コンピュータ・ソフトウェア関連発明の成立性(第7回) - 企業法務全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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コンピュータ・ソフトウェア関連発明の成立性(第7回)

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コンピュータ・ソフトウェア関連発明の成立性
 〜精神活動が含まれる歯科治療システムの発明〜(第7回) 
河野特許事務所 2009年2月18日
執筆者:弁理士  河野 登夫

4.考察
4.1 日本における発明の成立性に関する特許の「審査基準」の変遷

 前述したように特許法第2 条には同法で保護対象とする「発明」を「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう」と定義している。この定義は現行特許法が制定された1959 年当時のまま変わっていない。コンピュータまたはコンピュータ・プログラムを利用した発明が「自然法則の利用性」を満たすか否か,というのが日本におけるこの種の発明の保護を図っていく上での課題であった。
 特許法は第1 条に「産業の発達に寄与すること」を同法の目的とする,と規定する。1970 年以降日本の産業構造が2 次産業から3 次産業へシフトしていく一方,情報処理技術がめざましい発展を遂げた。このような時代背景の中でコンピュータ・プログラムを利用した発明の保護を図らないようでは特許法の目的を達することはできなかった。
 「発明」の定義を改めることなく,特許法の目的を達成し,また産業界にニーズに応える,という難しい課題に対する行政の回答が,以下に示された「審査基準」などによる法律の弾力的解釈なのである。
1975 年12 月
 (1) コンピュータ・プログラムに関する発明についての審査基準(その1)
  (コンピュータプログラムに関する発明が「方法」の発明として特許され得ることを明示)
1982 年12 月
 (2) マイクロコンピュータ応用技術に関する発明についての運用指針
  (マイクロコンピュータ応用技術に関する「物(装置)」の発明は特許され得ることを明示)
1988 年3 月
 (3)コンピュータ・ソフトウェア関連発明の審査上の取扱い(案)
  ((1)「その1」と(2)「マイコン指針」の関係を整理)
1993 年6 月
 (4) 改訂審査基準第VIII部特定技術分野の審査基準
  第1 章「コンピュータ・ソフトウェア関連発明」
  (自然法則の利用性の要件を明確化)
1997 年2 月
 (5) 特定技術分野の審査の運用指針
  第1 章「コンピュータ・ソフトウェア関連発明」
 (媒体特許を認める)
2000 年12 月
 (6) コンピュータ・ソフトウェア関連発明の審査基準
  (プログラム自体の特許を認める)
  (ビジネスモデルについての審査方針)
2002 年9 月
 (7)特許法改正(プログラムは「物」である,とした)
 (1)で方法の発明が,(2)で物の発明がどのような基準で保護対象となるかが明らかにされた。(3)は(1)(2)の暫定的統合版であった。
 審査基準全体の見直しの中でコンピュータ・ソフトウェア関連発明についても見直しが行われ,自然法則の利用性について新しい考え方が示されたのが(4)であり,現在の審査基準の基礎となっている。(5) は,コンピュータプログラムを記録した記録媒体の保護をするというアメリカでのガイドラインに倣って,同趣旨の規定を入れたものである。データ構造を記録した記録媒体も保護対象となった。
 (6)はソフトウェアが記録媒体の形で,つまりパッケージで,販売されるだけではなく,通信網経由でも販売されることが多くなってきたためにプログラム自体を特許として認める,という究極の施策を打ち出したものである。そして,(7)では法改正により,(6)の基準を追認することとした。
 このような経緯を経て日本では他国では見られない「コンピュータ・プログラム自体の発明を物の発明として保護する」という法制度を有することになった。
(第8回に続く)
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