第4章:プロダクトの健康状態を調べよう
⑧上司は部下を前向きに勘違いさせよう・・・それが技の伝承の本当の仕組みです
「最近の若い奴らは、手取り足取り言わなきゃあ何にも出来ない・・・俺の技を盗もうとする奴はいない。」
もう40年近くこの店の厨房で美味しい料理を作り続けてきた調理長のEさん。彼は自分と後輩、特に20代の若い調理人との間の気持ちの温度差がなかなか埋まらないことを嘆いていました。
先輩の技を盗む・・・職人の世界に限らず、レストランのホールで働くウエイトレスでも、オフィスで働くビジネスマンの世界でも、学校で机を並べる勉強仲間でも、ライバルや仲間の技を盗むのというのを、積極的に取り組むひとは昔も今もたくさんいます。今の時代だから少ないとか、昔が多かったとかでは無いのです。
はっきりと言いましょう!
もしも、あなたの後輩や部下に、あなたの技を積極的に盗もうとする若者が少ないのならば、その原因は「あなた」なのです。
もちろん、最終的には、その若い後輩や部下自身が、自分で行動をしなければ先輩の技を盗むことは出来ません。やるのは本人自身です。しかし、彼らが「自然とそう言う行動を取る」「先輩の技を盗みたくなる」、そのような気持ちにさせるのは、先輩や上司の役目だと私は思うのです。
大昔・・・今からずっとずっと昔、当時17歳の私がマクドナルドのアルバイトを始めたときのことです。その店に、ハンバーガーを作る動きがムチャクチャ速く、そしてその動作が惚れ惚れするように美しく、思わず見とれてしまう、そんなカッコイイ先輩がいました。まだ新人の私は、当然ながらそんな動作は出来ません。でも、あまりにかっこが良いので、いつかはそうなれるように心密かに思っていました。当時の彼は、トレーナーでも、マネジャーでも無く、私と同じアルバイト。なので、特に新人指導をする仕事を求められていたわけでもありませんでした。しかし、ある時、彼は、じっと彼の動きを見ている私に技の秘密を教えてくれたのです。
「僕のやり方に興味があるんだね。まあ、コツはたくさんあるけれど、実は一番大切なのは、こいつなんだよ。」と、グリルに立てかけられていたミートスパチュラ(ハンバーガーの肉をひっくり返すコテのようなもの)を指さしたのです。
彼が言うには、素早く動きたいのならば、障害になるものを全て取り除いておかねばならない。一番障害になるのは、スムーズに肉をグリルから剥がせないとき。それができるようにするために、彼は毎日仕事の前に、自分が使うそのミートスパチュラを研いでいたというのです。
「あ、なるほど、そうなのか~」私は、彼が使っているミートスパチュラを借りて調理をしてみました。すると、ビックリするほどスムーズに動けるのです。なんだか一歩彼に近づけたようで感動でサブイボ(鳥肌の関西弁)が立ったのを、今でもはっきりと覚えています。
後輩や部下に「成長への興味を持たせる」為の刺激を与えるのは、先輩や上司の役割だと私は思っています。
よく、自覚がない、積極性がない、主体性がない、と後輩や部下のことを批判し嘆くベテラン職人や上司がいますが、それは、自分がその刺激を与えずに後輩や部下のせいにしているだけの無責任な上司なのです。自分は自主的に先輩の技を盗んでいた?違います。先輩がうまくそうさせてくれていたのです。彼の先輩や上司が彼を「前向きに勘違い」させていたのです。
商品力の維持向上に限らず、サービスにおいても何でも同じですよね。
特に、キッチンでの調理の技は、マニュアル化するのが非常に難しい個人の技がたくさん含まれています。
「最近の若い奴らは消極的だ・・・」と嘆くのは、単にそれを「明文化」「可視化」する事を面倒がっているだけに過ぎないのです。
最近では、スマホを使えばそのような技は簡単に動画に残すことが出来ます。
その時に「あ、なるほどな~」というちょっとしたコツを解説してあげるだけで、後輩達はワクワクしながらもっと勉強しようと思うのです。四六時中手取り足取り教える時間は無いかも知れません。しかし、ちょつとしたコツを伝授する時間は必ずあります。そうして彼らの心に火を付ければ後は簡単なのです。彼らは自分から動き始めます。
火を付けるのはあなたの役目です。
「自分は出来る」と前向きに勘違いさせて積極性を引き出すのもあなたの役目です。
ね?ですよね!昔を思い出しましたか?あなたをそうさせた先輩の言葉がきっとありましたよね。
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