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PTA会長挨拶 卒業式

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PTA

 PTA会長の大塚です。

 〇〇小学校を卒業する皆さん、おめでとう。保護者の皆さん、おめでとうございます。

 皆さん、後ろの席を見てください(保護者席)。皆さんの製造責任者です。姿勢を直してください。君たちのことを、世界で一番気遣ってくれる人です。君たちが、〇〇小学校に入学した翌年の平成23年の3月11日、東日本大震災がありました。原発事故もありました。数日後、東京にも、その影響がありました。その夜、君たちのお父さん、お母さんは、君たちの寝顔を見ながら、この子を必ず守る、と固く、固く、固く決意したのです。右の席には先生方がいらっしゃいます。先生方が、君たちが一生使える知識を授けてくださったのです。左の席には、地域の方々がおいでです。地域の皆さんは、君たちを見守り、様々な楽しい行事をしてくださいました。そして、最後に、右、左と周りを見回してください。算数が好きな子、作文が上手な子、駆けっこの速い子、大きな声の子、給食をたくさん食べる子、気配りの得意な子。いろんな子と、一緒に勉強し、運動し、喧嘩をして、仲直りをしましたね。今、卒業しようとする君たちにとって、この〇〇小学校での6年間の経験は、これからの君たちの人生において、かけがえのない貴重な財産です。何故か。

 皆さん、日本に小学校ができたのはいつでしょう。PTAが出来たのはいつでしょう。そしてその理由は。日本に小学校ができたのは、約140年前、明治維新のときです。当時、日本はヨーロッパやアメリカの植民地になるかどうかの瀬戸際でした。これに対して明治政府は、進んでヨーロッパの文明を取り入れることにしました。これを文明開化といいます。それ以前は、身分制があって、武士の子は藩校に、庶民の子は寺子屋に通いました。そして、武士の子には、難しい漢籍を教え、庶民の子には読み書きそろばんしか教えませんでした。これに対して、明治政府は、身分制を廃止し、国民に等しく基礎教育を施し、均等に機会を与えたのです。大学よりも、小学校を先につくりました。小学校は、明治政府が命令したからだけではなく、それに応えた全国津々浦々の保護者、地域住民が積極的に作りました。国や、国民が、基礎教育の重要性を理解していたのです。そして、日本は、植民地にならず、強国になりました。ここ〇〇小学校ができたのは、昭和2年ですが、確実に明治維新の精神を受け継ぎ、多くの子供たちに等しく基礎教育を施しつづけています。去年の運動会の組体操や、卒業を祝う会の合奏には、本当に感動しました。そのほかにも、PTAのお母さん方から、皆さんの勉強や運動での活躍を聞いています。これほど多様な個性をもった、多数の子供たちが、一体として、保護者、先生方、地域の方々から深く愛され、手をかけられて育てられているのは、日本に数ある小学校のうちで、ここ〇〇小学校が一番だと私は思います。

 日本の小学校にPTAができたのは、明治維新から約70年後、日本は、アメリカと戦争して負けました。このときも、日本は存続するかどうかの瀬戸際に立たされました。そのときPTAが出来ました。これをアメリカの押し付けだと言う人がいるが、私はそうは思わない。明治維新のときのように、日本には、それ以前にも、民主的基盤はあったのです。それまで軍国主義に傾いていたのを手直ししただけです。そして国民の努力の結果、日本は経済大国として蘇りました。〇〇小のPTAも、自主的、主体的に学校を支援してきて、今に至ります。〇〇小学校の多くの保護者の方々が、自分の子供だけではなく、他の子のためにと一生懸命頑張っている姿を、私はこの一年間、現場でみてきました。PTA会長の私に対しても、自由に話をさせてくれる、懐の深い学校です。

 さて今現在、明治維新から140年、太平洋戦争の敗戦から70年、おや、70年ごとに何かあるな、と思った君はするどい。私は、今回は、明治維新、敗戦に続く、近現代における第三の日本の危機だと考えます。のみならず全世界の危機でもある。前2回は、日本が滅びるか生き残るかの瀬戸際だったが、今回は人類が滅亡するか存続するかの危機です。前二回の危機は、強大なヨーロッパ文明にどう対処したらよいかの問題でしたが、今回は、ヨーロッパ文明が弱っていることが問題です。ヨーロッパ文明の衰退によって生じた隙間を埋めるための覇権争い。第三次世界大戦。世界同時多発テロ。国家間あるいは国内における経済格差とそれに由来する社会不安、動乱などなどが危惧されます。それだけではありません。自然環境においても、首都圏をおそう巨大地震、地球温暖化、スーパー台風の襲来、世界的疫病の発生などなど。技術面でも、ロボットの活用による失業者の増大、人工知能(AI)の暴走、遺伝子工学の悪用・濫用。核の冬による食料危機などなど。不安材料は数え切れません。将来が見通せない。何が起こるか分からない。何があってもおかしくない。これからの70年は、人類の歴史の中で、もっとも重要な70年となる、私はそう思います。私は、皆の将来が心配でなりません。

 しかし、未来は、一方に危機があれば、他方に希望があります。希望の道とは、皆が協調して危機に対処することです。そして、今回の危機は、日本人が、世界に手本を示す絶好の機会です。なぜなら、140年前の危機、そして70年前の危機を乗り切ってきた経験が日本人にはあるからです。これからの日本人は、本当の意味で、国際人になる必要があります。国際人には、アイデンティティーが重要です。アイデンティティーとは、自分は、これこれこういう者だ、と主張できる自分の芯のことです。確固たるアイデンティティーを持ち、国際社会に貢献するんだという意志さえあれば、世界で活躍しているだけでなく、日本国内にいようと、ここ〇〇区に住み続けようと、立派な国際人です。

 その意味で、〇〇小学校の卒業生というアイデンティティ―は、君たちの強みです。なぜなら、〇〇小学校こそ、140年前の明治維新の理想、すなわち国民に均等に機会を与える、という考えに最も忠実な学校だから。そして〇〇小学校の子供たちは、70年前の戦後の民主化を実現した保護者、学校、地域の方々に、幾重にも見守られて育てられてきたからです。〇〇小学校は、多数の多様な仲間との交流を通じて、協力して大きな事を成し遂げるという幸せな経験を積み、社会に貢献できる子供たちをこれまでも送り出してきたし、今もまさにそのような珠のような子を86人、生み出そうとしているし、これからも、そのような学校として、あり続けることでしょう。

 70年後、今の大人は皆死んでいる。これからの70年は君たちの70年です。君たちの活躍が期待されています。皆さんには、一人ひとり、天から与えられた能力があります。それを最大限活かしてください。考えるのが好きな子は、皆が一緒に幸せになれる社会の仕組みを考える。力の強い子は、道路を作ったり、橋を架けたりする。音楽の得意な子は、音楽で他人を楽しませる。そして、皆で協力して、素晴らしい世界を次の世代に引き次いでいってください。〇〇小学校の卒業生なら、できます。私は、先ほど、皆さんの将来が不安だと申しました。しかし、同時に、〇〇小学校の卒業生なら、きっとしっかりやってくれると信じています。私が、冒頭に言った、〇〇小学校での6年間の経験が、君たちにとって、貴重な財産となる、と言ったことの理由です。

 実は、今日の話は、とても難しい内容を含んでいます。本当は、あと5年後、10年後くらいに君たちに理解してもらえるかな、それくらい難しい内容です。しかし、私は、今、この段階で、君たちに、どうしても話しておきたかった。なぜなら、君たちは、まだ発展途上です。まだまだ勉強しなければなりません。勉強の目的は、テストで100点をとることではありません。生きる意味を探求し理解し、そのスキルを身に付けることです。21世紀に生きる君たちは、自分を世界史のなかに位置づけ、人類の一員であることを自覚し、そして自分を活かす方法を考える。それが勉強の目的です。その成長の可能性のあるときに、お話ししたかったのです。先日の卒業を祝う会では、私は、主として、感情の面をお話ししました。今日は、主として、理性の問題をお話ししました。感情と理性とで心となります。心は魂です。先日と今日と、併せて魂の話をさせてもらいました。そして、本日、このように活発な、美しい、そして可能性に満ちた86個の魂に対して、私の思いを届けることができて、私は、今、最高に幸せです。このような機会を作ってくださった校長先生はじめ関係者の方々に、改めて感謝申し上げます。

 皆さん、どうか、感謝の気持ちを忘れず、〇〇小学校卒業生としての誇りをもって、活躍してください。期待しています。

 ボン・ボヤージュという挨拶の言葉があります。船で旅にでる人に、お元気で、お達者で、と見送る言葉です。皆さんの航海が無事でありますように、幸多かれと祈りながら、私の挨拶といたします。ボン・ボヤージュ。

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