「会社は誰のものか」は決めなければならないことなのか
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昨年のことですが、製薬最大手の武田薬品工業で、外国人社長の就任に対して、株主である創業一族や元経営幹部らが、「優良な創薬技術の国外流出」「研究者の社外流出」「外資の乗っ取り」といった理由を挙げていって反対したということがありました。
結局は他の株主に同調する動きは広がらずに、この外国人社長が就任しましたが、実際に経営に関わってきた創業家や元幹部からすれば、「自分たちが作り上げてきた会社」が壊されていくように感じられ、それが我慢できなかったのだろうと思います。
今はこの社長を含めた外国人幹部を中心に、急速な国際化が進められているようなので、そもそもの懸念が現実化していると言えなくもありません。これからどうなるかは、見守っていく必要があるでしょう。
この手の話題に関しては、よく「会社はいったい誰のものか」という話になることがあります。
それが実際にどうなのかを考えてみると、まず社員であれば、「自分の所属している会社」とは思っているでしょうが、「会社は自分のもの」と考える人は、それほど多くはないように思います。
また、株主であれば、やはり「自分が投資している会社」、もしくは「思い入れがある会社」ではあるかもしれませんが、「会社は自分のもの」ということになると、社員の場合と同じくそこまでの意識であることは少ないでしょう。
これが経営者で、それがさらに創業家やオーナー社長ということになれば、「会社は自分のもの」と思っている人は結構多そうですが、その一方で、ほとんどの経営者は、会社が自分の力だけで成り立つものではないことがわかっているので、「最後に責任を取るのは自分」とは思っていても、「会社は自分のもの」とはっきり公言する人はあまり多くないように思います。、
結局、本音の部分で心の底から「会社は自分のものだ」と思う人は、たぶんそれほど多くなく、ごく一部の創業オーナーなどに限られるのではないかと思います。
「会社は誰のものか」という議論が出てくるときに共通していると思うのは、経営者、社員、株主といったステークホルダーの間のバランスに偏りが見られるということです。
最近でいえば、「株主至上主義」のような傾向が強まると、それと対抗するように、「会社は社員のもの」「従業員満足」といった考え方が出てきたり、私利私欲に行き過ぎたオーナー経営者に対して、他の従業員や株主が自浄作用を発揮してそれを解消するような動きをしたりします。
少し古いところでは、一部の労働組合で過度な要求に基づくストライキなどを繰り返した結果、一般からの支持を失って、労働運動自体が衰退に向かってしまったというようなこともあります。
会社というのは、経営者が強すぎても、株主が強すぎても、社員が強すぎても、結局はあまり良い状態ではなく、「会社が絶妙なバランスでみんなのものになっている状態」が最も良いのではないかと思います。そんな会社であれば、収益も上がり、株価も上がり、社員もハッピーになります。
「会社は誰のものか」を決めようとするのは、実は無意味なことではないかと思います。
「会社はみんなのもの」ということを前提に、その程よいバランスを見つけ出すことが、良い会社になる条件なのではないでしょうか。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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