少し前にあった話題ですが、中国の不動産会社が顧客獲得の一環として、女性社員に「ミニスカ奨励金」を交付していることが発覚し、それが物議を醸しているという話がありました。
男性社員にはおおむね好評だったということは、ある程度理解できるとして、女性社員の中でも、スタイルに自信のある人は、この制度にそれほど反感を抱かず積極的に活用している一方、そうでない人からは、「差別」「不公平」などというネガティブな反応なのだそうです。
この話に関連して、私はアメリカのフーターズの話を思い起こしました。
スタイルの良い美形の女性が、ちょっと露出度高めの服装で接客してくれる飲食店ですが、この「フーターズガール」として働きたいという希望者は結構多く、アメリカでは一つの職種として認められていて、履歴書にも「フーターズガール」と書けるほどのステータスがあるのだそうです。
こういうことであっても、「女性らしさを強制している」とか「女性差別だ」という人がいますが、私はそれは少し違うように思います。自分の強みを活かして、本人の意志でやりたいと思っていることだからです。
差別というのは、対象にしていることが、例えば性別、年令、人種、国籍など、本人の意志ではどうしようもないことを理由にして、どちらか一方だけに偏った差をつけようとすることを指しているのであって、人によって感じ方が違うことで、なおかつ本人が納得していることであれば、それは差別ではないと思います。
ある企業の採用条件で、「非喫煙者」という記述を見かけたことがありますが、これを差別だという声がありました。しかし、応募したいのならばタバコを止めれば良いことですし、それができないならば、喫煙者にとって条件の悪い理不尽な会社には行かなければよいだけのことです。
最近では、航空会社のスカイマークの客室乗務員の制服にミニスカートが採用され、やはり賛否両論がありました。
会社では「着用は同意した者だけ」と言っていましたが、周囲からの無言の圧力もあるでしょうし、純粋に本人の意志で着用拒否をするのはちょっと難しそうに思います。実際にCAの労働組合の一部からは、「保安員としての業務に支障があり、セクハラの観点でも問題だ」という指摘もあったようです。
しかし、もしもこれが採用条件などの形で事前に明らかになっていたとすれば、自分の意志で判断できる余地がありますから、その捉え方は少し違ってくるでしょう。
前述のいくつかの例の中で、嫌がる人に強制するようなことがあったとすれば、それは問題だと思いますが、どう対応するかが本人の意思次第ということになれば、これを差別とまで言い切るのは、果たしてどうだろうかと思います。
このように、差別という話は、その人の受けとめによって、感じ方が異なることなので、一概に判断するのは難しいことです。
最近は、自分が不利益を被ると、それをすぐに差別だと言いがちな傾向があるように思います。しかし本当の意味での差別というのは、「自分ではどうしようもない理由で、不利益を被ったり攻撃されたりすること」であるはずです。
差別という言葉を安易に使いすぎることについては、私はあまり賛成できません。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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