「良くない人事評価」は納得されないことが当たり前?
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ボーナス支給が間近に迫ったこの時期、そのための人事評価結果が確定したという会社がほとんどだと思います。
人事制度の中で、「評価への納得性」はとても重視されることです。様々な基準や手順を決めて公正さを担保する、個別に結果説明の機会を設けるなど、納得性を高めるためにいろいろな取り組みを行います。
しかし、その結果として、必ずしも納得が得られる訳ではありません。どちらかといえば納得を得られないことの方が多いのではないかと思います。
先日もある知人から、自分の評価に対する不満いっぱいの愚痴を聞きました。
自分を評価する上司に対して
「現場を見ていないくせに・・・」
「技術を知らないから大変さがわかっていない」
「自分ができないくせに人には要求する」
「えこひいき」
「自分の保身」・・・・
他にもいろいろ言っていましたが、こんな話はきっと他の方々も、たくさん経験があると思います。
この知人の心情にはとりあえず同情しますが、第三者として冷静に見た時、例えばこの上司がしっかり現場を見ていたとしたら、評価結果に納得するのかというと、たぶんそうはなりません。
技術を勉強して知識豊富になったとしても、同じく納得はしないでしょう。そもそも本当に現場を見ていないのかも、技術を知らないのかも、評価された本人の言い分だけなので、実際のところはわかりません。
このように、「評価への納得性」を得ることが難しいのは、それが本人の主観や感情に左右される部分がとても大きいからです。
人間は褒められるとうれしく、叱られることには基本的に耐えられないと言われます。人事考課の中でいえば、自己評価よりも高く評価されれば、それは褒められたことと同じ、自己評価よりも低く評価されれば、それは叱られたこと、けなされたことと同じです。
心理学では有名な「ロサダの法則」というものがあり、それによるとポジティブなこととネガティブなことの比率が3:1以上であると、人間はポジティブな感情を持ち続けられるのだそうです。「3回褒めたら1回叱っても良い」というような感じです。
人事評価の結果が、このような比率になることはほとんどないでしょうから、評価結果をポジティブにとらえることは、なかなかできないということになります。こんな心理学の側面から見ても、人事評価の結果には納得できないのが、ある意味当然ということになります。
これを少しでも良い形にするには、本人へのフィードバックの中で、評価結果にまつわるポジティブな要素を増やすようにコミュニケーションを取っていくしかありません。
「良くない評価は納得されなくて当たり前」という前提のもとに、制度面でも運用面でも、できることを少しずつやっていくしかないように思います。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
組織に合ったモチベーション対策と現場力は、業績向上の鍵です。
組織が持っているムードは、社風、一体感など感覚的に表現されますが、その全ては人の気持ちに関わる事で、業績を左右する経営課題といえます。この視点から貴社の制度、採用、育成など人事の課題解決を専門的に支援し、強い組織作りと業績向上に貢献します。
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