経済財政諮問会議、2011年度抜本的税制改革着手を明言 - 会計・経理全般 - 専門家プロファイル

平 仁
ABC税理士法人 税理士
東京都
税理士
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経済財政諮問会議、2011年度抜本的税制改革着手を明言

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税制改正 平成21年度税制改正
昨日16日、政府は経済財政諮問会議において、
持続可能な社会保障構築とその安定財源確保に向けた中期プログラム
の原案を明らかにした。

原案は、
1 景気回復のための減税策
2 国民の安心強化のための社会保障安定財源の確保
3 税制抜本改革の全体像
4 今後の歳出改革のあり方
5 中期プログラムの準備と実行
の5項目に分かれ、工程表まである。

これによると、

まず、減税策については、

世界経済の混乱から国民生活を守り、

3年以内の景気回復を最優先で図るため、

景気回復期間中に減税措置及び定額給付金を
税制抜本改革を前提に時限的に行う。


として、今年度のバラまきとも思える減税策は将来の
税制抜本改革の前段階の時限立法であることを強調する。


次に、

安心強化の3原則として

原則1 中福祉・中負担の社会を目指す。
原則2 安心強化と財源確保の同時進行を行う。
原則3 安心と責任のバランスのとれた安定財源の確保を図る。

の3つを掲げ、公債発行による将来世代への負担のつけ回しをせず、
現在世代にもしっかり負担をしてもらうことを前提に、
充実した社会福祉政策を標榜している。

そのための財源確保のために、税制抜本改革を行うというのだ。

そして、
経済状況の好転後に実施する税制抜本改革の3原則として、

原則1 多年度にわたる増減税を法律において一体的に決定し、
    それぞれの実施時期を明示しつつ、段階的に実行する。
原則2 潜在成長率の発揮が見込まれるかなどを判断基準とし、
    予期せざる経済変動にも柔軟に対応できる仕組みとする。
原則3 消費税収は、確立・制度化した社会保障の費用に充てること
    により、全て国民に還元し、官の肥大化には使わない。

の3点を掲げ、経済状況の好転後に消費税を含む税制抜本改革を

2011年度(3年後)より実施し、2015年度までに

段階的に行って持続可能な財政構造を確立する。
このために必要な法制上の措置を2010年にあらかじめ講じておく。


として、2011年度(平成23年度)の税制改正において、

消費税法を改正し、「複数税率」導入を含め、税率構造を見直し、

その反面、「社会保障目的税」とすることを明言した。

税制抜本改正においては、

所得税については、最高税率や各種控除の見直しを図る。
具体的には、「給付金つき税額控除」の検討を図るという。

給付金つき税額控除構想については、
森信茂樹編「給付つき税額控除ー日本型児童税額控除の提言ー」
(中央経済社2008.10)を参照されたい。
また、発想は、かつてイギリスで導入された負の所得税である。
負の所得税については、わが師匠西野敞雄国士舘大学教授が
かつて国士舘法学で書いた論文が存在している。

法人税については、国際的整合性の確保と国際競争力の強化の
観点から、課税ベースの拡大とともに、法人実効税率の引下げを
検討する。

相続税については、格差の固定化防止、老後扶養の社会化の
進展への対処等の観点から、相続税の課税ベースや税率構造
等を見直し、負担の適正化を検討する。

としか、明記されていないが、
遺産税方式から遺産取得税方式への移行が検討されているのは
間違いあるまい。

ただ、遺産取得税方式を50年前に撤廃した理由を考えれば、
諸外国の遺産取得税方式をそのまま持ち込むことには異論がある。

わが国の実情を反映した相続税法の転換であってもらいたいものだ。


また、歳出改革についても

原則1 税制抜本改革の実現のためには不断の行革の推進と
    無駄排除の徹底の継続を大前提とする。
原則2 経済状況好転までの期間においては、財政規律を維持
    しつつ、経済情勢を踏まえ、状況に応じて果断な対応を
    機動的かつ弾力的に行う。
原則3 経済状況好転後においては、社会保障の安定財源確保を
    図る中、厳格な財政規律を確保していく。

という3原則を掲げ、国民に負担を強いる税制抜本改革の前提は、
政府のスリム化であるが、社会保障は削らない方針が明確になる。


政府税調、自民税調、自民予算を通じて、バラまきともいえる
減税策のオンパレードであり、経済下降基調の現状では当然であろうが、
財政規律を重んじる与謝野さんが閣内にありながら、
麻生さんはどうするつもりかと疑いたくもなりましたが、
今回の中期プログラムに時期が明言化され、
税制抜本改革の基本方針が明確になり、評価できる内容になりましたね。

実行能力がどれだけあるのか、麻生さんの腕の見せ所ですが、
果たして・・・