家づくりの基本は「パッシブデザイン」である - 住宅設計・構造設計 - 専門家プロファイル

野平 史彦
株式会社野平都市建築研究所 代表取締役
千葉県
建築家

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対象:住宅設計・構造

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家づくりの基本は「パッシブデザイン」である

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これからの家づくりの視点
パッシブデザインとは...!?

 上に示した図は、一般にオルゲーの図と呼ばれるもので、パッシブデザインについて語る時によく用いられるものです。

 青い一点鎖線で示された大きな波(外部条件)は、一年を通した外気の温度と考えて下さい。左から右へ、冬には温度が下がり、夏には温度が上昇します。

 赤で示された線は建築的手法によって到達する室内気候を示し、残りの部分を機械的な手法によって快適な温度領域までもってゆこう、という考え方を示しています。

 家のカタチというのは普遍的に厳しい外界の気候条件を建築的な手法によってどこまで和らげる事ができるか、という結果であり、その手法をパッシブデザインと呼んでいます。

 例えば、高温で乾燥した砂漠地帯では、日中は暑いのですが、日が沈むと湿度が低いので急激に気温が下がります。そのような土地では、家は日干し煉瓦で造られ、この日干し煉瓦の厚い壁は、日中は強い太陽の日差しを遮り室内を涼しく保つ事ができ、夜は日中壁に蓄えられていた熱が室内に放熱し、室温を保つ事ができます。中東のバーレーンではこの日干し煉瓦の壁の厚み45cmくらいが丁度いいそうです。
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 逆に、高温高湿の地域では、草木を用いて、できるだけ熱容量の小さな(熱を溜めない)、風通しの良い家を造ります。

 このように人間の住居は、その土地の気候条件に合わせて厳しい外気条件を和らげるパッシブデザインがなされて来たのです。

 さて、再びオルゲーの図を見てみましょう。ピンクの破線で示した様に、日本の伝統的な住居は「夏を旨とし」冬は諦めていたので、冬場は外部条件に近い曲線が描かれ、夏は外部条件よりずっとなだらかになっています。
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 私達は、これまで冬諦めていた室内環境を「断熱」という建築的手法で補う事ができます。

 「断熱」は、実は最も効果の高いパッシブデザインなのです。

 また、私達は自然エネルギーの有効利用にも目を向けなければなりません。太陽熱利用は、日本におけるOMソーラーが世界でも最も普及した例ですが、太陽光発電も普及して来ています。地熱利用は今後、注目されるところですが、こうした自然エネルギー利用へのアプローチは、私達もこれからの循環型社会に向けて積極的に取り組んで行かなくてはならないと考えています。