遺伝子レベルで向かない人もいるらしい「朝型勤務」
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ここ数年、勤務開始時間を1~2時間早めて残業時間を抑制し、夕刻からは趣味など自分の時間に使えるようにと「朝型勤務」の取り組みをする企業が増えています。
長時間労働や残業過多の解決策の一つとして位置づけられており、国家公務員でも「ゆう活」と称したキャンペーンで、「朝型勤務」を率先しようとしています。
私自身は、朝型の方が仕事の能率が良いという感覚は理解できるので、「朝型勤務」には基本的に賛成していますが、この「朝型勤務」には、遺伝子レベルで適応できない人がいるという話があります。
様々な研究結果を調べてみると、朝型人間になるか夜型人間になるかは、遺伝子レベルであらかじめ決まっていることが分かっているそうです。
大昔の人類は、集団生活する上では、仲間が寝ている間に起きている人がいることで、外敵から身を守ることができました。朝型と夜型の両方の人間がいることが好都合だったのです。
しかし、現代の社会生活では、例えば仕事であれば、朝9時から夕方5時までの決められた時間帯が当たり前となっています。朝型でも夜型でも、同じリズムを求められている訳ですが、実はこの時間帯であっても、一部の夜型人間にとっては、頭の働きが鈍った状態に陥ることがあり、近年は「ソーシャルジェットラグ(社会的時差ボケ)」と呼ばれて問題視されているとのことです。
朝型人間と夜型人間では、脳の質自体も違っていて、朝型の方が、感情を安定させ気分をよくするセロトニンやドーパミンなどのホルモンが通る神経経路が多いことが分かっているそうです。
逆に、夜型人間は、創造性や認知能力が高い傾向にあり、また冒険心が旺盛なことが分かっていて、危機的状況への反応がすばやいとのことです。
また、朝型人間は起きてすぐに行動できるかわりに、夜型人間に比べると早く疲れてしまうことも分かっていて、朝型人間と夜型人間は、起きてから1時間後の反射速度はほぼ同じですが、10時間後になると、夜型人間の方が高いそうです。
研究者によると、体内時計にはDNAから作られる多様なタンパク質が作用しており、遺伝子コードのわずかな違いが、朝起きる時間に影響を与えているとのことでした。
朝寝坊は怠け者に思われたり、夜更かしは体によくない、成功者は早起き、午前の方が効率的に仕事ができる、等々、いかにも“朝型人間が望ましい”という話が多々語られます。
しかし、人による特性の違いが、このような遺伝子レベルであるとすると、「朝型勤務」へのシフトは、今まで以上に適応できない人が増える可能性があります。もしかすると、総合的な生産性が下がってしまうかもしれません。
「朝型勤務」のような個人の生活リズムにかかわる話は、その人の特性によって、もう少し柔軟に考える必要がありそうです。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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