日経記事;『グーグル、選択と集中急ぐ 不採算事業、凍結や撤退 収益は改善多角化の妨げにも』に関する考察 - 新規事業・事業拡大全般 - 専門家プロファイル

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日経記事;『グーグル、選択と集中急ぐ 不採算事業、凍結や撤退 収益は改善多角化の妨げにも』に関する考察

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皆様、
こんにちは。
グローバルビジネスマッチングアドバイザー 山本 雅暁です。

1月28日付の日経新聞に、『グーグル、選択と集中急ぐ 不採算事業、凍結や撤退 収益は改善多角化の妨げにも』のタイトルで記事が掲載されました。

本日は、この記事に関して考えを述べます。

記事の主な内容は、以下の通りです。

『米グーグルの持ち株会社アルファベットが、新規事業やその予備軍の選択と集中を急いでいる。

自動運転車の開発から不老長寿の研究まで数々の野心的なプロジェクトを立ち上げてきたが、お金の使い方に「規律」を求める投資家に背中を押された格好だ。不採算事業の凍結や撤退で収益は改善しつつあるが、萎縮しすぎれば必要な投資機会を逃す「もろ刃の剣」でもある。

高速ネット接続サービスを提供するグーグル・ファイバーは新たな都市への進出を凍結した。

「『その他』部門については、それぞれの事業計画の進捗をにらみながら、ふさわしい規模とペースで引き続き投資していく」。ルース・ポラット最高財務責任者(CFO)は26日、2016年10~12月期の決算会見でこう強調した。

中核子会社のグーグルを除いたアルファベットの「その他」部門には、自前の光ファイバー網による高速ネット接続のグーグル・ファイバーや、住設機器のネスト・ラボ、「スマートコンタクトレンズ」などを開発する医療関連のベリリー、自動運転車や気球を使ったネット接続サービスの開発を担う研究子会社X(エックス)などが含まれる。16年の同部門の売上高は8億900万ドル(約930億円)と前年の1.8倍に拡大したものの、先行投資がかさみ営業赤字が続く。

高収益の広告事業にあぐらをかいて「ムーンショット」(グーグルでの野心的プロジェクトの呼び方)に研究開発費を湯水のように使っている――。投資家の批判を受け、「その他」部門の赤字体質にメスを入れたのが、15年5月にCFOに就任したポラット氏だ。

まず15年10月に移行した持ち株会社制の下で、グーグル本体とそれ以外の事業を分離して透明性を高め、コスト管理も徹底した。たとえば、全米9都市でサービスを提供するグーグル・ファイバーについては昨年10月、不採算を理由に新たな都市への進出を凍結。Xが進めていた大型ドローン(無人機)によるネット接続構想も、事業化が見込めないと判断し、プロジェクトを解散した。

一方、事業化が近づく自動運転車の開発プロジェクトは昨年12月にXから独立させて事業会社に格上げした。ベリリーはアジア進出をにらみ、シンガポールの政府系投資会社テマセクから8億ドルの出資を受け入れた。

こうした努力の結果、膨らむ一方だった「その他」部門の営業損失は、16年7~9月期に初めて前年同期より縮小。10~12月期も2四半期連続で赤字が減った。

もっとも、目指す多角化を実現するためには、まだまだ「遊び」が必要だという声もある。アルファベットの売上高全体に占める「その他」部門の比率はわずか0.9%。「守り」に入るのは、まだ早いかもしれない。』


グーグルはよく知られていますように、ムーンショットと呼ばれる新規事業立上の可能性を探る専属研究開発チームが存在しています。ムーンショットとは、ジョン・スカリー氏の著書「ムーンショット」で使われたことがきっかけになっています。

ムーンショットは、かって月面に人類を到達させたアポロ計画のような、常識では実現不可能と思われる難易度の高いプロジェクトを意味します。

グーグルが、新規事業立上の可能性を研究・実証するチームをGoogleXとして作ったときに、ムーンショットの言葉を引用したことから注目されました。ちなみに、グーグルは2016年にGoogleXを「X」に名称変更しました。

その当時、Xには以下の研究開発項目がありました。
・「ドライバーレス・カー:自動運転車」
・「レプリカント(ロボット工学チーム)」
・「プロジェクト・ルーン(気球によるインターネット・スキーム)」
・「プロジェクト・ウィング ― 荷物配達ドローン」
・「マカニ ― 空飛ぶ風力タービン発電」など

グーグルは、Xから事業性の確認が取れたものから順次、別組織に移行して新会社を設立するやり方を取っています。

自動運転車は、「Waymo:ワイモ」の新会社にて事業化されます。生命科学研究を行う「Verily:ベリリー」もすでに設立されました。

本日の記事は、グーグルが投資家からの指摘を受けて、新規事業可能性検証チームのビジネスのやり方の透明性を向上させるとともに、費用対効果をよりはっきりさせて、「集中と選択」を意識的に行う姿勢を示したことについて書いています。

グーグルの2015年度の749億8900ドル(約9兆円)です。このうち、広告売上高は673億9000ドル(約8兆1000億円)ですから、圧倒的にインターネットの広告宣伝売上高の比率が高いことになります。

グーグルの投資家は、上記記事によるとXの売上構成比が0.9%であっても、研究開発費の無駄使いであると指摘しました。

グーグルが当該投資家の指摘を受けて、Xの研究開発チームから事業性の見込めないと判断された、プロジェクト・ルーンやグーグル・ファイバーなどが解散しました。

この集中と選択作業を進めすぎると、グーグルの力の源泉である技術開発力に大きな影響を与えます。

かって、国内大手電気機器メーカーは、経営合理化のため大規模な集中と選択作業を行いました。

その過程で、多くの企業で最重要視されたのが、極めて短期間な採算制や事業性でした。

確かに、現時点で赤字になっている事業を止めれば、短期的な収益性は改善します。事業縮小や撤退を行えば、売上高と赤字が縮小します。

この集中と選択作業を行うときに、中核にいたのが管理部門や経理部門でした。赤字が発生しているときに、直ちに消化する必要があるので、管理や経理の部隊が中心になって動く必要があります。

しかし、短期的な消化作業を過度に行うと、製造会社としての将来の成長性や競争力の源泉まで一気に失うリスクがあります。

少々誇張して言いますと、普通の経営者は、事業縮小や撤退自体を容易に行えます。

このときに、大事なことは、会社の現在と将来の事業の柱を明確化して、当該企業の競争力の維持強化を図るための優先順位を決めることにあります。

この優先順位を明確化して決められなかったメーカーは、集中と選択作業後に競争が大幅に低下しました。

グーグルは、まだ若い会社であり、創業者が経営の中枢にいますので、短期的な集中と選択作業を過度に行って、競争力を弱める状況になるリスクは低いとみています。

但し、グーグルがXの見直しを短期的な採算性や事業性のみによって行うと、野心的なエンジニアがグーグルを去ることや、優秀なエンジニアの採用が難しくなるリスクがあります。

グーグルの力の源泉は、優秀なエンジニアにあります。このエンジニアのモチベーションを維持向上させていかないと、フェースブックなどの競争に打ち勝てません。

ところで、アップルの話になりますが、人工知能(AI)の研究・普及を目指す米国の非営利団体「パートナーシップ・オン・AI」は2017年1月27日に、アップルが加盟したと発表しました。

「パートナーシップ・オン・AI」は、アマゾン、フェイスブック、グーグル、IBM、マイクロソフトなどが2016年9月に設立しました。

アップルが「パートナーシップ・オン・AI」に加盟した理由の一つが、従来の自前・秘密主義では、競争の激しいAI分野で優秀なエンジニア確保が難しくなることによるとされています。

日本でも、製造業やITベンダーの競争力の源泉は、優秀なエンジニアを獲得して、当該エンジニアのモチベーション維持・向上にあります。

この視点から、グーグルのXについて、今後の動きに注目していきます。

よろしくお願いいたします。

グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 山本 雅暁

 

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