社員に「起業家精神」を求めることへのちょっとの違和感
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「会社で起こることを人任せにしない」
「何でも我がこととして仕事にあたる」
「全体を見渡す広い視野を持つ」
「経営資源(人、モノ、金、情報・・・)を意識する」
「目的意識、コスト意識を持つ」
「組織を率いるリーダーシップ」・・・・.etc
このような内容を「社員として望ましい行動」や「望ましい人材像」として掲げ、社員に意識、浸透させることで、より良い行動につなげようという取り組みをすることがあります。
会社として望ましいと考えていることを言葉で明示することは、こういう取り組みをする上では大事なことです。
「自責」や「自律」といったたぐいのことでいえば、私自身が今は会社員ではないせいもありますが、企業で働く友人や仲間、後輩たちと話していて、会社の愚痴などが出てくるのを聞いていると、「それなら自分でやればいいのに・・・」などとついつい思ってしまうことがあります。
もちろん、会社にいればそう簡単にいかないことも重々承知していますし、私も会社員時代はそうでしたが、今となって見ると、「他責にして行動しようとしていない」ように見えます。
会社が社員に対して、「社員として望ましい行動」「望ましい人材像」といったことを明らかにしておくことは、私は良いことだと思います
ただ、これは特に中小企業においてですが、「社員であっても“起業家精神”を持つべき」ということを掲げる経営者がいます。社員に向けて「起業家精神」を求め、「自分の食いぶちは自分で稼げ」などと言ったりします。
私は、社員に「起業家精神」が必要なのかといわれると、そこには少々違和感があります。
そもそも「起業家精神」を持っている人は、基本的には起業したい人である訳で、組織に残ってその組織の一員として貢献していくということとは、あまりつながらないと思うからです。
社員に「起業家精神」を求めるということは、言い換えれば「独立奨励」ともいえます。その独立した元社員たちと取引をして、自社のビジネスを広げて行くような発想があるならば、それもアリだと思いますが、そうでなければただの「人材流出奨励」です。なおかつ流出していくのは、自社にとっては優秀な人材に他ならないでしょう。
強い組織にするために、多くの社員が「会社として望ましい行動」をしてくれるようになることは必要ですが、それはあくまで「組織に帰属した上で」という前提があります。
もしも求めた通りに「起業家精神」に目覚めて、結果的に巣立っていく社員がいたとしても、会社が初めからそれを望んでいることは、実際にはほとんどないのではないでしょうか。特に中小企業ではそうだと思います。
求める人材像などの会社の想いを、どんな言葉を使って表現するかということは、実は意外に繊細で大事な部分です。
そう考えると、少なくとも社員に向けて発信するものとしての、「起業家精神」という言葉は、ちょっとふさわしくないのではないかと思います。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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