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浅川 恭行
医療法人晧慈会 浅川産婦人科 理事長
神奈川県
産婦人科医

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対象:産婦人科

浅川 恭行
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(産婦人科医)
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閲覧数順 2024年04月18日更新

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子宮頸部異形成とは

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子宮頸部異形成は、子宮頸がんの前段階(前がん病変)です。別名で子宮頸部上皮内腫瘍(Cervical Intraepithelial Neoplasia:略してCIN)とも呼ばれます。


近年わが国において、子宮頸がんや子宮頸部異形成は、20~30歳代の女性に急速に増加しています。子宮頸部異形成はその病変の程度によって、軽度異形成(CIN1)、中等度異形成(CIN2)、高度異形成・上皮内がん(CIN3)の3種類があります。

子宮頸部の扁平上皮病変は、軽度異形成、中等度異形成、高度異形成・上皮内がん、微小浸潤扁平上皮がん、浸潤がんと段階的に進展することがわかっています。

一方で、腺病変に関しては腺異形成と呼ばれる病変から上皮内腺がん、微小浸潤腺がん、浸潤腺がんと進展すると考えられていますが、その自然史は未だ明らかになっていません。

子宮頸部異形成は自覚症状を示さないことが多く、子宮頸がん検診(細胞診)を契機に発見されることが多い病気です。言い換えれば、子宮頸がん検診を受けなければ見つからないと考えてよいでしょう。

子宮頸部異形成とは

子宮頸部異形成とHPVの関わり

子宮頸部異形成と子宮頸がんの主たる原因は、ハイリスク型ヒトパピローマウイルス(HPV)の持続感染であることが知られています。HPV感染は多くの場合、性交渉により生じます。

しかしながらハイリスク型HPVに感染した場合でも、多くの場合が自然消失します。一方でHPV感染が持続した症例の中の一部が、数年~10年という期間を経て、子宮頸がんへ進展すると言われています。

こういったHPV感染と子宮頸がんの成り立ちから見た場合、性交渉を開始する(sexual debut)と考えられる10歳代から20歳代前半にかけて、HPVの初感染が生ずる可能性が高いと考えられます。

またHPV感染は、異形成から上皮内がん、浸潤がんと病変の進行に伴って、検出頻度が高くなります。

我々の検討では、ハイリスク型HPVの検出率は、扁平上皮系の軽度異形成で59.1%、中等度異形成で84.9%、高度異形成・上皮内がんで90.6%、扁平上皮がんで100.0%でした。

ハイリスク型HPVの検出率

また腺がんにおいてもハイリスク型のHPVの検出率は高く、我々の検討ではその65.3%でハイリスク型HPVが検出されました。

子宮頸部異形成の診断

子宮頸部異形成の診断は、おもに細胞診、コルポスコピー診、組織診と呼ばれる方法で行われます。細胞診は子宮頸がん検診における一次検診であり、子宮頸部(入り口部分)を擦って細胞を取り、顕微鏡で検査します。

細胞診検査で異常がみられた場合(LSIL、ASC-US、ASC-H、HSIL、SCC、AGCなど)、二次検診(精密検査)としてコルポスコピー診と組織診が行われます。子宮頸部異形成の病変が高度になることに伴って、コルポスコピーで観察した所見も強くなります。

細胞診、コルポスコピー診、組織診の結果を総合し、治療方針を検討します。

コルポスコピー

子宮頸部異形成に対する治療法

軽度異形成(CIN1)や中等度異形成(CIN2)の場合は、直ちに治療するのではなく経過観察することが多いです。その理由は、治療しなくても自然治癒(消退)することがあるからです。CIN1やCIN2の場合、約半数の患者さんでは自然治癒(消退)することが多いです。

一方、高度異形成・上皮内がん(CIN3)や、CIN2が長期に渡って遷延する場合では、治療を行います。治療法は手術療法が選択されます。代表的な手術として、子宮頸部円錐切除術と呼ばれる方法があります。

この手術では子宮頸部(入り口部分)を円錐形に切除します。CIN3のみならず、微小浸潤扁平上皮がん(Ⅰa1期)に対しても施行されることがあります。とりわけ、妊娠(子宮温存)の希望がある患者さんの場合は、この手術が第一選択となります。子宮温存の必要のない患者さんでは、子宮全摘出術が選択されることもあります。

一方、子宮頸部円錐切除術は診断を目的として、臨床検査としても行われる場合があります。例えば細胞診で中等度・高度異形成~上皮内がん以上の病変が推定されるけれども、コルポスコピー診や組織診で確定診断が困難な場合などです。

とくに高齢の患者さんの場合、細胞診で浸潤がんが疑われるがコルポスコピー下の組織診や頸管内掻爬で病変の存在が不明な場合が少なくなく、診断を目的とした円錐切除術が必要になります。

ちなみに子宮頸部異形成・上皮内腫瘍に対する治療において、有効な薬物療法はありません。またHPVワクチンは、HPV感染を予防する効果はあるものの、異形成やがんを治療する効果はありません。

子宮頸部円錐切除術

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