私の指揮の師匠である村方千之先生との出会いは尚美学園短大の故徳山博良教授(音楽教育学)から紹介していただき門を叩いたことでした。
「成澤、指揮法の基礎を習いたければ村方(先生)に教わってこい!」
の一言です。(2人は旧知の仲なのでお互い呼び捨てでした)
村方先生の下には多くの門下生が通っており、レッスンの日には待合室が混み合うのでそのわずかなスペースを見つけレッスン前の練習をしました。
社会人の管弦楽団の指揮者、職場の吹奏楽の指揮者、学校の先生、将来指揮者になりたい学生など、年齢や経験は問わず、誰に対しても分け隔てなく厳しいレッスンをおこなっていました。
ある日、自分の番が来るまで指揮棒を振りながら練習していると、村方先生は
「君、自分で振るだけでなく人のを見ることも勉強なんだ。」
と言われ他の方のレッスンを見学することに。
前のレッスン生の出来がよろしくないと、
「君、見ている暇があれば自分の練習をしなさい!」
とまあ、こんなこともしばしば。
異なる年齢の方々と音楽の話しができたことも貴重な機会でした。
なんせ指揮者がこんなに一室に集まることがないので。
村方先生の指揮の特徴は「バトンテクニックの美しさ」です。
齋藤秀雄先生の直系の弟子にあたり、
「指揮棒一つで指揮者の意図を十分に伝えなければならない。そのためには基礎を徹底的に身につけ、スコアに書かれているすべての音に意思を与える指揮ができるように。」
とよくおっしゃられていました。
「指揮の基礎は音楽の基礎」これに徹底しており、私の音楽にとって重要な力を教えていただきました。
また村方先生は日本ヴィラ=ロボス協会の会長を長く務められ、ブラジルの作曲家ヴィラ=ロボスの作品を多く日本に紹介したりブラジルでオーケストラを指揮をするなど、日本とブラジルの文化交流に大変ご尽力されました。
その村方千之先生が先日お亡くなりました。
インターネットで検索してみると私が東京芸術劇場で聴いた「村方千之指揮 東京交響楽団特別演奏会」の動画があるではありませんか。
ブラームス「交響曲第1番」の出だしの音の重厚感と推進力、今でも忘れることはできません。
穏やかな場面のしなやかさ、一振り一振りに意思がこもっており、まるで教科書のような指揮でした。
村方先生、今までありがとうございました。これからもますます精進していきます。
このコラムの執筆専門家
- 成澤 利幸
- (長野県 / 音楽家、打楽器奏者)
- 成澤打楽器音楽教室
音楽はみんなのもの
楽器の演奏は専門家からのちょっとしたアドバイスによりスムーズに上達したり音楽の奥深さに触れることがあります。ドラムやマリンバ、いろいろな打楽器のレッスンを通して皆さんのお力になれればと思います。
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