外張り用断熱材の隠された問題点 - 住宅設計・構造設計 - 専門家プロファイル

野平 史彦
株式会社野平都市建築研究所 代表取締役
千葉県
建築家

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対象:住宅設計・構造

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外張り用断熱材の隠された問題点

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これからの家づくりの視点 「高断熱・高気密」後のより自然に即した断熱法とは?
実は、外張り断熱に用いられる断熱材には、隠された問題点があります。
 
 フェノールフォーム以外の発泡プラスチック系断熱材は、相変わらず経時劣化という問題を抱えているのです。

 それは、細かな気泡の中に挿入された断熱効果ガスが次第に空気と入れ替わり、断熱性能が低下してしまうという現象ですが、早いものでは5年ほどで断熱効果ガスが抜けて断熱性能が約20%減少してしまうのです。

 以前、私はこの経時劣化の問題について、断熱材メーカーに問い合わせたことがあります。メールで問い合わせをしたところ、いつまで経っても返答は来ませんでした。
 しかし、暫く経ってからそのメーカーのHPを見ると、商品の紹介ページに次の様な但し書きが付け加えられているのを発見しました。

「断熱材の選定に当たっては、経時劣化による断熱性能の低下を考慮した厚みのものを選びましょう」

 メーカーでは、それぞれの素材、性質を踏まえて、断熱材表面をフィルムでコーティングするなど対策を講じていますが、その効果がどこまで持続するものなのか、いずれにしろそう長期間に渡ってその性能を維持するのは困難であろうと思われますし、廃棄時の問題も残ります。

 自然系断熱材の取り組みとして、今まで利用価値のなかった杉の表皮を用いた木質繊維ボードを断熱材として外張り断熱をすることもでき、実際に使用されていますが、性能的に劣る木質繊維ボードは発泡プラスチック系の断熱材と同じ厚みではその効果が低く、かといって、厚くすれば外壁を支えるのが困難となります。

 バイオエタノールなど石油に代わるエネルギーを植物から取り出す試みが現在盛んに行われており、20年ほど前から研究されていた植物系プラスチックも、すでにパソコンや携帯電話のボディなどに使われ始めていますから、じきに植物系発泡プラスチック断熱材も登場して来るでしょう。

 尤も、経時劣化の問題は石油系のものよりもその解決がずっと難しいのではないかと思われますが、、、