- 石川 智
- オフィス石川 代表
- 高知県
- ファイナンシャル・プランナー
対象:家計・ライフプラン
こんにちは、石川です。
前回、公的な介護保険制度のことを説明して、皆さんが抱えることになる「介護リスク」のことをお話しました。
そして、それに備えるために民間の生命保険会社の介護保険(介護特約)があるという話をしました。
読者の中にはご自分の保険証券を確かめた人もいることでしょう。
(前編 はここちら)
この後編では、民間の生命保険会社の介護保険(介護特約)について、私の持論をお話します。
皆さんは、民間の介護保険(特約)の、保険金の支払い条件をご存知でしょうか?
つまり、約款(契約の内容ですね)に決められてて、この条件ならば保険金を支払うということです。
大半の保険会社の場合、次の二つの条件で支払う事が多いかと思います。
1 会社所定の要件を満たした場合に支払う
2 公的介護保険制度の要介護2以上の場合に支払う
まず、1について考えてみましょう。
2で公的介護保険制度の要介護度によって保険金を支払うと、わかりやすく決めているのに、なぜわかりにくいこの1の要件も併記されていると思いますか?
それは「公的介護介護保険制度」の仕組みに関係があります。
例えば、20代の人が介護保険や介護特約に加入しているとします。
その場合、2の公的介護保険制度の要介護度での保険金の支払い規定では、その人がどれくらい介護状態が重くても、介護保険金が支払われることはありません。
なぜだかわかりますか?
答えは、20代では公的介護保険制度の被保険者ではないからです。
ですから、公的介護保険制度での、介護認定を受けることは、理論上ありえません。
介護保険料を給料から差し引かれるのは、40歳以上の人ですよね。
ということは、もし20代の人に介護特約なんかをつけていたら、この「保険会社規定の基準」を設けていないと、詐欺だといわれても仕方ありません。
ですから、1の支払い規定があるわけです。
では、2の基準の場合、明快に支払われるといえるでしょうか?
実はここもよく考えて欲しい事があります。
まず、第一点は、あなたが40歳なのか、65歳~なのかで要介護認定を受けられる可能性がかなり違うということです。
40歳~64歳の第2号被保険者が要介護認定を受けるには、16種類の原因による必要があります。
その一方、65歳以上の第1号被保険者は、そうなってしまった原因を絞る事はありません。
ということは、「要介護2以上で保険金を支払います」と約款にあっても、可能性としては、65歳未満の人が要介護認定を受けることは難しい、と言えないでしょうか?
第二点は、要介護認定に地域差があるのでは、と言うことです。
例えばこんな記事からも伺えます。
中日新聞より 「特養は要介護3以上」 …でも、介護認定に地域差 実態映さぬ審査も
この傾向が極端なケースがあったら、同程度のA県に住む人とB県に住む人が同じ会社の介護保険に加入していて、A県の人は要介護2と認定され、保険金がおり、B県に住む人は要介護1と認定され、保険金がおりなかった、なんていう事態がないとも言い切れませんね。
第三点は、もう少し深いケースです。
それは今後ず~と、要介護認定の国の基準が変わらないだらろうか?、という先行きに関する不透明さです。
これから、高齢者がどんどん増えてくるときに、国が介護保険制度の仕組みや考え方を変更せずにいられるだろうか、と思いませんか?
つまり、今のこの時点で要介護2と認定されて、民間の介護保険からも保険金が支払われたとしても、30年に同程度の要介護度と思える人が、今と同じように「要介護2」と認定されるだろうか、という漠然とした不安がある、ということです。
30歳の人が民間の介護保険に加入して、70歳以降の介護リスクに備えていたとします。
コツコツと保険料を支払い、70歳を迎えた40年後に要介護状態になったが、保険に加入した当時だったら要介護2と認定されるレベルと同じレベルと思ったが、40年後にはその程度の要介護度では、要介護1にしかならなかったというようなケースを想定してしまいます。
保険契約時の約款にある「要介護2で支払います」ということは、40年後だからといって変更があるわけではないのですが、国の制度自体が変わってしまっていて、どうにうもできなかった、というケースだとも言えます。
以上のような視点を披露すると、介護保険なんて加入する意味ないじゃん、という人もいることでしょう。
私の持論がそれを裏付けるということだけを、私は言いたい訳ではありません。
この介護保険制度のように、これから大きく制度が変わる可能性があると想像できるのに、何の疑問も持たずに、勧められるまま保険に加入することは、結果的には、あなたにとってデメリットをもたらす可能性があり得る、ということをお伝えしたいのです。
その冷静な視点を持つことができれば、将来「ああ、だから保険なんて嫌いなんだよ!」というような事態を避けることができるのではないでしょうか?
今回は介護保険の例でお話しましたが、「お金とお金周辺のこと」には、少しでもいいので関心をもって欲しいと思います。
ではまた、お会いしましょう!