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賃貸住宅における敷金とDIY

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先月、来年改正が予定される民法に、賃貸住宅の敷金に関して明文化される、との記事がありました。
賃貸住宅を借りるテナントさんは、入居時に一定の敷金を家主に収めます。退室時に家賃の未納部分(もしあれば)と室内の(入居時への)原状回復のための費用を差し引いた分を返却されます。
その原状回復の費用が妥当かどうかを廻る、家主とテナントとの間のトラブルを防ぐことが目的でしょう。

原状回復の義務が発生する項目には『通常の使用による損耗や経年変化は含まない』とあります。
この議論。今回の民法改正の以前から、ずいぶん尽くされていたように思います。
特定の室内の損傷がどんな基準をもってして『通常の使用による損耗』や『経年変化』となるのか‥。
具体的に例を取り上げた解説も目にしたこともありましたが、私は経験から、実際の個別の全てのケースを判別することは不可能ではないかと、感じています。

じつは、私が家主をする SOCIUS SOHO でも
当初、あるテナントさんと、退室時にこのようなトラブルになりかけたことがありました。
これがきっかけで、仲介管理を当時のお願いしていた業者さんから、リネア建築企画さんに変更しました。
リネア建築企画の仲介では、テナントさんが退室時に償却する敷金は(基本的に)一律1ヶ月分と決め、賃貸契約書にも明記しています。退室後、私(家主)はその1ヶ月分の敷金をもってして、室内のクリーニングをおこないます。テナントさんによっては、退室時に実に奇麗に清掃していただく方もおりますが(‥それはそれで有り難いのですが)やはり、清掃のプロには敵いません。排水管内の清掃やエアコンの内部洗浄、便器の消毒など含め、新築時のような状態にもどす清掃費用が、ちょうど、ほぼ1ヶ月分の敷金の費用となります。
この方法の賃貸契約、なかなかいいな。と私は考えています。
テナントさんも、入居時点で退室時の費用を想定できて安心でしょう。
退室時のトラブルはなくなりました。

さて、ここで ちょっとイジワルな仮定ですが。
テナントさんは室内に棚を設置すれば、退室時には『原状回復義務』により、それを撤去しなくてはなりません。
撤去された棚のあとにはビス穴が残り、『経年変化』で一様に日焼けされるはずの壁紙は、棚のあった部分だけ白いままです。棚があった壁は全面、やりかえ工事となり、前記の1ヶ月分の敷金以上の金額をいただかなくてはなりません。そして、撤去されたボードもクロスも、おそらくは棚板もゴミとなってしまいます。
次に入居されたテナントさんが、同じ位置にまた棚を設置すれば、また同じことの繰り返しです。

そもそも
この『原状回復義務』という制度そのものが、不条理で無駄の多く、考える余地のある制度じゃないでしょうか?
そして いま
その『原状回復義務』が(原則)免状されるDIY(Do It Yourself)賃貸住宅が注目されています。
どこまでDIYが許されるかは、特定の物件ごといろいろありましょうが、基本的に入居したテナントさんが、その部屋を自ら自由に模様替できて、退室時は(原状回復せず)そのままにできる、というもの。

テナントさん自身の嗜好を存分に表現することができます。

じつは 私の SOCIUS SOHO の ネゾネットの101号室も。
建設当時は、まったく想定していなかったのですが、自然発生的にDIY賃貸住宅となっていきました。
はじめは ほとんどスケルトンであった空間。
最初に入居されたテナントさんは 浴室と湯沸器 を自費で設置されました。
テナントさん たっての希望で、退室時にはそのままでと、入居時に取り決めました。
つぎに入居されたテナントさんは、それに加えて自ら造作して手すりを設置します。
つぎに入居されたテナントさんは、それに加えて防音のためのカーペットと木製建具の間仕切りを造っています。楽器の演奏が趣味だったのですね。
こんなふうに、テナントさんが入れ替わるたび、部屋はヴァージョン・アップしてきました。

これは
テナントさん夫々、自身のライフスタイルにこだわり、SOCIUS SOHO という建物を気に入って長く住んでくださるからであり、家主としては、なんとも楽しい成り行きであります。

ところが
本来そういった賃貸住宅のニーズに、真っ先に応えるべきであろう、建築家の賃貸集合住宅(いはゆる『デザイナーズ・マンション』)には、全く逆の方向性を示すものが多いように思います。
デザインや工夫を凝らした造り付けの造作や可動式の収納など、それこそ『通常の使用による損耗』が絶えないんじゃないのか、と思える設えが、テンコ盛りになっています。

建築家の自己満足なのでしょうか。
家主さんも、予めいろいろ設えがあるほうが部屋は埋る。 と思われるのでしょうか‥。
ニーズに応える、ということでいえば、まったく逆効果だと思っています。

私が計画する賃貸集合住宅の空間は
予算も機能も、できるだけシンプルでフレキシブルなものになるよう、心がけています。


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