日経記事;『三菱レイヨン ドイツに炭素繊維の中間材料工場 自動車向け開拓』に関する考察 - 新規事業・事業拡大全般 - 専門家プロファイル

グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 代表
神奈川県
経営コンサルタント
専門家の皆様へ 専門家プロファイルでは、さまざまなジャンルの専門家を募集しています。
出展をご検討の方はお気軽にご請求ください。

日経記事;『三菱レイヨン ドイツに炭素繊維の中間材料工場 自動車向け開拓』に関する考察

- good

  1. 法人・ビジネス
  2. 新規事業・事業拡大
  3. 新規事業・事業拡大全般
経営戦略 新規事業開拓・立上

皆様、
こんにちは。
グローバルビジネスマッチングアドバイザー 山本 雅暁です。

10月10日付の日経新聞に、『三菱レイヨン ドイツに炭素繊維の中間材料工場 自動車向け開拓』のタイトルで記事が掲載されました。

本日は、この記事に関して考えを述べます。

記事の主な内容は以下の通りです。

『三菱ケミカルホールディングス傘下の三菱レイヨンはドイツに炭素繊維の中間材料を生産する工場を建設する。自動車向けの成型部材に適した材料で、生産能力は年6000トンを見込む。

投資額は5億~10億円程度で、2016年9月にも稼働させる。自動車の燃費改善に欠かせない軽量化に役立つ素材として、自動車や部品のメーカーに売り込んでいく。

三菱レイヨンの子会社が拠点を持つドイツ・バイエルン州に工場を建設する。生産するのは「SMC」と呼ぶ炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の中間材料。自動車の構造部品など複雑な立体成型に適しているうえ、大量生産する部品にも向く。現在は同社の豊橋事業所(愛知県豊橋市)が年3000トン程度の生産能力を持つ。

当初の生産量は数百トン程度とみられ、自動車や部品メーカーにサンプル出荷する。自動車向けの採用が決まった段階で生産量を拡大する。中間材料の原料となる炭素繊維は日本や米国の自社工場から出荷する予定だ。

同社は4月、ドイツに「CFマーケティング・アンド・テクニカルセンター」を設置した。外装材や構造部材など用途にあった材料や加工手法を提案できるようにする。中間材料の現地生産で、欧州の自動車・部品メーカーとのやりとりを迅速にできる体制が整う。

炭素繊維は航空機や風力発電機など産業用途が広がっている。自動車でも軽量化による燃費効率の改善に寄与するため、高級車を中心に採用が拡大。三菱レイヨンも独自動車大手BMWの電気自動車(EV)「i3」向けに炭素繊維の原料を供給している。

炭素繊維は鉄に比べ重量が4分の1程度と軽く、強度が10倍以上とされる。自動車向けでは外装部材が中心だったが、軽量化につながる構造部材での採用が進むとみられている。三菱レイヨンは構造部材に適した中間材料をドイツで生産し需要拡大に応える。』


炭素繊維について、たびたび本ブログ・コラムでも書いています。炭素繊維は、日本の製造事業者が得意とする、あるいは強みを発揮できる事業分野の一つである素材の代表事例になることによります。

炭素繊維は、もともと1959年に米国のユニオン・カーバイドの子会社ナショナル・カーボンが、レーヨンから黒鉛にする世界初の炭素繊維を発明したことに始まります。約60年前に大元の技術が開発されました。このレーヨンの炭素繊維は、実用化されませんでしたが、これを機に多くの大手製造事業者が炭素繊維の開発・実用化を試みました。

なぜ多くの製造事業者が炭素繊維の開発・実用化を試みたかというと、炭素繊維は鉄に比べて、軽くて強いという大きなメリットがあることによります。炭素繊維を鉄と比較すると比重で1/4、比強度で10倍になります。

そのほか、炭素繊維は、耐摩耗性、耐熱性、熱伸縮性、耐酸性、電気伝導性などで優れています。他方、今まで炭素繊維は、加工の難しさや高い製造コストなどの課題を抱えていました。

米国メーカーは、炭素繊維の開発・実用化は、その難易度の高さから諦めてしまいました。その結果、東レ、帝人、三菱レイヨンなどの国内メーカーのみが、長期間開発・実用化を進めてきて、加工の難しさや高い製造コストの課題解決を実現してきました。

炭素繊維が大きな注目をあびたのが、東レが2014年4月に米国の大手航空機メーカーであるボーイングから、航空機向け炭素繊維複合材を1兆円分受注すると発表されてからです。

東レは、約40年間炭素繊維を事業化してきましたが、それまでの用途釣りざおやゴルフクラブなどの小規模需要が対象でした。

このボーイング採用決定が、炭素繊維を航空機やさらに大きな需要が見込める自動車用途に拡大していきました。

現在、東レ、帝人、三菱レイヨンなどの国内メーカーは、飛行機と自動車需要の獲得に向けて積極的な事業活動を行っています。

本日の記事は、その1社である三菱レイヨンがドイツの自動車メーカーから炭素繊維採用を獲得するための動きについて書いています。

いよいよ、炭素繊維の実需がさらに一気に拡大することになります。当面炭素繊維の事業は、日本の素材産業の大きな柱の一つになります。炭素繊維は、今後飛行機や自動車に大量に使用される見込みであり、本日の記事では、三菱レイヨンの推定値として、自動車用途に2020年には年間2万トン以上の需要が見込まれいます。この需要は、2014年度の約4倍となります。

一方、炭素繊維は、リサイクルの難しさという大きな課題も抱えています。炭素繊維の廃棄は、現在埋め立てるのが主流になっています。

上記に示したようにこれだけの炭素繊維が市場に投入されると、廃棄物の量も飛躍的に増えますので、現行の主流のやり方である埋め立てだけでは処理不能になります。

経済産業省は、東レ、帝人、三菱レイヨンなどの炭素繊維メーカーと共同で、「炭素繊維協会」を立ち上げて、炭素繊維のリサイクル法について開発・実用化を進めています。

東レは、2014年に炭素繊維協会が開発中の再処理技術をベースに、使用済みの炭素繊維複合材料から炭素繊維を取り出す、再利用法を2016年までに事業化すると発表しました。

三菱レイヨンも2015年に炭素繊維のリサイクルを事業化することを発表しています。

これらの国内メーカーの動きは、炭素繊維という素材を、新規需要獲得だけでなく、リサイクルまで考えた総合的な取り組みを行っていることを示しています。

炭素繊維は間違いなく、国内メーカーが長期間開発・実用化行うための巨額投資を行ってきた次世代の新規素材であり、世界市場で勝ち組になります。

炭素繊維事業が、国内メーカーが製造事業者の王道を歩む事業例の一つとしてなるために、リサイクル技術の開発・実用化も需要の急拡大と並行して行うことを強く期待します。

素材産業は、すそ野が広い事業の一つですので、東レ、帝人、三菱レイヨンなどの炭素繊維メーカーが切磋琢磨しながら、商品競争力のさらなる強化とリサイクル技術の早期実用化を期待します。

この視点から、国内メーカーの炭素繊維事業の動きに注目していきます。

よろしくお願いいたします。

グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 山本 雅暁


 

カテゴリ このコラムの執筆専門家

(神奈川県 / 経営コンサルタント)
グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 代表

起業・企業存続の為の経営戦略立案・実行と、ビジネススキル向上

起業及び、事業拡大や経営合理化を目指す企業に対して経営コンサルを行います。大手メーカーで得た経験を活かし、補助金活用、アライアンスやM&A、市場分析に基づいた事業戦略策定・実行や事業再生を支援します。OJT研修でのビジネススキル向上を支援します。

カテゴリ 「経営戦略」のコラム