- 大澤 眞知子
- Super World Club 代表
- カナダ留学・クリティカルシンキング専門家
カナダのCBCテレビのニュースが川崎で起こった痛ましい殺傷事件を伝えていました。
「日本ではこのような残虐な無差別殺人は多くはないが、確かに起こっている」との報道です。
The motive for the attack was not yet clear, but there were no immediate fears of a wider security threat. There have been previous examples of mass stabbings in Japan, sometimes involving the vulnerable.
(CBC)
このような事件が起こるたびに、「なぜこんな事が起こったのか。。」と日本全体が衝撃を受けますが、あらゆる角度から「なぜ」を追求するわけでもなく、犯人の生い立ちや生活の様子を「学校の校長」「近所の人」「働いていたが辞めた会社」からのコメントをニュースメディアが追いかけて終わり。
そしてまた次の事件が起こる。
すでにネットに溢れる「1人で死ね!」「社会が手など差し伸べる必要はない!何の罪もない子供を殺しておいて!」「世の中辛いことはいっぱいあるし、精神的に病んでいる人はいっぱいいるのに、なんでお前はこんなことをした!」には、殺伐とした日本の世論を感じます。
いくら何でも、そろそろクリティカルシンキングを基にした原因究明への科学的分析が必要ではと真摯に憂います。
Abnormal psychology, Brain Psychologyなどを紐解いてみると、このような無差別殺傷事件への緒が見えて来るはず。
実は、カナダ・アメリカでは、かなり以前からSchizophreniaに代表される精神疾患と犯罪との関係に注目しています。
全人口のわずか1%に満たないSchizophrenia人口にも関わらず、アメリカで服役中の囚人のうち15~20%が何らかの精神疾患を患い、その中でもSchizophraniaの割合が非常に高いという数字に注目してのことです。
また、ホームレス人口のうち1/3はSchizophraniaが占めるというのも注目すべき事実です。
Schizophrenia の症状は広範囲に渡り、すべてが現れるわけではありませんが、今までに起こった無差別殺傷事件の犯人像も形を持って眼の前に現れ、不気味な気持ちになります。
現実から乖離し
家庭でも、友達関係でも、学校や職場でも機能せず
幻聴や幻覚があり
自分だけの世界に引きこもる
「人が自分を襲う」「見張られている」「周りはみんなで自分への嫌がらせをしている」などの被害妄想が起こる
偏頭痛
認知症のような行動をする
Temporal Lobe (側頭葉)てんかん発作(自分の行動への認識がなく、記憶もない場合が起こる)
思考に一貫性がなく、発言がまとまらない/その結果周りの人が自分を馬鹿にしていると思い込む
Schizophrenia患者の約15%は自殺する可能性が非常に高いとも研究論文が示しています。
Schizophreniaの原因、治療法についても長年に渡り膨大な研究が行われており、結果としての科学的根拠を基に様々な取り組みが行われています。
刑務所での検査、治療はもちろん、出所後も面倒を見るシステムが整っています。
Community Mental Health Centre, Aftercare, Day Centre, Halfway Houseなどが、出所後のSchizophrenia患者の面倒をみています。
はい、刑期終了!あとは自分で生きて行きなさい!と放り出すことはありません。
「Schizophrenia患者を守ること=社会の人を守ること」になるからです。
特にHalfway Houseは、このような精神疾患を病んだ元犯罪人が社会で行きていくための手助けをするグループホームのような所です。
専門のスタッフの助けにより、社会で自立して生きられるよう訓練をする場所です。
つい最近、余りにもSchizophrenia の症状がひどいため、Halfway Houseの入所を断られた元囚人の記事を読みました。
その場合は病院に収容し、社会復帰が出来るまで面倒をみるのだと思います。
もちろん、Schizophreniaの症状を持つ人みんながケアを受けているわけではありません。
診断の難しさ、診断を受けることへのためらいに加え、特に今のトランプアメリカではこのような社会弱者を大きく切り捨てる政治を行っていますので、今後アメリカの犯罪が凶悪化していく傾向にあることが懸念されています。
もともとSchizophrenia を持つ人々の40~60%は必要な治療やケアを受けていないと報告されていたアメリカの今後の状況は、重篤な精神疾患を抱えた人を野放しにする危険な社会の見本になる可能性がありますね。
ほぼ毎週のように起こる銃乱射事件も、この一環かも知れません。
日本で「統合失調症」の診断を下されるのは相当なトラウマがつきまとうでしょうね。
精神疾患への人々の態度も、科学より感情が先に立ち、頭から否定する傾向もあるようです。
まずは、専門家が声をあげ、Schizophreniaの人たちに手を差し伸べる方法を提唱すべきだと思います。
政府にも大いに働きかけて。
テレビのインタビューに出てくる「専門家」は大抵「おそらく孤立していたんでしょうね。やけになったのではないかと思います。」レベルの、近所の噂話コメントをしているのにも驚きです。
誰でも言えますよね、こんなBSは。
こんなコメントも読みました。
「社会がどれだけ成熟しても防ぎようがない。もどかしさだけが残り結論が出ない。」
は?
結論が出ないなら、最初から「なぜ」を考え直せばいいのに。
「どうしたら防ぐことが出来るのか」と最初に戻り、科学的根拠を基に考えればいいのに。
どう考えても論理的に説明出来ない凶悪無差別殺傷事件。
もしかして「論理的に考えられない脳」の人たちが起こしているのでは?と考える時だと思います。
このコラムの執筆専門家
- 大澤 眞知子
- (カナダ留学・クリティカルシンキング専門家)
- Super World Club 代表
カナダにいらっしゃい!
カナダ 在住。パンデミック後のNew Normal 留学をサポート。変わってしまった留学への強力な準備として UX English主催。[Essay Basics] [Critical Thinking] など。カナダから日本に向けての本格的オンライン留学準備レッスン・カナダクラブ運営。
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