早わかり中国特許:第45回 均等論主張に対する注意点 - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
河野特許事務所 弁理士
弁理士

注目の専門家コラムランキングRSS

対象:特許・商標・著作権

専門家の皆様へ 専門家プロファイルでは、さまざまなジャンルの専門家を募集しています。
出展をご検討の方はお気軽にご請求ください。

早わかり中国特許:第45回 均等論主張に対する注意点

- good

  1. 法人・ビジネス
  2. 特許・商標・著作権
  3. 特許・商標・著作権全般

早わかり中国特許

~中国特許の基礎と中国特許最新情報~

2015年1月30日

執筆者 河野特許事務所

弁理士 河野英仁

(月刊ザ・ローヤーズ 2月号掲載)

 

 第45回 均等論主張に対する注意点

 

1.均等論の要件

 前回に引き続き中国特許実務で重要となる均等論について説明する。

 均等については、司法解釈[2001]第21号第17条第2項に以下のとおり規定されている。

 

 均等な特徴とは、記載された技術的特徴と基本的に同一の手段により、基本的に同一の機能を実現し、基本的に同一の効果をもたらし、且つ当該領域の普通の技術者が創造的な労働を経なくても連想できる特徴を指す。

 

 また、司法解釈[2009]第21 号第7条は以下のとおり規定している。

 

第7条 人民法院は、権利侵害と訴えられた技術方案が特許権の技術的範囲に属するか否かを判断する際、権利者が主張する請求項に記載されている全ての技術的特徴を審査しなければならない。

 権利侵害と訴えられた技術方案が、請求項に記載されている全ての技術的特徴と同一または均等の技術的特徴を含んでいる場合、人民法院は権利侵害と訴えられた技術方案は特許権の技術的範囲に属すると認定しなければならない。権利侵害と訴えられた技術方案の技術的特徴が、請求項に記載されている全ての技術的特徴と比較して、請求項に記載されている一以上の技術的特徴を欠いている場合、または一以上の技術的特徴が同一でも均等でもない場合、人民法院は権利侵害と訴えられた技術方案は特許権の技術的範囲に属しないと認定しなければならない。

 

 すなわち、中国では手段、機能、及び効果が実質的に同一であり、かつ、容易に連想することができるものであれば、均等と認定される。当然後述する禁反言の法理により均等論の主張が制限される場合もあるが、日本と相違し、均等物が非本質的であることが要件とされていない。また、実用新型特許は審査を経ていないため禁反言が生じにくい。以上の理由により、中国では均等侵害が比較的認められやすい傾向にある。

 

 

 均等論については第44回で解説した事件のように同様の効果を奏するか、或いは、マイナスの効果を奏するか、当業者が容易に連想できるものなのか、禁反言が存在するか等、多方面にわたって分析する必要がある。この分析が不十分であると均等であるとして侵害が成立してしまう。

 

 以下に述べるPCケーブル事件[1]では、端子の配置が外側か内側かで均等といえるか否かが問題となった。対象となった特許の請求項は以下のとおりである。

 

1.本体11 及び本体11 両端からそれぞれ延びる端子部及びケーブル部16 を含み,

端子部は端子搭載部12 及び複数の端子を含み,

前記ケーブル部16 は端子と電性接続されるケーブルを含み,

前記端子はデータ端子15 及び電源端子13 を含み,両者は電気特性上隔離されており,

かつ同一の端子搭載部12 上に分布しているSATA 連接器プラグ10 において,

前記端子搭載部12 は一つの絶縁本体14 と,絶縁本体14 を囲む一つの収容空間141とを備え,

前記データ端子15 は絶縁本体14 の外壁上側面にあり,前記電源端子13 は絶縁本体14 の内壁下側面に設けられていることを特徴とするSATA 連接器プラグ10。

 

 このように請求項では、データ端子15が絶縁本体14の外壁上側面旨記載されている。これに対し、イ号製品のデータ端子は絶縁本体の内側上に設けられていた。

 

 

 

 222特許の請求項1はデータ端子を絶縁体外壁上側面に設けている点で、内壁面側面にデータ端子を設けている被告Cの連接ケーブルとは相違する。従って、文言侵害は成立しない

 

 しかしながら、中級人民法院は、データ端子を絶縁本体の内壁上側面に設けることにより実現する機能及び達成する効果は、データ端子を絶縁本体の外壁上側面に設けることと基本的に同一であり,また、当業者であれば、創造性労働を経ることなく容易に相当し得る手段であると判断し、均等侵害の成立を認めた。

 

 均等か否かについては人民法院での判断が困難で、司法鑑定を依頼するケースも多い。いずれにせよ民事訴訟での重要なポイントとなるため専門家と相談し、慎重な判断を行う必要がある。

 

2.北京市高級人民法院特許権侵害判定指南

 2013年9月4日北京市高級人民法院は、特許権侵害判定指南(以下、判定指南という)を公開した。判定指南では、均等論を論じる上で問題となる点に解釈を与えている。本判定指南は法的拘束力を有するものではないが、非常に参考となる。

 

(1)同一の手段

 侵害行為時以前に置換可能であり動作原理が基本的に同一である場合、基本的に同一の手段と判断される。また出願後に出現した動作原理が異なる構成でも、侵害行為時に当業者が容易に連想できる場合は、基本的に同一の手段と認定される(判定指南第44条)。

 

44.基本的に同一な手段とは、一般に訴えられた権利侵害行為の発生日より前に、特許が属する技術分野で常に入れ替えられる構成要件及び動作原理が基本的に同一な構成要件を指す。

 出願日後に出現する、動作原理が特許の構成要件と異なる構成要件は、訴えられた権利侵害行為の発生日に当業者が容易に連想できる代替的な特徴に属する場合、基本的に同一な手段と認定することができる。

 

(2)同一の機能

 同一の機能とは請求項に対応する構成要件に基づく作用と、代替手段により起こる作用とが基本的に同一であることとされている(判定指南第45条)。

 

45.基本的に同一な機能とは、権利侵害で訴えられた技術方案中の代替的な手段によって起こる作用が請求項の対応する構成要件の特許技術方案の中で起きる作用と基本的に同一であることを指す。

 

 

 

続きは、月刊ザ・ローヤーズ20152月号をご覧ください。



中国特許に関するご相談は河野特許事務所まで

 



[1] 2011年9月陝西省西安市中級人民法院判決 (2010)西民四初字第00154号

 |  コラム一覧 | 

このコラムに類似したコラム

早わかり中国特許:第43回 特許の権利範囲解釈 河野 英仁 - 弁理士(2014/12/09 11:00)

早わかり中国特許:第42回 特許の権利範囲解釈 河野 英仁 - 弁理士(2014/11/07 11:00)

ソフトウェア関連発明特許に係る判例紹介(第6回) 河野 英仁 - 弁理士(2014/10/21 11:00)