ・ソフトウェア関連発明の成立性(第15回) - 企業法務全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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コンピュータ・ソフトウェア関連発明の成立性(第15回)

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コンピュータ・ソフトウェア関連発明の成立性
 〜精神活動が含まれる歯科治療システムの発明〜(第15回) 
河野特許事務所 2009年3月9日
執筆者:弁理士  河野 登夫

6.おわりに

 日本の特許法は太陽の下にある総ての創作を保護対象としているのではなく,特許法2 条1 項および29条柱書の規定を満たすものを保護対象とする。そして行政はその規定の解釈の幅を広げることで現実に即した施策を取ってきたのである。過去を振り返ると,今後とも時代の要請で解釈の幅が広がる可能性は否定できない。判決が新しい道標を作っていくことも勿論考えられる。その先にはまもなく誕生から半世紀を迎える特許法の全面改正が視野に入って来るであろうし,その場合には発明の定義の見直しは必定であろうと思われる。
 従前の「審査基準」に基づく視点からは本判決には否定的な見方をせざるを得ないが,特許制度による保護範囲拡大のブレークスルーになる,という見方もできないわけではない。そのためには理詰めの分析が行われるべきであったと思われる。
 一方で,本願発明1 のシステムにつき権利行使の場合におけるイ号物件の特定には困難が伴うであろう。発明の主題であるシステムはハードウェアと人智(人の精神活動)とにより構成されているからである。この観点からは直接侵害としての権利行使は不可能であろうと思われる。間接侵害についてみると,ハードウェアと人智とを組み合わせることが「物」の生産に当たるか(特許法101 条1 号,2 号)どうかについての議論は不可欠であろう。