第4章:プロダクトの健康状態を調べよう
⑦現場の意見を商品力の向上に活用しよう
「このチェーン店では、A店のBさんのような素晴らしいスタッフの技やアイデアをどの様な方法で他の店に広めているのですか?」
チェーン店には、時折、ビックリするようなきめ細かいこだわりを持って調理しているスタッフがいます。
彼が勤めているのは、あるコーヒーチェーンのお店です。彼はいつも元気に接客をしながら、オーダーを受けると製造担当のスタッフにそのオーダーを通します。しかし、ブレンドコーヒーの注文を受けたときは、すぐさま後ろを振り向いて、そこにあるコーヒーのドリップマシンから1杯のコーヒーをマグカップに入れてお客様に提供します。
これだけならば、どこのコーヒーチェーンでも普通に見かけるシーンです。しかし、彼は少し違うのです。彼の店にあるドリップコーヒーマシンは、1つのパックを使って抽出出来るコーヒーはレギュラーサイズ8杯分。ランチタイムなどはそれを切らさないように次々に予備のコーヒーをドリップしておかなくてはなりません。ただでさえ忙しい中、ともすれば流れ作業になりがちな時に、彼は、新しいコーヒーパックの封を切ってマシンにセットする前に、ほんの少しだけマシンの底に水を落とすのです。「ジュ~」彼が落とした水がコーヒーマシンの底で瞬時に蒸発する音が聞こえます。
彼は、その音を聞いてからコーヒーパウダーをマシンにセットしてお湯が出るボタンを押してドリップを始めるのです。
長い行列が出来るようなランチタイムでも彼は必ずそれを行います。
彼にその理由を聴くと「コーヒーマシンの底はヒーターで加熱しているので、かなり熱いのです。なので、いきなり抽出したコーヒーを落とすと、それがわずかに焦げてしまうのです。そうするとせっかくの風味が台無しになっちゃうじゃあないですか。お客様には、薫り高いうちのコーヒーを楽しんで頂きたいので、マニュアルにはないんですが私は必ず、1滴だけ水を落としてタンクの底を少しだけ冷やしてからコーヒーを落とすんです。」と答えてくれました。
彼は、このチェーンの商品開発担当とか、エリアマネジャーとかではありません。社員ではありますが、店長ではありません。この店のいちスタッフなのです。そんな彼のこだわりを、このチェーンは残念ながら、この店でしか活かすことが出来ていませんでした。
チェーン店における品質の統一のためのマニュアルやレシピ作りは、元々は一店舗から始まり、彼のような現場の工夫やこだわりをひとつひとつ積み上げながら作ってきたものです。しかし、店舗数が増えるにつれ、本社機能が充実し始めると、今度は本社で決めたことを守らせるような指向性に変化していきます。すると、現場でお客様の反応を感じながら日々工夫を重ねているきめ細かいこだわりが表面化しづらくなってくるのです。
チェーン店においてもっとももったいないのがこういう現場の工夫を活かせないところです。
確かに、数十店舗や数百店舗、またマクドナルドやコンビニチェーンのように数千店や1万店規模になると、現場がいちいちマニュアルを作ったり改造したりしている余裕は少なくなるでしょう。しかし、それでは、そのうちに現場の主体性を封じ込めてしまうことになってしまいます。
ところが、とても簡単な方法で「現場の声」「現場の工夫」を吸い上げてマニュアル作りに活かしているチェーンもあるのです。
それが、「グッドアイデア賞」という仕組みです。
方法は簡単です。現場で行った工夫やアイデアを簡単な企画書にして本社の担当者に送るのです。その中から毎月優秀なアイデアやマニュアル化したアイデアを表彰するだけです。
私もかつてマクドナルドに勤務していたときは、この「グッドアイデア賞」に応募するのが毎月の楽しみでした。ピーク時は年間で30件以上も提案をしていました。自分の提案が会社のマニュアルに載ったり、ツールに反映されたりすると現場の社員はもうムチャクチャ嬉しいものなのです。
ただ、この仕組みにはひとつだけ注意する点があります。
それは、アイデア選定担当者のセンスと意識です。応募された書類だけ見て、応募者の企画の意図をつかめずにボツにしたり、自分の考えと違っていたら一笑に付したりするような担当者では、この企画は盛り上がりません。出来るだけ応募者のいる現場に出かけて行って生の声を取材し、その意図を深く理解しようとすることや、まだまだ未熟なアイデアだったらもうひと工夫を促したりして企画を育てようとする姿勢が担当者には必要なのです。
経営陣がこの「グッドアイデア賞」で、現場の声を活かし現場の主体性を高めていきたいのならば、この点だけは注意して採用して下さいね。
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