- 中舎 重之
- 建築家
対象:住宅設計・構造
マンション(SRC造、RC造ラーメン構造)編
<大破>
1:鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)、地下1階+地上5階建て、L字形
1970年以前、1階ピロテー+事務所 (神戸市中央区)
1階ピロテー部分と、建物がL字形に成っているコーナーの柱に
被害が集中している。
2:鉄筋コンクリート造(RC造)、4階建て、1970年以前、(神戸市灘区)
1階の駐車場で、柱が圧壊した。
*1階が柱だけの柔らかい構造で、2階の強い壁の剛性とのバランスを欠き、
1階が崩れる代表的な事例です。
此の建物はRC造ですが、上の条件は木造でも起こり得る現象です。
3:RC造、地下1階+地上5階建て、1971~1980年、傾斜地
1階店舗 (神戸市東灘区)
地盤の高低差が多い西側で、強い土圧を受けて、
地下階の西側の柱が座屈したと思われる。
4:RC造、5階建て、1970年以前、1階店舗 (神戸市東灘区)
東側道路の向こう側には、小川が流れている。
1階の店舗は、東側に開口を持ち、 建物全体は東側に傾いている。
1階の店舗部分は、半壊している。
5:SRC造、9階建て、1971~1980年、L字形
1階ピロテー、 (宝塚市口谷東)
北側の道路を挟んで、最明寺川がある。
此の建物は、基礎から沈下し、柱も圧壊した。
軟弱地盤が被害の要因とも考えられる例です。 建物全体が北側に傾斜している。
破壊部分では、コンクリートの質の悪さが見られた。
建物全体としても、設計や施工上の疑問点が、 幾つも浮かび上がっている。
[倒壊]
1:RC造、5階建て、1970年以前、1階店舗 (神戸市長田区)
新湊川と刈藻川が合流する三角地帯にあり、河川の垂直護岸の高さ5m
に近接して建っている建物です。
1階の公設市場での中央部分が崩壊している。
1階の柱と基礎との強度が大幅に不足した事が原因と考えられる。
なを、河川の護岸には、被害は見られなかった。
2:RC造、5階建て、1970年以前、1階駐車場 (神戸市東灘区)
1階の柱が圧壊して、2階以上が1階に着地して、
外観上は無傷の4階建てに見える。
散乱したコンクリートの破片からは、水分の多い水セメント比の
コンクリートの使用を思わせる。
柱の主筋に丸鋼鉄筋が使用され、帯筋間隔も30cmの配筋で、
おそらく、築30年以上を経過した建物と思われる。
3:SRC造、10階建て、1970年以前、コ字形、
1階店舗+2・3階事務所 (神戸市中央区)
3階は事務所としての用途で壁がなく、独立した柱のみであった。
3階柱の圧壊により、完全に3階が無くなっている。
上層の7層が雪崩落ちると云う大きな被害でした。
幸いに、居住者に死者は出ず、3階での死亡事故もなかった。
負傷者は、全員救出されていました。
* 列記したマンションは柱+梁で構成されるラーメン構造と云われる建物です。
5階建て迄の中層と言われる建物があります。
此の中層の主流で、「公営住宅」、「公団住宅」に採用されているのが、
壁式構造と呼ばれる工法です。
柱と梁を無くして、ひたすらRC造の壁で建物を構成します。
此の工法は、耐震性能での断然のトップに位置する優れものです。
今回の地震でも、築40年以上の建物にも、被害はありませんでした。
50年前に新潟地震でも、その強さは証明されましたが、
20年前の阪神・淡路大震災でも、強さが再度証明されました。
上記の二つの地震でも、建物に被害が無いだけでなく、
死者ゼロを記録しています。
マンション(鉄骨造=S造)編
(中破)
・S造、14階建て~29階建て、超高層マンション群、1975~1979年、
「芦屋浜シーサイドタウン」、 (芦屋市高浜町)
極厚鉄骨の柱が破断した。柱は板厚50mm、サイズは500mm角の
溶接で組み立てる特殊な柱です。建材メーカーが販売している角形鋼管は、
板厚36mm、サイズ1000mmの大きさです。
板厚50mmとなると、今から50年前に、製造過程で脆弱部分が発生する
と噂された製品です。
* 仮に、設計での柱の断面を変えたらと思います。板厚を40mmを採用する。
現状:50x500x4=100,000mm2
変更:40x600x4= 96,000mm2
<大破>
・S造、5階建て、1971~1980年、E字形 (芦屋市清水町)
建物の配置は、東西方向にメインの棟があり、それに直交して短い3棟が
繋がっている。
建物全体が北側に傾斜しているが、短い棟の東側の2棟が、1階から2階の
北側の妻柱が外壁面と共に、大きな円弧を描いてタワム状態である。
5階建ての柱にしては、柱のサイズが小さい事が原因と思われる。
[倒壊]
・軽量鉄骨造、1階RC造駐車場+2~5階住居、1970年以前、(西宮市安井町)
1階RC造駐車場の北側の柱が座屈して潰れ、北側に傾いた。
RC造柱の帯筋が非常に細く6~9mmであり、間隔も30cmであった。
その影響もあり、2~5階の住居部分も北側に大きく傾いた。
住居部分の2階と3階が完全に潰れて、大勢の犠牲者を出した。
* 此の建物の位置が阪急神戸線の南側にあり、明らかに海岸線から2km以内
にある。軽量鉄骨の建物を建てるには、煙害による錆の為に、厳にNGです。
電力会社での電線の塩害の洗浄補修を、海岸線より2km以内を対象地域と
している事を記憶すべきです。
2015.2.24 中舎重之 ホームページ: スーパーフレーム「やすらぎ」 にて検索
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