- 須藤 利究
- 有限会社RIKYU・コンサルティング 代表取締役
- 経営コンサルタント
対象:経営コンサルティング
- 戸村 智憲
- (経営コンサルタント ジャーナリスト 講師)
中小企業庁の管轄である信用保証協会は、「“緊急”信用保証」と
名付けられたにも関わらず、“緊急”という言葉を外した方がいいと
思う程に実行までに時間がかかっています。
確かに件数も多く、金融機関からの提出期間も関係はしている
でしょうが、1ヶ月近くも掛かっていては年末の資金に間に
合わない企業が出てくる心配さえあります。
確かに区の窓口などは土日返上で5号認定の発行作業をして
いましたし、保証協会の職員の皆さんも同じように土日返上で
努力されているようです。
元々が福田首相の頃に考えられた制度ですから、原油、穀物などの
高騰を受けての原材料高高騰に対応する融資制度でした。でも今は
原油も40ドル台まで下がり、穀物も豊作や投機マネーの逃避で
価格はピーク時の4〜5割で、今多くの中小企業が抱えている問題
とはミスマッチな名前になっています。
ですから認定業種698種が果たして必要だったのでしょうか?
保証対象業種なら全て対象にすれば認定作業のスピードも
多少は上がった気がします。
やっつけ仕事としか思えない制度です。ですから麻生さんや
他の議員の方も本当にこの制度を正しく理解されていた
でしょうか?
かつての「特別安定化資金」とは、全く違うものなので、
保証協会さんも大きなリスクは取れないし、
金融機関も100%保証となれば、
協会提出前の金融機関での審査も甘くなるでしょう。
そのツケが保証協会に回っていることも確かだと思います。
ですから、10月31日以前とほとんど変わらない姿勢で
保証の可否を決めているように見えます。
この融資への申込み件数を見れば、多くの中小企業が「安定化」
に近い融資と思い、大きな期待を寄せて待ち望んでいたことが
分かるでしょう。
しかし今回の制度は「安定化」とは「似て非なるものではなく」
非なるものなのです。これは、金融機関の窓口説明や政府の発表
などが不十分だったと言わざる得ません。
金融庁と中小企業庁の考え方も一枚岩ではなかったように
思います。
最近、保証協会の方が言われる10年ルールは、金融庁の
条件緩和先に対する考え方が根本的に違っています。
信用保証協会は今ある保証付き融資が10年以内で返済される
金額で返済されているかを見ています。
一方、金融庁は5〜10年先に正常先になることを条件にして
います。
つまり、10年後の融資完済は考えに入っていないのです。
所管が違うと言ってしまえばそれまでですが、十分な打ち合わせ
もないまま景気の低迷のスピードに驚いた政府が、拙速に制度を
開始したというのが本当の所ではないでしょうか?
二次補正での中小企業保証の増枠も予定されていますが、今回と
同じ仕組みだとすると、厳しい言い方をすれば空(カラ)枠が
増えるだけです。
雇用不安も景気後退もはっきりし、消費の低迷も顕著です。
このような構造的な不況時は、大胆な対策が必要だと考えます。
つまり、「安定化制度」のような企業救済のような仕組みに
するべきだと現場から見ると強く思います。
就業人口の80%弱を抱える中小企業は、景況の変化には一番
敏感だと言われます。
「良くなるときは一番最後、悪くなるときは一番最初」と
良く言われます。
今回は企業努力だけでは如何ともし難い、急激な景気の悪化です。
今回はセーフティ・ネットという名前に合った融資方法にしないと
年末の後に売上が下がる1〜2月を控えて普通でも資金繰りのきつい
ときです。
後、民間金融機関には、今年赤字だとしても「一過性の赤字」として
赤字決算を以って債務者区分を下げるようなことはしないで下さい。
100年に一度の津波とか危機と言われています。今年に関して
言えばまさに一過性と言えるでしょう。
これ景気が長期化しないことを祈りますが、とりあえず今年に
関しては、、金融庁も明確な見解を出して中小企業の金融の道を
守って欲しいのです。
現場からの悲痛な声を是非聞いて下さい。