おしゃれ過ぎてもマナー違反

皆さん、ごきげんよう。

「おしゃれは楽しんだもの勝ち」とはいえ、ファッションは人に見られてなんぼ、つまりは社会性も兼ね備えていなくてはいけません。着る人がいて、見る人がいるということは、黙っていても、服が雄弁に着ている人を語るコミュニケーションになってしまうのです。いい歳を重ねた大人が、いくら好きだからといってロリータファッションをしていたり、お呼ばれの場にアニメのコスプレというのはふさわしくないですよね。お打ちできる分にはいいし、そういう人たちが集まるパーティなら逆にそちらの方が正しい着こなしなのかもしれません。

　ですが、一般的には、ファッションはマナー。大人たるもの、自分が楽しみながら相手も楽しませるのが基本です。見る人を疲れさせたり、不快にさせたりするのはよくありません。毎日クローゼットを開けて、「さあ何を着ようかしら」というとき、目の前の服を見るのではなく、これからの時間をイメージしてください。どのくらいの時間帯にどこで誰と会うのか、会議室にこもりっきりなのか、長時間歩くのか、お食事にいくならどんなお店で、靴を脱ぐのか、今日の天気はどうかなど、シチュエーションはいろいろです。「そんな面倒くさい」なんて怠け心が頭をもたげた時には逆を想像してみてください。約束の場所に着いて、「久しぶり！」とあなたに手を振ってくれる方が今日のシチュエーションにぴったりの素敵なファッションで待っていてくれたら。周りの人が振り返るような好印象なスタイルで来てくれたら。自分と会う時間のことをていねいに想像して、私を心地よくさせるためにこんな着こなしをしてくれたんだなと思うと大切にされているんだなとうれしく思います。

　もちろん、必ずしも気張ったファッションをして行けということではありませんよ。気軽に楽しむ焼き鳥屋さんにパリッとしたイタリア製のスーツで来られてもびっくりしてしまいますよね。逆に相手に気を使わせてしまうかも知れません。じゃあリラックスできるジャージやパジャマでいいやと思う人もいるかもしれませんが、それはお互いの家やお泊まりのときでもない限り、ちょっとラフすぎるかな。では、こういうときの正解はというと、やはり行くお店の雰囲気にちょうど合うぐらいのカジュアルスタイルで行くのがおしゃれかつ、礼儀正しいとも言えるかもしれませんね。同じ焼き鳥屋さんに行くにしても、相手が女友達なのか会社関係なのか、はたまたデートで恋人といくのか。どのエリアに行くのかによっても変わってきますが、大事なのは思いやり。これが、ファッションの基本ですね。

　私のところに相談に来て下さる方には起業家の方も多いのですが、講演会や大勢の前で話すときに何を着たらいいのかとよく聞かれます。「ビジネスシーンだからスーツがいいのかもしれないけれど政治家のようなスーツ姿にはしたくない」。きちんとしていながらも洗練されていて垢抜けたスタイル、誰もが憧れますよね。これも聴衆の人数や会場、時間帯、雰囲気によっても違いますから同行ショッピングでその方に合ったアドバイスをさせていただいています。女性経営者にとって第一印象のファッションは最大のユニケーションツールですから、時には商談の方向性を左右することもあるかもしれませんね。最近は女性の政治家の方も多くて、ご自身で選んでいるのか、スタイリストさんがアドバイスしているのか、中にはとてもおしゃれな方もいらっしゃいますよね。自分が主役か黒子か、そのときに求められているポジションにふさわしいファッションを判断して、選べるようになると毎日クローゼットで服を選ぶ時間も楽しみになりますよ。