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インド特許法の基礎(第18回)(1)
~特許の維持・消滅~
2014年12月2日
執筆者 河野特許事務所
弁理士 安田 恵
1.はじめに
インドにおける特許の存続期間は20年である。特許を維持するためには所定の納付期間内に更新手数料を納付しなければならない。所定の納付期間を徒過しても6ヶ月以内であれば追納することができる。この6ヶ月の延長期間も徒過すると特許は消滅する。ただし,不納付に至った事情によっては特許の回復が認められることがある。このように特許維持手続きの大枠は日本と同様である。しかし,納付期間の計算方法,消滅した特許の回復手続きなど,実際の手続きには異なる点が多い。
以下,条文及び規則をざっと読んだだけでは分かりにくい特許維持手続きの全体像を図解して解説する。また,存続期間の満了又は更新手数料の不納付によって失効した特許を検索できる無料のデータベースを紹介する。
2.特許の維持
(1)特許の存続期間
特許の存続期間は出願日から20年である(第53条(1))。インド特許法には存続期間の延長制度は設けられていない[1]。特許の存続期間は,技術革新の推進及び公共の利益の増進を目的[2]として産業政策上決定されるべき期間である。例えば,改正前の1970年インド特許法における特許の存続期間は,通常,出願日から14年であったが,食品及び医薬の製法特許の存続期間は,特許付与日から5年又は出願日から7年のいずれか短い期間と定められていた。食品及び医薬分野の発明を早期に自由技術化することによって,公共の利益を増進させることが重視されていたと考えられる。しかし,WTO加盟に伴い特許の存続期間は20年に延長された(2002年特許法改正第27条,Trips協定第33条)。
特許の存続期間の起算日は特許出願の種類によって異なる(表1参照)。通常の特許出願(第7条)及び条約出願(第135条)の存続期間は現実の出願日[3]から20年,PCT国内段階出願の存続期間は国際出願日から20年(第53条説明),分割出願の存続期間は原出願の出願日から20年である(第16条(3))。追加特許の存続期間は,主特許の存続期間と同一である(第55条(1))。
(2)特許の更新
特許を維持するためには所定の納付期間内に更新手数料を納付しなければならない(第53条(2))。更新手数料の納付は登録簿に記録される(規則93)。ただし,追加特許(第54条)については更新手数料の納付は不要である(第55条(2))。
表1 特許の存続期間と更新手数料の要否
(3)更新の手続き
(a)原則(ケース1)
特許を維持するためには,図1に示すように原則として特許証の日付(Date of Patent)から存続期間の2年度満了前に3年度の更新手数料を納付しなければならない(第53条(2),規則80)。以下,各年度の満了前に次年度の更新手数料を納付しなければならない。
「特許証の日付」は納付期間を計算するための起算日であり,特許出願の提出の日と定められている(第45条(1))。「特許証の日付」は上述した存続期間の起点に対応している。PCT国内段階出願の「特許証の日付」は国際出願日(第7条(1B)),分割出願の「特許証の日付」は親出願の出願日である(16条(3))。「特許証の日付」は,特許登録の際,登録簿に記録される(第45条(2))。
図1 特許の更新(2年度満了前に登録された場合)
(b)原則(ケース2)
出願日から2年経過後に特許が付与された場合,登録日から3ヶ月以内に更新手数料を納付しなければならない(第142条(4))。この際,本来納付すべきであった各年度の更新手数料を納付しなければならない(第142条(4))。例えば,図2に示すように,5年度に特許が登録された場合,3~5年度の更新手数料を納付しなければならない。6年度の更新手数料は5年度が満了する前に納付しなければならない。7年度以降の更新手続きは6年度と同様である。
図2 特許の更新(2年度満了後に登録された場合)
(c)更新手数料の納付期間の延長
更新手数料の納付期間を徒過した場合であっても,追加手数料を添えて期間延長の請求(様式4)を行うことにより,納付期間を最長6ヶ月まで延長することができ,更新手数料を追納することができる(第53条(2),第142条(4),規則80(1A),第1附則)。
図3 更新手数料の納付期間の延長
(d)更新手数料の前納
特許を更新する際,2年分以上の更新手数料を前納することもできる(規則80(3))。
⇒第2回へ続く
特許に関するお問い合わせは河野特許事務所まで
[1] 我が国においては,医薬の承認手続きによって特許の存続期間が浸食された場合,特許の存続期間を延長させことができる(第67条2項)。
[2] インド特許法第83条
[3] パリ条約第4条の2(5)
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