変貌する現代会計(石川純治著) - 会計・経理全般 - 専門家プロファイル

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変貌する現代会計(石川純治著)

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雑感 書評
今日は、以前、紹介すると書いたまま紹介できずにいた
石川純治先生の「変貌する現代会計」日本評論社(2008年7月)
を紹介しようと思います。

本書については、是非、前著である
石川純治「変わる社会、変わる会計」日本評論社(2006年5月)と、
石川純治先生のHPにおける記事とを合わせてお読み頂けると幸いです。
石川先生のウェブサイトは以下のアドレスからアクセスして下さい。
http://www.komazawa-u.ac.jp/~ishikawa/profile.htm

石川先生とは縁もゆかりもないのですが、先生が大阪大学にいた
15年前くらい(私にとっては法政のマスター時代)から注目していました。

先生に限らず、井尻先生の系統の方は注目していたというべきでしょうか。
昨今の先生方の隆盛から見ると、私の注目の仕方も
あながちずれていなかったんだなと思っています。

さて、本書は、企業会計原則中心だった時代から大きく変容してきた
わが国の会計について、その変容の「形」と「方向」をしめすことを
目的としています。

石川先生の秀逸な点は、いくら変容し、いわゆる新会計基準が、
企業会計原則を既に過去の遺物と言わんばかりの扱いをしていたとしても、
あくまで企業会計諸基準は、企業会計原則が端緒にあるというスタンスを
崩さないところにあろう。つまり、史的なアプローチを常に念頭に置き、
また、わが国の制度である以上、わが国の法規範を無視することなく、
存在を認めた上で、会計側が進むべき道を模索されているのである。

本書も、第1章に「企業会計原則」と今日、を置き、
時価主義を唱えるいわゆる新会計基準が、いかにも時価は1つであると
言わんばかりに、割引現在価値に重点を置いていたとしても、
性質の異なる時価の議論がこれまで4つの時価として議論されてきたことを
明らかにしています。そして、「英米ばかりみず、これまで蓄積された
日本の会計理論にもっと目を向けてもらいたいものです。日本の古典的理論は、
けっして役割を終えた過去の遺産といったものではありません。
メーテルリンクの「青い鳥」ではありませんが、身近なところにこそ
宝物があったりするものです。」(本書P75)と、投資情報重視のアメリカ基準に
べったり追従し、日本的に改良すればよいという傾向を批判する。

また、利害調整会計と意思決定会計という2つ会計の役割について、
「A:「企業会計原則」の基礎には分配可能利益計算の枠組みがあり、
そのもとで利害調整会計および意思決定会計の双方が遂行されてきたと
いえます。「企業会計原則」は、したがってこの双方の目的を担う
会計原則という役割を合わせもち、そうした二重の構造の上に立っています。(略)
Q:しかし、今日は意思決定有用性会計が優位に立っていますね。
A:そうです。金融商品会計などに代表される今日の新たな会計基準は、
意思決定有用性を軸にした情報開示会計の優位性の見地から
出てきています。」(本書P182-183)と指摘し、
「商法改正そして新会社法における省令委任方式による開示規制の
金融商品取引法化、および配当規制の性格や質も含めて大きな変容が
なされようとしているわけですから、情報開示会計と利害調整会計の
分離傾向はこれまでの商法との調整という枠を超えて、いっそう
強まるものと思われます。」(本書P183)と指摘する。

石川先生が指摘するように、会計諸基準と法が求める会計規制とに
目的の相違が顕在化し、矛盾が出てき始めているだけに、
この指摘は実に深いものがある。

また、石川先生は、中小会社の会計に対しても、
新会社法は公開大会社ではなく、むしろ中小会社の方がその基礎と
なっているにもかかわらず、「中小会社の会計基準に関しては、
公開大会社向けの会計基準の”簡易バージョン”といった位置づけ
となっています。大幅に省令委任された会計ルールは、(略)
公開大会社向けの金融商品取引法会計といえますが、会社の規模や
公開・非公開を問わず1つの経済実態には会計ルールはただ1つ、
というのが基本スタンスのようです。」(本書P187)と指摘し、
「グローバルな資本主義のあり方を受けて、グローバル化を
いっそう進める企業会計と、国内法である租税法に基づく
税務会計とは、本来的にその目的や性格を異にしています。
また、(略)今日の企業会計は情報開示志向をいっそう強めていますが、
税法は所得計算が任務です。この情報開示と所得計算との乖離、
そして(略)利益計算と所得計算との乖離は、企業会計と税法との
一体的関係の何らかの修正か、もしくは分離主義の方向に
傾くといえるでしょう。」(本書P200)と指摘する。

私の持論でもありますが、本来目的の異なる会計と税法とが
同じ基準で処理しようとすることがおかしいのであり、
確定決算主義に基づく損金経理を廃止し、確定決算主義から離脱すべきであろう。

石川先生はここまで明確には言われていないが、会計と税法・商法との
乖離がこれ以上進むことの矛盾を是正すべきとの見解は
こういう議論を表に出さない主流派の研究者が多い中で、
我々実務家からは、非常に心強い思いで本書を読ませて頂いたところである。

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