米国特許判例紹介:プロファイルクレームの保護適格性~画像処理技術のクレームの仕方~ - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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米国特許判例紹介:プロファイルクレームの保護適格性~画像処理技術のクレームの仕方~

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プロファイルクレームの保護適格性

~画像処理技術のクレームの仕方~

米国特許判例紹介(111)

2014年9月12日

執筆者 河野特許事務所 弁理士 河野 英仁

 

DIGITECH IMAGE TECHNOLOGIES, LLC,

Plaintiff-Appellant,

v.

ELECTRONICS FOR IMAGING, INC., et al.,

Defendants-Appellees,

 

1.概要

 画像処理、音声処理、圧縮処理、暗号化処理等のデジタルデータ処理技術に関しては、ハードウェアとの結びつきは必ずしも必要とされない。そのため係る技術においては、クレーム中にてハードウェアに対する記載が希薄となり、場合によっては保護適格性のない発明として拒絶されるリスクが高くなる。

 

 本事件では、画像処理技術において、「装置プロファイル」とする主題がクレームされていた他、当該装置プロファイルを生成して組み合わせる方法についてもクレームされており、「装置プロファイル」クレーム及び「方法」クレームの保護適格性の有無が問題となった。

 

 連邦地裁及びCAFCともに、装置プロファイルクレームは保護適格性のないカテゴリーのクレームであり、また当該装置プロファイルを用いた方法クレームについては、画像プロセッサとの結びつきがないとして同じく保護適格性がなく無効とする判決をなした。

 

 

2.背景

(1)特許の内容

 Digitechは、米国特許第6,128,415(以下、415特許という)の譲受人である。415特許は、ポラロイド社により1996年に出願されたものであり、デジタル画像処理システム内の装置の空間特性及び色特性を表現する改良されたデバイスプロフィールの生成及び使用に関する技術である。

 一般的に、デジタル画像処理は、電子的にデジタルカメラ等のソースデバイスを用いてシーン画像を取り込み、当該画像を適宜変更し、当該変更された画像をカラープリンタ等の出力装置へ転送する。参考図1は415特許の代表図である。

 

 

 参考図1 415特許の代表図

 

 画像装置は、何らかの歪みレベルを、画像の色特性及び空間特性上にインポーズする。異なる装置(例えば、デジタルカメラ、モニタ、テレビ、プリンタ等)上では、わずかに色特性及び空間特性の範囲が異なっているため、この歪みが発生する。

 

 先行技術では、一定の装置依存ソリューション及び装置非依存パラダイムを使用することによりこれらの歪み修正を行っていた。装置依存ソリューションは、キャリブレーションを行い装置自身の色及び空間特性を変更する。一方、装置非依存ソリューションは、画像のピクセルデータを、装置依存フォーマットから非依存色空間へ変換するよう動作し、多くの出力装置の歪みレベルを減少させる。

 

 415特許における装置非依存ソリューションは、色情報が制限されており、ソース装置及び出力装置双方の色特性を示す「装置プロフィール」を生成する。これにより、より正確に画像ピクセルデータを、非依存色空間へソース装置及び出力装置全域にて変換することを可能としている。

 

 また415特許は、画像装置の空間特性及び色特性の双方をキャプチャすべく、装置非依存パラダイムを拡張しており、また色特性情報及び空間特性情報の双方を含む装置プロファイルを開示している。

 

 争点となったプロファイルクレーム1及び26は以下のとおりである。

 

1.画像を取り込み、変換し、またはレンダリングを行うためにデジタル画像再生システムにおける装置の特性を記述する装置プロファイルにおいて、

 装置非依存色空間に対する、画像の色情報コンテンツに係る装置依存変換を記述する第1データと、

 前記装置非依存色空間において、画像の空間情報コンテンツに係る装置依存変換を記述する第2データと

を備える。

 

26. 画像を取り込み、変換し、またはレンダリングを行うためにデジタル画像再生システムにおける装置特性を記述する装置プロファイルにおいて、

 装置非依存色空間に対して、画像の空間情報コンテンツに係る装置依存変換を記述するデータを含み、

 空間刺激及び前記装置の装置反応を通じて、前記データは、空間特性機能により示される。

 

 またこれら装置プロファイルクレームに対応する方法クレームは以下のとおりである。

 

10.画像をキャプチャし、変換し、またはレンダリングを行うデジタル画像再生システムにおける装置特性を記述する装置プロファイルを生成する方法において、

 計測された色刺激及び装置反応特性機能の使用を通じて、装置非依存色空間に対して、画像の色情報コンテンツの装置依存変換を記述する第1データを生成し、

 空間刺激及び装置反応特性機能の使用を通じて、前記装置非依存色空間において、画像の空間情報コンテンツの装置依存変換を記述する第2データを生成し、

前記第1及び第2データを装置プロファイルに組み合わせる。

 

(2)訴訟の提起

 原告は、32もの被告に対し、カリフォルニア州連邦地裁に特許権侵害訴訟を提起した。原告が主張したクレームは415特許の1-6,9,26-31である。これらのクレームは装置プロファイルに関し、クレーム10-15は、デバイスプロファイルを生成する方法である。

 

  2013年7月3日、被告は415特許の主張されているクレームが米国特許法第101条の規定に反するとの略式判決の申し立てを行った。2013年7月31日、地裁は被告の申し立てを認め、全てのクレームは保護適格性を欠くと判断した。原告はこれを不服としてCAFCへ控訴した。

 

 

3.CAFCでの争点

争点1 装置プロファイルクレームが特許保護適格性を有するか否か

 

争点2 装置プロファイルを生成する方法クレームが特許保護適格性を有するか否か

 

 

4.CAFCの判断

結論1: 装置プロファイルクレームは法上のカテゴリーに属さず無効である。

 

 原告は、415特許でクレームされた「デバイスプロファイル」は、デジタル画像処理システムにおいて、処理装置の設計及びキャリブレーションに不可欠な部分である有形のオブジェクトであるため、米国特許法第101条に基づく保護適格性を有すると主張した。CAFCは当該原告の主張に同意しなかった。その理由は以下のとおりである。

 

 米国特許法第101は法上の発明として以下のとおり規定している。

 

 新規かつ有用な方法,機械,製造物若しくは組成物,又はそれについての新規かつ有用な改良を発明又は発見した者は,本法の定める条件及び要件に従って,それについての特許を取得することができる。

 

 「方法」クレームを除き、全てのカテゴリーについて、保護適格性あるものは、何らかの物理的または有形の形態で存在しなければならない。「機械」として米国特許法第101条の適格を満たすためには、クレーム発明は、「明確なもの、パーツ、または特定の装置、及び装置の組み合わせからなるもの」でなければならない。

 

 また「製造物」として適格性を有するためには、発明は、人造または人工の手段を通じて新たな形態、質、特性またはその組み合わせが与えられる有形のものであることが必要である。同様に、物の「組成物」は2つまたはそれより多くの物質の組み合わせが必要である。

 

 ここで、415特許に記載された装置プロファイルは、有形のものでなくまた物理的なものでもなく、保護適格性あるカテゴリーに属さない

 

 装置プロファイルクレームにおける構成要件は「装置非依存色空間に対する、画像の色情報コンテンツに係る装置依存変換を記述する第1データ」、及び、「前記装置非依存色空間において、画像の空間情報コンテンツに係る装置依存変換を記述する第2データ」であり、装置依存変換を記述する2つのセットのデータにより構成されており、一つは色情報データセット、であり、もう一つは空間情報用データセットである。

 

 このようにクレームは、この情報のいかなる有形の具象化に向けられているわけではなく、すなわち物理的なメモリまたは他の媒体にて具象化されているわけではなく、また、デジタル処理システムにおける有形部分をクレームしているのでもない

 

 このようにクレームは、非有形形態の情報に向けられていることからCAFCは415特許における装置プロファイルクレームは、米国特許法第101条におけるいかなるカテゴリーにも属さないと判断した。

 

結論2: 方法クレームは画像プロセッサとの結びつきがなく保護適格性を有さない。

 原告は、415特許の方法クレームは、特にデジタル画像処理システムに結びついており、かつ、デジタル画像の変換に不可欠な装置プロファイルを生成する方法を記述しているため保護適格性を有すると主張した。CAFCは当該原告の主張に同意しなかった。その理由は以下のとおりである。

 

 CAFCは、以下に示す方法クレームは、数学的補正を通じて情報をオーガナイズするプロセスを記述しているだけであり、特別な構造または機械に結びついていないため、抽象的なアイデアであると判断した。

 

10.画像をキャプチャし、変換し、またはレンダリングを行うデジタル画像再生システムにおける装置特性を記述する装置プロファイルを生成する方法において、

 計測された色刺激及び装置反応特性機能の使用を通じて、装置非依存色空間に対して、画像の色情報コンテンツの装置依存変換を記述する第1データを生成し、

 空間刺激及び装置反応特性機能の使用を通じて、前記装置非依存色空間において、画像の空間情報コンテンツの装置依存変換を記述する第2データを生成し、

前記第1及び第2データを装置プロファイルに組み合わせる。

 

 上述した方法クレームは、2つのデータセットを取得するプロセスと、これらを一つのデータセットに組み合わせて装置プロファイルとするプロセスとを記述している。2つのデータセットは、存在する情報、すなわち計測した色刺激、空間刺激及び装置反応特性機能を取得し、この情報を新しい形態へオーガナイズすることにより生成される。

 

 当該方法クレームはこのように、物理的な装置からの入力を要求せずに、データを収集し組み合わせるという保護適格性のない抽象的プロセスに言及している。

 

 方法クレームの文言には明示的に方法と画像プロセッサとが結びついておらず、2つのデータセットを組み合わせて装置プロファイルとするプロセスに言及しているだけである。クレームのプリアンブル(おいて書き部分)には、「デジタル画像再生システム」と言及されているが、単に発明の目的または使用意図を述べているだけであり、クレームの範囲を限定するものではない。

 

 CAFCは、451特許における方法クレームは装置プロファイルそのものを全てカバーする上、あまりに抽象的で、全面的なものであり、特許保護適格性を有さないと判断した。

 

 

5.結論

 CAFCは装置プロファイルクレーム及び装置プロファイルを生成する方法クレーム共に保護適格性がないとする地裁の判断を維持する判決をなした。

 

 

6.コメント

 ビジネス関連発明の特許保護適格性に対しては、CLS v. Alice最高裁事件にて争われたが、本事件では画像処理技術に係る発明についての特許保護適格性が問題となった。

 

 クレームのカテゴリーは米国特許法第101条に規定されたものに限られ、プログラムクレーム、信号クレーム、及び本事件のようなプロファイルクレームは認められない

 

 CAFCは、方法クレームについて、物理的な装置、例えば画像処理プロセッサと装置プロファイルとの結びつきがないため、抽象的なアイデアであり、保護適格性がないと判断した。逆に言えば、方法クレームにおける各構成要件(データの生成処理、組み合わせ処理)において、画像処理プロセッサとの結びつきを記載しておけば、保護適格性を有すると判断されていたかもしれない。

 

 もちろん、クレームのプリアンブルに「単にコンピュータを用いて」、「デジタル画像再生システムにおける」等の用途、目的を追記するだけでは十分ではない。Alice最高裁判決以降保護適格性要件が厳しくなることが想定されることから、ハードウェアとの結びつきを考慮したクレームを作成しておくことが必要である。

 

判決 2014年7月11日

以上


【関連事項】

判決の全文は連邦巡回控訴裁判所のホームページから閲覧することができる[PDFファイル]。

http://www.cafc.uscourts.gov/images/stories/opinions-orders/13-1600.Opinion.7-9-2014.1.PDF



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