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〜精神活動が含まれる歯科治療システムの発明〜(第8回)
河野特許事務所 2009年2月20日
執筆者:弁理士 河野 登夫
4.2 現行の「審査基準」
現行の「審査基準」は(6)を基本に,複数回の改訂を経たものである。コンピュータ・ソフトウェア関連発明特有の判断をする必要がない発明については特許要件一般について記述した。
第II部第1 章 産業上利用することができる発明における
1.1 「発明」に該当しないものの類型
において発明の成立性についての考え方が記載されている。本稿の「1.はじめに」において記載したようにこの章には「自然法則を利用していないもの」として,自然法則以外の法則(例えば,経済法則),人為的な取り決め(例えばゲームのルールそれ自体),数学上の公式,人間の精神活動が例示され,発明がこれらに当たるとき,あるいはこれらのみを利用しているときは,発明に該当しない,と規定している。これは,人間の精神活動を一部利用しているときにも「発明に該当する」,と判断しうる余地を残した規定であると言うべきである。
コンピュータ・ソフトウェア関連発明特有の判断をする必要がある場合に参照すべき「審査基準」の
第VII部 特定技術分野の審査基準
第1 章 コンピュータ・ソフトウェア関連発明
においては,基本的な考え方として
「ソフトウェアによる情報処理が,ハードウェア資源を用いて具体的に実現されている」場合,当該ソフトウェアは「自然法則を利用した技術的思想の創作」である。」を挙げ,判断の具体的な手順を示している(同第1 章2.2.2)。本件の審決及び判決では第VII部第1 章は参酌されていないので詳述はしないが,この手順では
請求項に記載された事項に基づいて,請求項に係る発明を把握する。
とされ,また留意事項として
「ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されたもの」が発明の詳細な説明及び図面に記載されていても,「ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されたもの」が請求項に記載されていない場合には「発明」に該当しないと判断されることに注意する。
との記載がある。
つまり,自然法則の利用性の判断は請求項の記載に依ることを明記しているのである。
(第9回に続く)