- 大澤 眞知子
- Super World Club 代表
- カナダ留学・クリティカルシンキング専門家
日本の高校の1年間カナダ高校体験プログラムが大流行ですね。
内容はピンからキリまで、実に様々です。
まぁ1年で帰って行く日本人なので、受入側も気楽だそうです。
卒業のルートに乗せる面倒と責任を感じなくてもいいですから、カナダのSchool Districtでは長期の卒業を目指す留学よりも大歓迎している短期体験です。
とにかくいい経験して帰ってね〜と、受け入れればいいだけの「楽ちん受入」だと聞いたことがあります。
中国など途上国からの高校留学生は、カナダの高校の卒業資格、カナダでの大学進学、その後の就職・移民などを視野にいれた長期計画でやって来ます。
南アメリカからやはり1年の短期でカナダの高校に来る留学生は、正規の高校単位を取得し、その成績証明も得て帰国して行きます。
英語力も相当高い生徒がほとんどですし、コミュニケーションも上手だし、精神的にも大人です。
そんなカナダの高校留学事情の中、日本の高校から派遣される短期体験は一種特殊なカテゴリーだと言えます。
また、不思議なことは、日本の学校とカナダの受入学校とが直接交渉するのではなく、間に日本のエージェントが入るんですね。
なぜでしょう?
大切な生徒、しかも未成年の生徒を送り出すわけですから、学校独自が現地の環境を十分調査し、学校独自の方針を理解してくれる受入先を探すべきだと思いますが。
英語が出来ないのでしょうか、なぜかエージェントにアレンジお任せが習慣のようです。
もちろん、エージェントには手数料を取られますのでその分生徒の負担も増えると思いますが。
そのような日本の学校の短期体験に来ている高校生が、ホストのことで辛い目にあっているとコメントをいただきました。
「ある日本人高校生のホームステイでは、60日間でホストマザーが手作りご飯を作ってくれたのは、たった4回。
他は冷凍食品。 しかも、マザーが「私はお皿洗うのが嫌いだから」という理由で、留学生がお皿洗い。
その高校生は体調を崩してしまった。」
送り出した日本の高校では「留学は孤独との戦い、日本にいたときの自分がいかに恵まれていたかを知る機会にもなる。」との方針らしく、その高校生も我慢を続けていたそうです。
また、スマートフォンも禁止、親との連絡は手紙(!)のみという状況も問題が放置された原因のようです。
その後親からの連絡で日本の学校の知る所となり、受入側が動き出したということですが、あとの顛末はお聞きしていません。
いただいたコメントの最後に、
「学校からの留学なので安心しきっていましたが、カナダのホスト事情の悪さを実感しました。 アルバータ州でのことです。」と。
実は、この一件をお聞きした時、2年前にカナダの方から直接聞いた話を思い出しました。
やはりアルバータ州でホストを何度もしていた方からです。
もう退職した白人ご夫婦で、子供たちも成人し、環境の良い大きな家に住んでいます。
手作りの食事も量も種類もふんだんにあり、ホームステイ費用などより「外国からやって来る未成年」を放っておけないとホストを受けてきた方です。
いわば、日本の親からすればカナダの理想のホストでしょうね。
「聞いて聞いて。前にホストした高校生は日本の変な高校から送られて来ていたの。日本の親との連絡は原則禁止、携帯も禁止。 コンピューターも学校で使う以外は禁止。エージェントは感じ悪く、最初に生徒を連れて来たあとは全くなしのつぶて。これは人権侵害も甚だしいと思うわ。日本の国はこんな学校の横暴を許しているの?」
人権問題だと、その方はかなり怒ってました。
「そんな規則は守らなくていいと生徒に言ったわよ。そして、同じ学校から来て、他の地域にいる同級生とも連絡を取らせて(学校は禁止しているんだって!信じられない!)、そのホストたちともネットワークを作り、みんなを合流させる機会を作りましたよ。当たり前でしょ!その学校のやっていることは一種の子供虐待よ!」
それ以降、ホストは真っ平だとも、つばでも飛んで来そうな強い口調で話してくれました。
その日本の学校の方針には、日本の親はもちろん賛成し子供さんを送り出したのだと思います。
その方針に口出しするつもりはありませんが、学校にも親にも実際にカナダに来る生徒のみなさんにも認識していただきたいですね。
カナダの良い大人たちの目には「子供の虐待、人権侵害」に映ってしまう方針だということを。
文化や人権についてかなり異なる考えを持つカナダに、日本側の一方的な方針を押し付けてしまう危険を感じた一件でした。
カナダの良いホストたちは、残念ながら、どんどん引いてしまいました。
残るのは、ホームステイ費さえくれればいいというホストしかいなくなった町です。
エージェント任せの大きなマイナス点かも知れません。
日本の学校の規則を守り、我慢をし、結局カナダで辛い目にあうのは真面目な高校生たちというのも、何ともやりきれない気持ちです。
その高校生が、今度は少なくとも満足な食事だけは提供していくれるホストを見つけられたかなと、とても気になります。
(駆けつけて助けてあげたい気持ちでいっぱいですが、日本の学校方針に介入するつもりはありませんので、残念ながら傍観です。)
日本の一方的な規則を何の論理的説明もなしにカナダで施行することは、カナダに留学する日本人生徒全員にもマイナスの影響であることを、その学校は認識してくれているでしょうか。
I hope so.
このコラムの執筆専門家
- 大澤 眞知子
- (カナダ留学・クリティカルシンキング専門家)
- Super World Club 代表
カナダにいらっしゃい!
カナダ 在住。パンデミック後のNew Normal 留学をサポート。変わってしまった留学への強力な準備として UX English主催。[Essay Basics] [Critical Thinking] など。カナダから日本に向けての本格的オンライン留学準備レッスン・カナダクラブ運営。
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