日経記事;『リコー、カメラ事業縮小 個人向け撤退も検討 スマホ拡大、業務用シフト』に関する考察 - 事業・企業再生全般 - 専門家プロファイル

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閲覧数順 2017年08月18日更新

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日経記事;『リコー、カメラ事業縮小 個人向け撤退も検討 スマホ拡大、業務用シフト』に関する考察

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経営戦略 集中と選択;事業撤退

皆様、
こんにちは。
グローバルビジネスマッチングアドバイザー 山本 雅暁です。

4月12日付の日経新聞に、『リコー、カメラ事業縮小 個人向け撤退も検討 スマホ拡大、業務用シフト』のタイトルで記事が掲載されました。

本日は、この記事に関して考えを述べます。

記事の主な内容は、以下の通りです。

『リコーはカメラ事業を縮小する。価格競争が激しい個人向けは撤退も含め検討し、経営資源を車載向けなど業務用に集中させる。同事業は2011年にHOYAから一眼レフカメラ「ペンタックス」を買収後も赤字が続く。スマートフォン(スマホ)に市場を奪われ、デジタルカメラの世界出荷台数はピークの10年と比べ5分の1になっており抜本改革に乗り出す。

コンパクトデジタルカメラ「GR」シリーズや一眼レフカメラ「ペンタックス」など個人向けカメラを中心に製品戦略を見直す。12日に発表する中期経営計画に盛り込む。個人向けカメラは撤退も視野に生産販売体制を抜本的に見直す。

カメラ事業はリコーにとって祖業にあたる。高級カメラがなかったため、デジカメ市場が既に縮んでいた11年にHOYAから100億円で「ペンタックス」事業を買収した。ペンタックスの一眼レフカメラブランドを前面に出し、個人向け販売を増やす戦略だった。

ただ販売は伸び悩み、リコーのレンズ交換式カメラの世界シェアは現在6位、カメラ全体では8位だ。360度カメラ「シータ」など特徴ある製品もあるが、高精細な写真を撮影できるスマホ市場の拡大を受け個人向けカメラ事業は買収後も赤字が続いていた。

一方で車載カメラなど業務用に人員や設備を振り向ける。車載用は18年度にも初めて製品化し、車載向けレンズなどで20年に500億円の売り上げを見込む。生産余力が大きいベトナムなどのコンパクトデジタルカメラの工場の一部も車載向け増産にあてる計画だ。

リコーは収益源の事務機事業も伸び悩む。カメラや半導体など周辺事業の見直しのほか、事務機本体の販売体制の見直しにも着手する。

米国では買収したIT(情報技術)企業などと重複していた販売網を再編し、1千人規模の人員削減に踏み切った。国内では定年退職後のシニア雇用対象者などに早期退職相当の扱いで退職者を募る計画だ。

カメラ映像機器工業会によると、2016年の世界デジカメ出荷台数は約2400万台で、ピークだった10年に比べ5分の1に縮んだ。なかでもスマホと競う小型デジタルカメラが不振だ。

出荷台数のピークは08年で、その前年の07年に「iPhone」が発売された。その後のスマホの急速な普及で小型デジカメは前年比3~4割減のペースで出荷台数が減り、16年は08年の約10分の1の約1200万台。レンズ交換式カメラとほぼ同規模となっている。

利益を維持しているのはキヤノンやニコンといったレンズ交換式に強い企業だ。日本が強い光学技術はノウハウの蓄積が必要で、サムスン電子や中国企業など海外企業は日本勢に追いつけない状態だ。ただ日本勢だけでも参入企業は多く、各社は事業の再構築を迫られている。』

本日の記事は、個人用カメラ市場が急速に減少していく状況下での、カメラ事業が経営の柱の一つになっているリコーの「集中と選択」について書いています。

個人用カメラ市場は、少々極端に言いますと、一部の高級、あるいは特殊用途を除けば、無くなるものととらえています。

カメラ事業で過去の歴史をみますと、かっては銀塩式の写真フイルムが主流でした。その時、メインプレーヤーは、アメリカのコダック、ドイツのアグファ、日本の富士フイルム、コニカの4社であり、ほぼこの4社で市場を独占していました。

しかし、ビデオ技術などのデジタル写真技術の進歩が写真フイルムの事業基盤を徹底的に破壊しました。破壊速度は、急激でした。

その時、富士フイルムは、脱写真フイルムを一気に進めて、複写機、デジタルカメラ、電子部品・電子材料など、蓄積された技術の周辺で応用分野を広げる形での事業・商品の広範な多角化によって生き残りました。

コダックの場合、M&Aで事業の多角化を図りましたが、いずれの施策も中途半端なものになっていました。買い取った技術やノウハウを社内に蓄積して、徹底的な差別化・差異化を実現しなかったのです。

この結果、写真フイルムの名門企業であったコダックは、2012年1月に経営破綻しました。

写真フイルム市場の縮小は、今の個人用カメラ市場のそれと似ています。アップルが2007年にiPhoneを出して以降、スマートフォン(スマホ)の売上は、急拡大しました。

少々大げさに言いますと、スマホは、世界市場レベルでで個人や企業が使うインタネットの活用の仕方に、個人生活やビジネスのやり方まで大きく変えました。

当然のごとく、いくつかの既存事業基盤は、破壊されたり、再構築されたりしてきたのがこの10年です。

個人用カメラ市場は、スマホのカメラ機能・性能が毎年新機種が出るごとに向上していますので、スマホ事業拡大と反比例して縮小するのは当然のことです。

ソニーやパナソニックなどの国内家電AVメーカーは、アップルなどの海外勢に市場の主導権を奪われて、テレビやスマホなどの大型市場から撤退、あるいは事業規模の縮小を、巨額の赤字に直面しながら、何とか「集中と選択」作業を行ってきました。パナソニックは、まだ「集中と選択」作業が残っています。

ソニーは、スマホ市場でのアップルやサムスンとの直接対決は止めて、スマホカメラの中核デバイスであるCMOSセンサーの事業を柱の一つに据えて、大きな収益確保・拡大を実現しています。

リコーは、個人用カメラ市場の急激な縮小下で、カメラ事業を継続してきましたが、ここにきて当該事業の「集中と選択」作業を本格的に行う決断をしたようです。

本日の記事によりますと、リコーは今後カメラ事業に関しては、車載カメラなど業務用に注力していくようです。

私は、今まで多くの「集中と選択」作業に携わってきました。この経験から言いますと、「集中と選択」作業を行う場合、一般的には経営余力のあるうちに、短期間に一気に加速して行う方が成功しやすいとみています。

経営余力があると、会社全般の経営問題に目を向けて、不必要な事業対象を徹底的に洗い出すことが可能です。

並行して、新規事業の柱となる候補を冷静に分析・検証して、当該技術・ノウハウを磨けば、徹底的な差別化・差異化を実現できるかどうか見極められるからです。

経営基盤が脆弱になった企業は、落ち着いて「集中と選択」作業を行うことは不可能です。

個人用カメラの代表企業の一つであるリコーが、短期間に効果的な「集中と選択」作業を行うことを切に期待します。

決してコダックの二の舞いになってはならないのです。合理化・撤退は、痛みを伴いますが、忍耐と時間・コストをかければ実現できます。

ポイントは、徹底的な差別化・差異化を実現できる技術・ノウハウをもって、新規事業を立ち上げて世界市場で勝ち組になれるかどうかによります。

たとえば、リコーが目指す車載カメラなど業務用途の市場には、すでに上記のソニーも含めて多くの競合他社がいます。リコーがどう差別化・差異化を実現していくかが課題になります。

この視点から、今後のリコーの動きに注目していきます。

よろしくお願いいたします。

グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 山本 雅暁

 


 

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