Dr.倫太郎 2 心理療法における治療の枠組み  - 恋愛の悩み・問題 - 専門家プロファイル

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Dr.倫太郎 2 心理療法における治療の枠組み 

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ドラマDr.倫太郎に関するブログを書いています。

第7話まで観ました。

倫太郎先生は精神科医で、今、熱心に診療を勧めている解離性同一性障害(多重人格)である夢乃さんという芸者さんがいます。

ところが、この夢乃は、多重人格の中でもサブ的な「副人格」で、治療が進むと、自分の人格が消されてしまう事を恐れて、治療を妨害しようと企てます。

第7話では、ひょんな出来ごとから、出会って間もない時の芸者姿の自分と倫太郎先生がキスをしている写真を入手した夢乃は、お金に困っている自分の母親にその写真を渡し、法外なお金をゆすり取らせようと画策したのです。

病院の診察室に乗りこんできた母親は、倫太郎先生にその写真を見せ
「高名な先生が、患者とこんな関係になっている事が世間に知れたら、どうなるんでしょうかね?アッハッハ」
と悪者モード全開でうそぶくシーンでドラマは終わりました。

窮地に立たされた先生はどうなるのでしょう!?という展開です。




しかし、良く考えてみると、話の成り行きとして

ある精神科医が、プライベートで魅力的な女性と出会ってキスをしてしまった。

ところが良く知り合うにつれ、その女性は心の病であることがわかって来た。

だから治療を本人に勧め、患者として扱うことにした。



確かに患者さんを好きになってしまい、付き合ってしまっては問題となるものですが、そんな流れですから、患者さんとキスをして、個人的に付き合おうとしているわけではないので、なんの倫理規定にふれるものではないことでしょう。


しかも!倫太郎先生は周囲のドクターや看護師の方々には、夢乃のことを「あれは誰でか?」と聞かれて「私の患者です」と答えていますが、厳密に言うとまだ患者さんと言う立場ではないように思えます。

なぜかと言うと、夢乃は度々診察室や、倫太郎先生の自宅や、外出先などで会ったり、メールのやり取りをしていますが、結局一度もきちんと診察室で診察を受けていませんし、診察料金を払っている気配がありません。

いまだ患者と担当医という関係が出来ていないのです。





相談者が最初に相談にやってきて、症状や問題の背景などの聞き取りを行うことを「インテーク」と言います。

そして相談者の抱える問題に立ち入り、解決に向けて協力できると判断されれば、そのことを告げて、お互いに解決に向けて協力し合って行きましょう」と協力関係を結ぶことを「治療同盟」と呼びます。

こうした「治療関係であることを、お互いに認識する」ことは、最初の段階で非常に大切な事なのです。

倫太郎先生は、プライベートで出会った、魅力的な女性が、たまたま「助けてあげたくなるような心の病と、状況」にあったために、治療を望んでやって来た患者さんなわけではない、特殊な状況であり、なかなかこの「治療同盟」を結びにくいケースとなってしまい、心療する前から非常に苦労する羽目になってしまっているのですね。



「医者だって恋をする」

と他のドラマのキャッチフレーズですが、治療者も人間ですから患者さんやクライエントさんに恋愛感情を抱いてしまう事もあり得ることでしょう。

しかし、それはドラマの中でも「転移」「逆転移」という精神医学用語で説明されていましたが、治療上はそうした治療者とクライエントの抱く「恋愛感情のようなもの」を分析する事で、治療上の効果を上げる為にお互いに話し合ったりすることはあっても、実際恋愛関係になってしまう事は御法度になります。


私も恋人もいない独身時代には、師匠の先生や、先輩達から、「なるべく結婚しておいた方が、仕事上は良いよ」とアドバイスを受けました。
単純に「ただいま恋人募集中!」なんてフリーな状況では、クライエントさんの方が「えっ先生まだ独身?私が恋人になる事もあり得るかも!?」なんて想像を抱かせてしまったり、こちらもクライエントさんに恋愛的魅力を感じてしまったり、なんて治療上の関係性がおかしな方向に行ってしまうリスクが高くなってしまうことでしょう。

この問題は、次回に書いてみることにして、今回は治療に於いて必要な「枠組み」というものがあることについて書いてみたいと思います。


ドクター始めカウンセラー、サイコセラピスト、ヒーラーなど、人の心に携わる仕事をしている人の名称はいくつかありますが、大体共通して存在する、治療者と相談者(クライエント)の間の、治療上崩してはならない関係を保つための「枠踏み」というものがあります。

簡単に言ってしまうと「プライベートな間柄にならない」「境界があいまいな、なあなあな関係にならない」ようにするための枠です。


あらかじめ決まられた心療時間内に、あらかじめ決められた心療場所でのみ、診療を行い、あらかじめ決められた診療料金を支払ってもらう。
というのが基本です。あくまで基本であって、クライエントさんの状況次第でケースバイケースでもあるのが実際かとは思います。


クライエントさんは、お金を出してまで人に相談しよう、助けてもらおう、と思って来られるのですから、相当真剣で、困った状況にあると思われます。

ですから、「助けて欲しい」という気持ちが強く、それ自体は「治療同盟」を強める良い要素なのですが、デメリットな面を言えばそれだけ「依存心」があることが考えられます。

そんな状況で、
「急に会いたくなったんだね。いつでも会いに来て良いからね」
「真夜中でもいつでも、どこへでも飛んで行くからね」
「お金が無いんだね。ある時払ってくれれば良いからね」
とクライエントさんの要求に応えていたら、ますますクライエントさんの依存心は強まってしまうことでしょう。

依存心が強くなってしまうと、治療同盟やクライエントさんからの信頼度も強くなりますが、クライエントさんの「自分で解決して行こう」という自律心は弱くなってしまい、結局問題解決を遅くしてしまう事となりえます。

極端には
「問題なんか解決しなくても良い。こうして先生に助けてもらえることが幸せだから、治らない方が良い」
みたいにさえ陥ってしまうことがあります。


こうした依存心が、わかりやすく言えば「転移」と呼ばれる感情です。


本来なら、過去からの自分に近しい人や、他の親密な人に向けられるはずだった感情が、今そばにいる治療者に向けられてしまっているというわけです。


しかし、だからといってなんでも厳格に「それは枠組みからはずれることになるので、お断りします」と冷たく突き放してしまうのも治療同盟に取っては良くありません。

特に愛情を満たされることが少なく、そのため人に頼れなかったり、人の親切が信じられなかったりするクライエントさんの場合、
「時には人に依存しても良いんだ。私は愛情をもらえる存在なんだ」
と思ってもらえることが治療上の鍵となる事もあります。

ですから、あくまで「問題解決に必要なこと」であると、冷静に判断してバランスを取りながら「枠組み」を守ったり、崩したりする度量が必要となって来ます。


そこで治療者が「このクライエントさんは自分の好みに合った好きな人だから役に立ちたい」

自分は治療者として立派になりたいから、極力この人の役に立ちたい。そのためには何でもクライエントさんの言うことを聞いてあげたい」

「このクライエントさんは、苦労して自分を育ててくれたお母さんに似ている。だからできることなら何でも助けてあげたい」

「このクライエントさんは、いつも厳しくて、言うことを聞くしかなかったお母さんに似ている。だから今回も、言われたことは断れない」

と言う風に、いつの間にか「自分の気持ち」が優先してしまうことがあり得ます。
意識している場合もあれば、無意識な場合も。

こうした治療者側の、クライエントさんに向けた感情を、わかりやすく言えば「逆転移」と呼びます。本来なら、過去からの自分に近しい人や、他の親密な人に向けられるはずだった感情が、今そばにいるクライエントさんに向けられてしまっているというわけです。


この逆転移感情を抱いてしまっていることを、治療者側がいつまでも気付かないでしまっていると、問題解決に向かって頑張っている様でいて、実は同じ所をグルグルしてしまう危険性が生まれてしまいます。

治療がある程度進んだ所から、進展しなくなってしまったり、関係が悪くなりカウンセリングが途中で終わってしまうような「失敗の原因」として最も多いのが、この逆転移に気付けない場合の様です。

ですから本当は治療者も、もっと他の実力ある治療者にケースについて客観的に分析してもらう機会があることが望ましいと考えられます。これを「スーパーバイズ」と呼びます。


倫太郎先生も、何か事情があって病院を退職してしまった先輩治療家(演・遠藤憲一さん)に意見を求めに訪ねていますが、これがスーパーバイズですね。

どうやら、倫太郎先生も、自分も夢乃も、共に「男にだらしない母親を持ったことで、傷付く経験をした」ことで、夢乃とあきら(夢乃の中の主人格の幼い少女)に、人一倍共感していると思えますが、夢乃の中に傷付いた自分を重ね合わせてしまっていると言う意味では、すでに逆転移してしまっているようです。

夢乃を助けることで、傷付いたままの自分を助けたいと、無意識では思っているのではないでしょうか?


このドラマの上手いなぁと思う所は、倫太郎先生と夢乃の話を、よりわかりやすい形で説明するために、毎回様々な心の病を抱えた患者さんが登場する事です。

これまで
「解離性遁走(本人には意識なく、記憶を消して、強い罪悪感や、辛いことから逃げたくなる警察官のケース)」や

「演技性人格障害(主治医にクレームを付けて、主治医の愛情を得ようと大げさな演技をして、自分の存在意義を見出そうとしてしまう元一流バレリーナのケース)」

「境界性人格障害(倫太郎先生の飼い犬を盗み出したりして、見捨てられる不安から逃れようとするストーカー傾向のある女性)」

などが描かれ、難しい精神医学のことを、さりげなく説明っぽくなく、上手くドラマのストーリーに組み込んで、その心の仕組みが説明してくれているので、観ている方も違和感なく「倫太郎先生と夢乃」の心理も同時に理解を深めることが出来て行く仕組みになっているように思います。

脚本家の中園ミホさんの手腕なのでしょうね。

また、エンディングテロップに「協力 和田秀樹」
と、有名な精神科医である和田先生の名前があります。
さながら

「心がポキッとね」の香山リカ先生 
VS
「Dr.倫太郎」の和田秀樹先生

の精神科医対決があるのかも知れません。

ってそんなことはないか。続く

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