人生は勉強より「世渡り力」だ!(青春新書) - 会計・経理全般 - 専門家プロファイル

平 仁
ABC税理士法人 税理士
東京都
税理士
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人生は勉強より「世渡り力」だ!(青春新書)

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雑感 書評
今日は、特にこれから社会に出て行く学生たちに読んでもらいたい
本を紹介します。

岡野雅行「人生は勉強より「世渡り力」だ!」(青春新書2008)です。

痛くない注射針を作った世界一の職人、岡野工業(株)社長の岡野氏が
書いた本、書いたというよりも、岡野氏が話したことを口述筆記した
ような本なので、非常に読みやすいですね。

まずタイトルが刺激的ですね。世渡り力ですからね。
ただ、この世渡り力という言葉に岡野氏の思いがある気がします。
本書18ページには、こう書いています。
「世渡り力ってのは、こすっからく生きていく、安っぽい手練手管なんかじゃ
ないぞ。人間の機敏を知り、義理人情をわきまえ、人さまにかわいがられて、
引き上げてもらいながら、自分を最大限に活かしていく“総合力”なんだよ。」

国士舘大学の私の授業では、授業の前半は税の世界とは関係のない話、
特にこの時期は就職活動に向けて学生へのメッセージを送ることが
多いのですが、本書58ページのある営業マンの話は、いいですね。
「仕事で頭を使わないヤツは伸びないよ。ただ真面目なだけじゃダメなんだ。」

まさにそうですね。中小企業経営にも直結するのですが、大企業であれば、
そのネームバリューと信用でそれなりの仕事ができると思います。
しかし、中小企業は違います。いくらいいものを作っても、
それがニーズのあるところに届かなければ売れないんですね。
ネームバリューはそのための近道ではありますが、それがないから
頭を使って、どうやって表に出すか、どうやって知ってもらうかを
考えなければならないわけです。

学生の就職活動も似たようなところがありますね。
特に急な不況で求人が突然減っただけに、3年生は泡食った状態です。
国士舘はOBの人脈を含め、ただでさえ遅れているわけだから、
まともに勝負したって、自分を売り込めないんですね。
それが6大学との就職率の差となって現れている気がします。

本書83ページでは、メザシの土光さんのエピソードが紹介されています。
「昭和50年代後半だったと思うけど、NHKが、80歳を過ぎてもなお、
行革に執念を燃やす土光さんの特集をやったことがある。そのとき放映された、
家での夕食風景がその呼び名の由来なんだよ。
夕食の膳に並んでいたのは、メザシに菜っ葉、味噌汁に玄米飯だった。
視聴者に与えたインパクトは大きかったと思うね。贅沢三昧をしてたって
不思議はない、それが当然だと皆が思っている、日本の財界を引っ張る
立場の人が、家ではそこまで質素な食事をしている。皆、
「あんなに偉くなっても、庶民感覚を忘れない土光さんは、たいしたもんだ!」
と拍手を送ったんだよ。」
「庶民でも夕食のおかずとしちゃお粗末だなって感じる、メザシの効果は
絶大だったんだよ。もっと、タネあかしをしようか?土光さんは確かに
メザシが好きだったようだけど、俺、土光家にメザシをおさめてた魚屋と
知り合って、聞いたんだ。
あのメザシ、一匹400円だ。30年も前だから、当時の400円といやあ、
けっこうな値段だよ。一山いくらのメザシとはわけが違ってたんだな。
もちろん、世間に値段を教える必要なんかないし、メザシの効果をめいっぱい
活用すりゃいいんだよ。それで、「メザシの土光さん」なら、行革の
リーダーにふさわしいというイメージが定着したら、最高の演出ってもんよ。」

まるでどこかの国の宰相に聞かせてあげたいような書きぶりですが、
土光さんのエピソードは自分の魅せ方を考えさせられますね。