- 大澤 眞知子
- Super World Club 代表
- カナダ留学・クリティカルシンキング専門家
以前から疑問の多い「1年間のみの高校留学」についてご相談をいただきました。
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高校2年生の娘が高校を1年休学し、オーストラリアの高校に留学したいと希望しております。
私自身も高校卒業後1年の留学経験があり大賛成。 私費留学になりますので費用は400万円位かかりますが承知しています。
費用の件も含め周りは大反対しております。
「それだけのお金をたった1年にかけてそれなりの価値は得られない」
「大学に行ってから学校から交換留学で行けば単位もとれるし安くて安心」
「日本の高校は普通に同学年と卒業した方がいい」等々
誰一人賛成する人はいません。
本人は帰国後1歳下の子と高校3年生をやる事に抵抗は感じていませんし、私も長い人生1~2年の遅れはたいしたことがないように思っています。
大学は日本の大学の工学部を希望しております。
どう思われますか?
学年通り同級生と大学受験させ、大学から留学させたほうがいいと思われますか?
17歳の今留学させるメリットが見えなくなってきました。
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正直、内容をよく理解するのにしばらくかかりました。
なぜかと言うと、周りの方と同様、私にもやはり「留学の目的」が見えません。
このサイトでも「留学」に関するお問い合わせに多くアドバイスをしていますが、情報不足のためか「留学の意味」がよく見えてない方がたくさんいらっしゃるようです。
その中でも、今回のご質問を読み、以前Q&A「子供に留学させたい。お勧めの時期は?国は?」に回答した内容を思い出しました。
今でもかなりのアクセスをいただいている回答です。
まずは、その回答を一度お読みください。 その回答内容を基盤とした上で疑問に思うところを書きだしてみました。
1. 日本の高校生が一年、英語圏の高校を体験することは、単なる「海外体験」で「留学」と呼ぶには無理があると思います。
このコラム(「どうしても留学したい!」-なぜですか?)にも書いたように、「留学」とは
「ある国に留まり、その国でしか得ることの出来ない知識などを得るために勉強すること」と定義すべきだと考えます。
私費留学・交換留学に関わらず、オーストラリアの高校に一年間「お客さん」としておいてもらい、単位などは特に関係なく学校生活を体験するだけ。
現地の同級生たちのレベルで一緒に勉強することはまず無理です。 英語とクリティカルシンキングの能力がはるかに低いからです。
この体験は「留学」ではなく、「旅行」として扱うべきだと思います。
英語圏に「旅行」し、英語でのコミュニケーションに苦労したのと同じ程度の成果しか見込めないからです。
英語能力が飛躍的に上がるわけでもありません。
疑問:では、なぜわざわざ高校を休学してまで行く目的は?
単に「海外体験」ならば、長期の休みを利用しても可能なはずですね。
「英語圏」での「体験」の目的が明確であり、今この時に絶対必要だという理由が知りたいです。
その理由なしでは、上記のように疑問を感じます。
2. 「理由」に疑問を感じるわけは、結局日本の大学に進学をご希望だということです。
日本の大学に行くのなら、今なぜオーストラリアに行く必要がありますか?
日本の若者がカナダの高校・大学で学ぶ助けを長年やっておりますが、「留学」とは、そこで学ぶことが、また学ぶ環境が(クリティカルシンキングのある社会環境など)、本人の次のステップに必要であり、大いなる利点になる意義を持つものと考えております。
「高校留学」の場合、例えばカナダの高校の卒業資格を取得することは、カナダ・アメリカのみならず世界の大学で勉強出来る能力が身につきますし、そこで成功する確率が非常に高くなります。
高校に通った地元とのネットワークも、大学または社会に出た際に大いなる武器となります。
そこまでの深い成果があるわけでもない「1年の体験」を希望なさるのはなぜですか?
英語力もそう高くなるわけでもなく、クリティカルシンキングが理解出来るようになるわけでもなく、1年ほどでは地元の大人たち、また高校の同級生たちともネットワークを作る可能性は非常に低いです。
しかも、日本の大学受験をし、日本の大学に進学希望であれば、この一年のオーストラリア体験の何がプラスとなりますか?
やはり目的が見えて来ません。
3. 大学から留学する選択肢についても書いていらっしゃいますね。
結局、最終的には「留学」がご希望ですか?
それでは、なぜ日本の大学に行かれますか?
日本の大学からの1~2年の体験「留学」なるものの効果も非常に限られていることも残念ながら現実です。
英語の能力が低すぎるので、ESL(英語を母国語としない生徒のためのコース)で適当に過ごして帰国するケースがほとんどです。
(カナダの大学などでもあくまでも「ビジネスの一環」として日本の大学から学生を受け入れているところが多いですが、日本から送られてくる受け身な学生の「英語レベル」の低さに正直辟易としているようですよ。)
結局「留学」がご希望なら:
このままオーストラリアの高校に正規入学し(結局費用は同じですから)、卒業に必要な単位を取り(これも簡単ではありませんけどねーコラムに書いています)、その後オーストラリアの大学に進学するのも選択しだと思います。
(ところで、オーストラリアを希望なさる理由は何でしょう。 その目的は? ここも大切な部分です。)
または、日本の高校在学中に英語圏の大学レベルに見合う能力の準備をし、高校卒業後に英語圏に進学する。
正直、これが最良の選択しだと考えます。
以上のように、残念ながら、希望なさっている選択に一貫性がなく、理解に困難を覚えてしまいました。
周りでアドバイスなさっている方たちも、おそらく同じ???をお持ちだと思います。
本当の意味の「留学」を選択しに選ばれた場合は、またご相談下さい。
適切なアドバイスが出来ると思います。
Good luck!
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カナダの小・中・高校の教育課程を基にした指導をしています。
クリティカルシンキングの基本が出来た生徒は「カナダの小さな町での留学・ボランティア」で自分本来の能力を発揮中です。
Super World Club(大澤眞知子、Robert McMillan)
このコラムの執筆専門家
- 大澤 眞知子
- (カナダ留学・クリティカルシンキング専門家)
- Super World Club 代表
カナダにいらっしゃい!
カナダ 在住。パンデミック後のNew Normal 留学をサポート。変わってしまった留学への強力な準備として UX English主催。[Essay Basics] [Critical Thinking] など。カナダから日本に向けての本格的オンライン留学準備レッスン・カナダクラブ運営。
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