日経記事;『炭素繊維、中小も挑む 得意技術で複雑加工』に関する考察 - 各種の新規事業・事業拡大 - 専門家プロファイル

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日経記事;『炭素繊維、中小も挑む 得意技術で複雑加工』に関する考察

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経営戦略 新規事業開拓・立上

皆様、
おはようございます。

グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー 山本 雅暁です。

6月29日付の日経新聞に、『炭素繊維、中小も挑む 得意技術で複雑加工 創和、織物でシート状に/阿波製紙、紙すき技術で薄く』のタイトルで記事が掲載されました。

本日は、この記事に関して考えを述べます。

記事の主な内容は以下の通りです。

『世界的に拡大している炭素繊維市場を開拓する中小企業が相次いでいる。炭素繊維の世界需要は2020年までに現在の2倍以上に拡大する見通しで、今後は自動車や電子機器での採用も増える。

より複雑な形状に加工する技術が求められるなか、繊維や製紙などで培った技術力を生かして拡大市場の取り込みを目指している。

ユニホーム織物製造の創和テキスタイル(石川県羽咋市、藤井寛三社長)の工場では、米ボーイングの最新旅客機「787」向け炭素繊維織物の製造準備が進む。航空機の部材製造では高い安全性が求められるが、創和は6月中にボーイングの認定を取得し、7月に生産を始める計画だ。

炭素繊維は伸びにくく織るのは難しいが、高密度に糸をそろえて織る技術を確立した。創和が製造した炭素繊維織物は、資本関係のある東レグループの米国工場でシート状複合材に加工される。

創和は合成繊維のユニホーム織物では国内トップシェアを占めるが「大きな成長が見込めない」(藤井社長)として、拡大する航空機分野の開拓に乗り出した。現在、売上高約50億円のうち炭素繊維織物はスポーツ用品向けなどの5%にとどまるが、早期に10%まで高める考えだ。

炭素繊維の重量は鉄の4分の1だが、強度は10倍以上。今後はスマートフォン(スマホ)のケースなど電子機器の部品にも広がる見通しだ。ただ炭素繊維自体は糸のため、部品に加工するには織物にしたり樹脂で固めた炭素繊維強化プラスチック(CFRP)にしたりする必要がある。

自動車エンジン用フィルターなどを製造する阿波製紙は複雑な形にも薄く成型できるCFRPを開発した。製紙で伝統的な紙すきの製法を用いて、短い繊維を水中に均一に分散させ紙をすくようにして薄い炭素繊維シートを作る。スマホなどでの採用をにらみ、将来の量産を目指す。

最近は産学官が連携して、中小企業の炭素繊維市場への進出を後押しする動きも出てきた。

産業用資材製造のSHINDO(福井県あわら市、新道忠志最高経営責任者)と染色加工のミツヤ(福井市、西山和夫社長)は福井県工業技術センターの特許などを活用し軽くて丈夫なCFRPを開発。このほど欧州エアバスの新型機に採用された。

CFRPで複雑な形状に加工する需要が増えるとみて、成型機器で炭素繊維市場の取り込みを目指す企業もある。国内で初めてプラスチック射出成型機を実用化した名機製作所はCFRP成型の実験機を開発。量産化に向けた製品設計に生かすため、部品メーカーからの炭素繊維部品の実験依頼に応じている。』


炭素繊維については、たびたび国内素材メーカーの強みの事例として取り上げています。6月27日にも、日経記事;『東レ、営業益最高330億円 4~6月5割増 航空機向け炭素繊維好調 市場予想上回る』に関する考察 [新規事業開拓・立上]のタイトルで記事を書きました。

炭素繊維は、もともと米国企業で発明されました。しかし、製造方法の難しさや高い製造コストなどの課題があったため、米国企業は開発・実用化を断念しました。

これに対して、東レ、帝人、三菱レイヨンなどの国内大手素材メーカーは、長年にわたり巨額投資を行って、開発・実用化を進めてきました。

その結果、炭素繊維は航空機や自動車用途などの分野で使用されており、高強度と軽量性などの特徴を生かした分野で新規導入が始まっています。

過去の新規素材の導入事例からみて、炭素繊維が航空機用途に加えて、量産効果が出る自動車用途に広がると、一気に他分野に広がり始めます。

炭素繊維が量産化され始めると、製造コストの低減、加工技術の多様化が進みます。いわゆるポジティブスパイラル効果が大きくなります。

炭素繊維の状況は、国内産業界にこのポジティブスパイラルが起き始めています。ここに中小製造事業者が参入できる事業環境が生まれます。

本日の記事は、そのビジネス環境下で事業している中小製造事業者を取り上げています。

創和テキスタイルは、化学合成繊維の長繊維(ポリエステル、ナイロンなどのフィラメント)と、天然繊維と合成繊維との紡績糸(ポリエステル/綿、ポリエステル/レーヨンなど)をミックスアップした織物を、衣服などの多用途に提供しています。

現在、創和は、東レのグループ会社であり、炭素繊維織物の開発・生産拠点として位置づけられています。創和は、炭素繊維に関して高密度に糸をそろえて織る技術を確立したとのことであり、航空機用途に使用されます。

その他の中小製造事業者の事例として、阿波製紙は、炭素繊維を部品用途として使用するために必要な炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を複雑な形にも薄く成型できるようにしました。当社の強みである製紙で伝統的な紙すきの製法を活用して薄い炭素繊維シートを作ったとのこと。など

これらの中小製造事業者の事例は、大手メーカーが多額の投資を行って作った巨大市場の周辺で、自社の強みを最大化して、差別化・差異化によるニッチ市場を築き上げるやり方を示しています。

中小製造事業者は、大手メーカーが巨額開発投資を行って炭素繊維のような新規素材を実用化売ることはできません。

しかし、自社の加工技術などを生かして、巨大市場の周辺事業で多様な用途やニーズに応える形で新規事業立上や既存事業の強化を行うことは可能です。

今まで大手メーカーと中小製造事業者は、このように役割分担を行うことで棲み分けして、市場を作り事業拡大を図ってきました。

東レ、帝人、三菱レイヨンなどの国内大手メーカーが築いた炭素繊維事業が、航空機以外の自動車や小型電気電子機器などに使われるようになるための環境整備が進みつつあります。

大手と中小が役割分担することで、炭素繊維の新規事業立上が活発化して、世界市場で大きく収益を伸ばすようになることを期待します。

ますます多くの中小企業が炭素繊維市場に参入するとみています。鉄などの既存素材品との競争が激しくなり、お互いに切磋琢磨して新規用途が開拓されることも注目・期待しています。

今後も炭素繊維の動きに注目していきます。

よろしくお願いいたします。

グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー GBM&A 山本 雅暁

 

 

 

 

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