日経記事;『キヤノン、監視カメラ世界首位買収 3300億円で 欧州から成長市場攻略』に関する考察 - 海外展開 - 専門家プロファイル

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日経記事;『キヤノン、監視カメラ世界首位買収 3300億円で 欧州から成長市場攻略』に関する考察

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経営戦略 M&Aの事例と経営上の課題

皆様、
こんにちは。

グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー 山本 雅暁です。

2月11日付の日経新聞に、『キヤノン、監視カメラ世界首位買収 3300億円で 欧州から成長市場攻略』のタイトルで記事が掲載されました。

本日は、この記事に関して考えを述べます。

記事の主な内容は以下の通りです。

『キヤノンは10日、街角や工場の監視などに使うネットワークカメラの世界最大手、スウェーデンのアクシスコミュニケーションズを約3300億円で買収すると発表した。

同カメラはスーパーの売れ筋分析や高齢者の見守りなどにも用途が広がり、市場規模は今後4年で現状の2倍の約3兆円になる。キヤノンは主力のカメラ事業などが苦戦するなか、豊富な手元資金を使って成長市場で一気に首位に立つ。

ネットワークカメラは遠隔地から街頭や工場内などを監視する。映像から客の流れを解析して売り方の改善につなげたり高齢者の見守りに使ったりもする。世界市場は現在約4600億円。周辺機器も加えると約1兆6千億円、18年には3兆円近くになるという。

アクシスは1984年設立でネットワークカメラを世界で初めて実用化した。179カ国・地域に進出している。14年12月期の売上高は55億クローナ(約770億円)、純利益は5億クローナだった。

3月初旬からTOB(株式公開買い付け)を始める。キヤノンのM&A(合併・買収)で最大となる。スウェーデン当局の承認を得た後に、1株当たり340クローナ(約4800円)で買い付けて完全子会社化を目指す。アクシスの取締役会と上位株主はTOBに賛同している。買収後も同社のブランドは残す。

アクシスは街頭の映像から不審者を自動検出するシステムなどに強い。キヤノンは線香1本程度のわずかな光でも人間や車の動きを撮影できる技術も持つ。アクシスと高度なシステムを開発し世界で需要を掘り起こす。

アクシスは自社のカメラ工場を持たずに外部に委託しており、キヤノンは自社のカメラをアクシスに供給して、販売増につなげていく。

キヤノンのネットワークカメラの売上高は年20億円程度とみられ、アクシス買収で800億円に伸びる。16年12月期には売上高1千億円、純利益で約100億円を稼ぐ計画だ。医療機器とともに新規事業の柱にする。

キヤノンは08年の金融危機以降、財務を重視してきた。主力の事務機とデジタルカメラは市場が成熟し成長が見込めなくなった。8400億円の手元資金をいかして成長投資にかじを切る。

同社は日米欧に本社機能を置いて主要事業を分担する「世界3極体制」の確立を急いでいる。意思決定を速めるためだ。

米国は医療機器の戦略を立てて開発・生産も担当し世界に供給する。日本はデジタルカメラや事務機を担う。欧州では10年に1千億円で買収したオランダの商業印刷機大手のオセやアクシスが事業の司令塔になる。

キヤノンの御手洗冨士夫会長兼社長最高経営責任者(CEO)は10日、「今回の買収は世界3極体制を大きく前進させる」と述べた。』


キャノンは、大手カメラメーカーであり、印刷機器を含む事務機器関連メーカーでもあります。キャノンが直面している課題は、以下の通りです。

・デジタルカメラ市場は確実に縮小していますので、この市場で一番のシェアをとっても事業の縮小になります。しかもこの縮小市場に富士フイルム、ソニー、ニコン、オリンパスなどの強力な競合他社がいて、激しい競争をしています。

・事務機器事業の中でもっとも大きな事業は、印刷機です。この印刷機市場も、IT化・デジタル化の進展で、印刷需要が急減しているため、ハードウエア事業も縮小していきます。

キャノンが直面する課題は、テレビ事業などの汎用化・低価格化が進む、AV家電メーカーと似ています。

キャノンも、自社の強みを最大化できて、かつ成長が見込めると共に汎用化・低価格化が進まない事業を立ち上げることが必要になっています。

キャノンと類似した事業構造をもつ富士フイルムの場合、主力事業のカメラや事務機器事業以外に、多様化を進めており、キャノンより先行している印象をもっています。

富士フイルムは、ヘルスケア、高機能材料事業を新規成長事業として加速化させて、積極的に必要な技術や商圏などをM&Aで得る動きをしています。

ヘルスケアは、医療や化粧品事業を言います。医療事業では、例えば、傘下の富山化学工業が開発し、2014年3月に国内承認されたインフルエンザ治療薬「アビガン(一般名・ファビピラビル)」がエボラ出血熱の治療薬として有効ではないかと期待されていることが話題になりました。

富士フイルムの医薬品事業は2008年に富山化学を買収して本格参入しました。その後、2014年10月28日に、米ワクチン受託製造会社ケイロン・バイオセラピューティクス(テキサス州)の買収を発表しました。

高機能材料事業では、液晶パネル用フィルムで富士フイルムは高いシェアをもっています。

このように、富士フイルムは競合企業のキャノンに先行して、多角化を進めています。

キャノンの財務体質は、非常に強固です。しかし、今までキャノンの新規事業立上は、それほど活発に行われてきませんでした。

その視点からみますと、本日の記事は、キャノンが監視カメラ事業を本格的に開拓して、世界市場で勝ち組になるための動きを本格化したことを意味しています。

最近、国内の中小企業は、強固な財務体質を背景に、短期間で新規成長事業を取り込むためのM&A(他社を買収する)を活発化させています。内部留保していた資金を開発や他社を買収するために活用することは極めて重要なことです。

企業は、現在の主力事業が市場縮小の環境にある場合、自社の強みを最大化しながら事業の多角化を進めることは、世界市場で勝ち組になるために必要不可欠なことです。同時に、このやり方をとることで、国内企業は、汎用化・低価格が進む事業環境から離れたところでビジネスを行えます。

監視カメラ市場は、本日の記事にありますように、確実に世界市場で拡大します。キャノンは、高性能カメラを開発・実用化するのに優れています。

今回買収されるアクシスコミュニケーションズは、スエーデンに拠点を置く企業でこの国柄を反映してITコンピューターネットワーク技術を利用した、セキュリティ市場向けにネットワークカメラを開発・実用化しました。

アクシスコミュニケーションズは、2014年度のネットワークカメラ市場で世界ナンバーワンとなる21%をもっています。キャノンの買収により、キャノンの当該事業での世界シェアは、一気に高まります。

キャノンが今回の買収による組織融合を成功させれば、国内外で監視カメラのトップメーカーになれます。

アクシスコミュニケーションズは、アップルやアマゾンなどの米大手ITベンダーと同じように、自社に工場をもたないファブレス企業です。今後、キャノンが特異な生産技術を駆使して、監視カメラを生産していくことも、お互いにメリットが見出せます。

今回のキャノンの買収は、両社の強みを最大化して、「Win/Win」の関係構築ができれば、大きな新規事業機会を生みます。

最近、日立製作所、東芝などの国内企業が、海外企業を積極的に買収して、世界市場で勝ち組になるための施策を積極的に行っています。

これらの大手企業の動きは、中小企業にとって、短期間に必要な技術や事業などを獲得するための有効な手段となるM&Aの有効性を確認できる良い機会になります。

もちろん、M&Aの成果をきちんと出すには、買収後の組織融合を効果的に行う必要があります。中小企業は、これらの大手企業がどのようにして組織融合を図って事業拡大していくのか、見極めて自社の経営に活用する姿勢が重要になります。

この点から、今後のキャノンの動きに注目していきます。

よろしくお願いいたします。

グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー GBM&A 山本 雅暁


 

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