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日経記事;『IBM、半導体製造を譲渡 15億ドル支払う条件で 高付加価値事業に集中』に関する考察

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皆様、
おはようございます。

グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー 山本 雅暁です。

10月21日付の日経新聞に、『IBM、半導体製造を譲渡 15億ドル支払う条件で 高付加価値事業に集中』のタイトルで記事が掲載されました。

本日は、この記事に関して考えを述べます。

記事の主な内容は以下の通りです。

『米IBMは20日、不採算の半導体製造部門を米半導体受託製造会社のグローバルファウンドリーズ(GF)に譲渡すると発表した。

IBMは今後、3年間にわたり計15億ドル(約1600億円)をGFに現金で支払う。構造改革を急ぎ、人工知能型コンピューター「ワトソン」など付加価値の高い事業に経営資源を集中させる。

IBMは「選択と集中」を急ぐ。(ロメッティCEO)

半導体製造部門の譲渡を巡り、IBMは15億ドルの支払いを含め税引き前費用として2014年7~9月期に47億ドルを計上する。IBMは米国にある半導体工場のほか、半導体の知的財産や技術者も含めて譲渡する。

GFはIBMの半導体製造・加工技術を獲得することで生産効率化を急ぎたい考え。今後10年間、IBMに対しサーバー用半導体を供給する。

ただ、IBMは半導体はサーバーなどハード事業の競争力強化に不可欠とみて、今後、5年間で半導体開発に30億ドル投資する方針。最先端の微細化開発技術などは自社で保有し続ける。

半導体製造部門の譲渡は、今年初めに発表した中国レノボ・グループへの低価格サーバー売却に続き、業績変動の大きい事業の切り離しとなる。

事業の選択と集中を加速する背景には低調な業績がある。同日発表の14年7~9月期決算で、売上高は前年同期比4%減の223億ドルと10四半期連続の減収となった。

バージニア・ロメッティ最高経営責任者(CEO)は「業績には失望している。前例のないペースで業界が変化している」とのコメントを出した。

米グーグルやアマゾン・ドット・コムなど新興勢との競合も激しくなっているほか、顧客が割安にIT(情報技術)ソフトなどを利用できるクラウド・コンピューティング普及の波が押し寄せている。14年7~9月期は注力するサービスやソフトも減収となった。

ハードウエア部門は15%減収と高額なメーンフレーム(汎用機)が低調だ。地域別では米国、欧州、アジア・太平洋地域で減収となった。新興国は中・南米が好調だが中国の低迷が続いている。

IBMは、中期経営目標として掲げてきた15年の1株利益(特別項目除く営業ベース)20ドル以上を断念することも表明した。IBMは正念場を迎えている。』


米IBMは、言わずと知れた世界で最も歴史があるIT企業であり、常に時代の先駆者でした。そのIBMがインターネット業界の激しい競争に巻き込まれて、事業収益の低迷が続いています。

かって、IBMはメーンフレームと言われたコンピュータで世界市場での勝ち組になりました。日本の富士通、NEC、日立製作所、東芝などの大手IT企業は、当時IBMの後を追う形でメーンフレームを開発・実用化して、一時代を築きました。

IBMは、メーンフレームでの成功の余勢を駆って、1992年から始めたノートパソコン事業でも世界をリードしました。IBMの「ThinkPad」ブランドは、ビジネス用途パソコンの代表的なものになりました。

そのIBMが、パソコン事業の将来は低事業ビジネスになると予想して、2005年に当該事業を中国のパソコンメーカーであるレノボに売却・事業譲渡しました。

その当時、IBMはソフトウエア事業を中核としたビジネスモデルに変革するとしました。その後、IBMの事業収益は大きく伸びましたので、IBMの集中と選択は、日本企業にとっての模範事例の一つとなりました。

この時のIBMの集中と選択のポイントは、汎用化が進んで価格競争に陥る事業をもっていると、会社の収益悪化を招くので、強みを発揮できる事業分野に経営資源を集中して、市場環境に左右されない事業体質を作ることにありました。

私は、中小の製造事業者やITベンダーが集中と選択を行う際に、先行事例の一つとしてIBMを挙げて参考にしてもらいました。

IBMは、しかしながら、ここ2~3年の間、再度の事業収益低下の課題に直面しています。これは、クラウドサービス事業の急速な伸びが、IBMの既存事業基盤であるソフトウエア、サーバーなどの売上低迷を引き起こしていることによります。

ことにIBMの母国である米国市場では、クラウドサービス事業がグーグル、アマゾン、マイクロソフトなどの大手ITベンダーにより牽引されて、IBMの劣勢が際立っています。

もちろん、IBMもクラウドサービス事業を行っていますが、他の事業の低迷をカバーするまでになっていません。

このような事業環境下、IBMは、再び大きな集中と選択を試みています。今回は、収益の変動が激しい半導体事業を売却・事業譲渡します。

IBMは、スーパーコンピュータの提供企業の一つであるため、中核技術の一つとなる半導体事業は継続していました。

今回、ソフトウエア事業への経営資源をさらに集中するため、IBMは、この半導体事業を手放すことにしたようです。

但し、高性能半導体の開発・実用化の基盤は、社内に残すとのこと。

今回のIBMの集中と選択作業の結果に注目していきます。クラウドサービス事業の急進で、IBMと言えども既存事業の収益悪化に直面しています。

このIBMが集中と選択を行った後に、「ワトソン」などの人工知能を活用してどのような新規事業を立上ていくかの視点を中心にIBMの動きをみていきます。

IBMの動きは、国内ベンチャーや中小企業にとっても参考になります。

インターネットやITは、何度か本ブログ・コラムで述べていますように、製造事業やサービス事業の既存基盤を根底から変える、あるいは破壊する威力をもっています。

例えば、製造事業では、IoT化(Internet Of Things)が急速に進み、部品、デバイス、製品のあらゆるレベルで、無線LANチップなどを搭載することで、インターネットとつながる状況になります。

その時に、自社の競争力のある商品やサービスで収益を維持拡大するビジネスモデルを構築する必要があります。

多分、企業は、いったん作ったビジネスモデルについて、事業環境の変化から、常に見直して、改革していく経営姿勢が求められます。

共通することは、自社の競争力の源泉を見極めて、コア部分を徹底的に強化していくことと考えます。少なくとも、私はこの視点で製造事業者やITベンダーを支援しています。

また、企業の規模に関係なく、汎用化が進んで価格競争に陥り、収益低下や市場環境に左右される事業を主力にしないことは、変化の激しい競争に打ち勝つための条件の一つになります。

今回のIBMの動きも、その視点によるものです。

よろしくお願いいたします。

グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー GBM&A 山本 雅暁

 


 

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