- 大澤 眞知子
- Super World Club 代表
- カナダ留学・クリティカルシンキング専門家
経済協力開発機構(OECD)が加盟72カ国の15歳約54万人を対象に2015年に行った学習到達度調査(PISA)の結果を公表しました。
日本とカナダの結果を見て、思わず膝を乗り出しました。
そうか! 「カナダ留学」の価値はここか! とあらためて。
「日本ですでに優秀で確固たる教育基盤を持っている生徒のみ、カナダに留学する意味がある」この裏付けが取れた気分です。 よし!
PISAテストで日本は科学的応用力が2位、数学的応用力が5位で、ともに前回12年調査を上回り、トップレベルの水準を維持したそうです。 めでたいめでたい。
半面、読解力は8位で順位が4つ下がるなど、従来からの日本の大きな弱点が益々足を引っ張って来ています。
ヤバイ。。 日本だけで教育を受けていると「読解力」は世界レベルになれないのか。。。
「読解力」つまり問題を見つけ、分析し、自分の答えをみつけていく力。
日本の教育では潜在能力いっぱいまでは伸びない。。。
現在私が関わっているカナダの教育はどうでしょう。
カナダは日本のように世界順位に一喜一憂するというよりは「PISA 何それ?」的に無関心のようですので、上がった!下がった!の報道は見かけませんが、スコアで見る限りはもちろん世界のトップクラスに位置しています。
が、カナダの授業を細かく観察するにつけ、カナダの大弱点も見えてきました。
日本の弱点「創造力・論理的分析力を駆使する必要がある読解力をつぶす教育」
それとは全く逆の「個人の創造力を尊重しすぎ、基本プロセス、ひとつひとつに丁寧に時間をかけることを面倒がる生徒の意志に任せすぎ」カナダの弱点が、見事に今回のPISA テストの結果に現れていると、思わず膝を打ちました。
参考までに世界のトップはシンガポールで、主要部分のスコアはこのようになっています:
【Science 556】【Reading 535】【Math 564】
日本は:【Science 538】【Reading 516】【Math 532】
Canada:【Science 528】【Reading 527】【Math 516】
カナダは「読解力」はダントツ日本を引き離していますが、サイエンスでは微妙に、数学ではかなり遅れを取っています。
その答えはカナダの学校での先生と生徒の態度にありそうなんですよね。
現在Claresholm のWillow Creek Composite High School にて、相棒のRobert がボランティアとしてComputer Science を教えています。 私も日本の生徒にComputer Science 入門を教えた経験と、指導者としての長年の経験を使いお手伝いに行っています。
そこで実際に接したカナダの生徒の態度、先生たちの態度に、正直「あれ?」。
プラス今までカナダに留学した生徒たちからの授業の様子報告を足すと、「あれ?」が「なるほど〜〜」に変わりました。
カナダの「読解力」
半端なく高いです。
能力の高い生徒が取るENGLISH の授業の内容の緻密さ、進み方の速さ、先生の気合の入れ方、宿題、テストへの容赦のなさ。
例えば10年生(日本の高校1年レベル)の優秀な生徒の取るENGLISHのクラスでのエッセイテストのテーマは:
難解な時代背景を持つ長い小説を読んだあと「主人公たちと関わる脇役達を使うことで、作者は自分の考えをこの小説の中でどのように発展させているか」
などの抽象的な概念を自分のことばで適切に書く、しかも正確に英語のエッセイ手順を使い、な〜んてのは日常茶飯事です。
14~15歳のクラスですよ。
カナダのほぼ30%の生徒はこのレベルだと考えられます。
カナダの「サイエンス」
高校1年生レベルのScience10というコースがあります。
物理・化学・生物の基本を網羅し、基本を徹底したのちその上の「生物」「化学」「物理」に分かれた大学準備コースに上がる前のクラスです。
網羅する。。のでは。。。なかったの? というくらい大雑把です。
あれ? それだけ?
テスト。。。 そんな簡単な小学生みたいな。。。
しかも、「物理」が好きな先生なら「物理」の単元にほぼ7割使っちゃいます。
残りはとりあえずざざぁ〜っとで終わり。
ファイナル試験も、「おいおいこれテストぉ〜?」というレベル。
「読解力」の優れた約30%の優秀なカナダの生徒は、それでも自分で興味を持ち、理解していくのかなぁとPISAの結果を見て思います。
カナダの「数学」
しょぼいです。
基本の積み重ねの大切さが完全に無視されている気がします。
内容も、こんなもんで「数学」と呼ぶの?レベルです。
テストにしても、計算機使ってOKですから、暗算する概念がありませんし、丁寧に答えにたどりつくこともしません。 とりあえず計算機のボタンを押せば答えが出ます。
面白くないし、基本がわかってないので、もっと面白くありません。
日本では「数学は難しいから嫌い!」という生徒が多いですが、カナダでは「数学は退屈」です。
先生も生徒の機嫌を損ねないような簡単なテストで合格点を出します。
例外は、大学への準備コース30-1 と呼ばれる数学。
かなり高度です。
微分積分のコースもあります。
それらクラスの生徒はかなり優秀です。
やっぱり、数学的素養のある生徒は自分でぐいぐい進んで行く独立独歩の国なのかもと思います。
そんなカナダに、日本の「サイエンス」「数学」教育を受け優秀な成績を残した生徒が留学するとどうなると思いますか?
小・中学校を通じての丸暗記、公式を使ってのドリルドリルドリル。
細かい基本をこれでもかこれでもかと(いやいや)叩き込まれた成果がどどっと光り輝いて出てきます。
言葉が英語に変わろうとも、基本が実にしっかりしているので、あっとう言う間に同級生をごぼう抜き。 計算力のみならず、確固として数字の概念を持っているので何をしても頭一つ出て来ます。 クラスメートや先生から羨望の目で見られますので、英語の不自由さなんのその。
絶対的な存在感を持てるコースです。
そして、最終学年の大学準備コースになれば、カナダの優秀なサイエンス・数学頭脳とも出会え、クリティカル・シンキングに基づいた大いなる影響を受けることになります。
これは日本では経験出来ないと思います。
さて、「読解力」のカナダ。
クリティカル・シンキングの「読解力」。
これこそがカナダの高校に留学する最大の魅力です。
しかし。
いかに日本の優秀な頭脳を送り込んでも、このクラスでは涙が出るほど苦労します。
日本の学校で押さえつけられていた「自分の考え」『自分とは何者」「自分の経験」をほとばしるように出すことを要求されます。
出せないと落第します。
英語を読んで読んで読みまくり、それについてアイディアを持ち、ことばで表現する特訓が必要です。 ひとりでは無理。
どうすれば本当の意味で読め、自分の考えをそこから抽出出来るかについて常にアドバイスが必要です。
(この指導を「高校留学でのアカデミックサポート」と私は定義しており、このサポート行うのが私の「カナダ高校留学サポートプログラム」です。)
このように、自分の能力を日本・カナダの良いとこ取りに伸ばすのが現在の「カナダ留学」の意義だと痛切に感じます。
そして「カナダ留学」から将来への大きな成果を引き出せるのは、日本の学校制度で確固とした基本能力をつけた生徒のみ。
これも非常に大切なことです。
「サイエンス」も「数学」も日本では並みレベル。。。では、潰れに来るようなものです。
または親のお金の無駄遣いこの上ない、カナダにも迷惑留学です。
今回のPISA結果から見えて来た、日本とカナダの教育の違いを理解し、そこから両方のプラスを取れる留学をぜひ。
日本とカナダから「良いとこ取り留学」しましょう!
Come Join Us!
このコラムの執筆専門家
- 大澤 眞知子
- (カナダ留学・クリティカルシンキング専門家)
- Super World Club 代表
カナダにいらっしゃい!
カナダ 在住。パンデミック後のNew Normal 留学をサポート。変わってしまった留学への強力な準備として UX English主催。[Essay Basics] [Critical Thinking] など。カナダから日本に向けての本格的オンライン留学準備レッスン・カナダクラブ運営。
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