マイナス金利とはどういうことなのか?
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日本銀行がマイナス金利を導入したことが話題になっています。
金利というのは、お金を借りる際のレンタル料のようなもので、通常は「お金を借りる人」が「お金を貸してくれる人」に対して負担するものです。
金融機関で住宅ローンを組んだ場合は、お金を借りる私たちが利息を支払いますし、預貯金の場合は、お金を預ける(=お金を貸す)立場になる私たちが利息を受け取ります。
これがマイナス金利になるとどうなるのでしょうか?
単純に考えると、お金を借りる際に、利息をもらうことができたり、預貯金をする際に利息を負担しなければいけない状態を想像しますが、たちまちそういった状況になるわけではなさそうです。
そもそも金利の上げ下げは経済活動に大きな影響を与えます。
経済活動が活発な状態というのは、モノがよく売れたり、サービスの利用者が多くなったり、ようするに多くの人がお金を使っている状態をいいます。
手元にあるお金を使う人には関係ありませんが、例えば住宅購入のように、お金を借りることで大きな買い物をする場合、金利が高い時より、金利が低い時の方がお金は借りやすいですよね。
つまり、基本的な考えは、金利が上がると経済活動は停滞し、金利が下がると経済活動は活発になるわけです。
そして、各国の金利をコントロールしている中央銀行は、「停滞している景気を良くしたい」と思えば金利を引き下げ、「過熱している景気を抑えたい」と思えば金利を引き上げるのです。
経済を活性化するためにどんどん金利を下げた結果、0%になってしまったのが「ゼロ金利政策」で、普通に考えるとこれ以上低い金利はあり得ません。
でも実際にはマイナス金利という世界があったわけですね。
2012年7月にデンマークの中央銀行がマイナス金利を導入し、2014年には欧州中央銀行とスイスの中央銀行がマイナス金利を導入、さらに、スウェーデンでもマイナス金利となっています。
その他、政策金利としてはマイナスではないものの、国債の利回りがマイナスになっているケースは珍しくありません。
これは、「今後ますます金利が下がる(マイナス幅が大きくなる)可能性がある」と考えている投資家がいることから説明できます。
債券というものは「利回り」と「価格」が逆の動きをします。
つまり「金利が上がれば債券価格は下がる」し、「金利が下がれば債券価格は上がる」のです。
たとえ現時点での金利がマイナスだったとしても、先行きの金利がもっと下がる(=マイナス幅が広がる)のであれば、債券価格の上昇が見込めるわけですから、そこで収益を得る機会があると考えるわけです。
ちなみに、今回の日本銀行のマイナス金利は「銀行が日銀に預けているお金のうちの一部」に適用されるものですから、私たちの預貯金金利や、住宅ローン等を借りる際の金利がマイナスになったわけではありません。
銀行などの金融機関は、一定のルールに従って日本銀行の当座預金にお金を預ける義務がありますが、この預金のうち「一定の金額を超えた部分」について、マイナス金利が適用されることになります。
ようするに、「必要以上にお金を預けたら金利を負担してもらいますよ」という姿勢を取ることで、世の中にお金を回そうと考えているわけです。
なお、日本に先行してマイナス金利を導入しているデンマークでは、変動金利で住宅ローンを組んでいる人が、毎月銀行から利子を受け取っているというケースがあったり、銀行預金の際、利息を受け取るのではなく、口座管理手数料のような形でお金を負担するケースも出てきているようです。
こうした現象が「異常な状態」であるならば、そのうちに解消されることになるはずですが、もしかすると、ゼロ金利やマイナス金利というものが、これからの時代は「当たり前の状態」になるのかもしれません。
今までの常識だけにとらわれていてはいけないのかもしれませんね。
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