中国特許判例紹介(35)中国における標準特許とFRAND義務の適用(第3回) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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中国特許判例紹介(35)中国における標準特許とFRAND義務の適用(第3回)

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中国における標準特許とFRAND義務の適用

~公正、合理的、かつ、非差別的なライセンス条件とは~

中国特許判例紹介(35)(第3)

 

2014年8月5日

執筆者 河野特許事務所

弁理士 河野 英仁

 

インターデジタル通信有限公司

                   上訴人(一審被告)

v.

ファーウェイ技術有限公司

                           被上訴人(一審原告)

 

(6)次に,被告が原告に与えた許可費オファーは遙かに該公司がアップル公司及びサムスン公司との間での特許許可使用費を超える。インターデジタル公司が米国証券交易委員会に報告した財務報告では以下の事実を示している。2007年9月6日,IDC公司はアップル株式有限公司と全世界範囲内で、譲渡不可能であり、非独占的であり、固定許可費用とする特許許可協議を契約し,許可期間は2007年6月29日から7年間であり,許可した特許の組み合わせは当時のiphone及び将来の移動電話技術をカバーしており,許可使用費は每季度200万ドルであり,総額5600万ドルであった。

 

 STRATEGY ANALYTICS 研究機構の全世界携帯電話機市場の分析に基づけば,アップル株式有限公司は、2007年から2012年携帯電話機販売総額は1916.92億ドルである。IDC公司はアップル公司が取得した特許費に対し異議はなく,アップル公司の2007年から2012年の販売総額にも相反する意見を提出していない。アップル公司は依然として生産販売しており,該公司は2013年及び2014年依然として販売収入があり,アップル公司の歴史的販売業績数、及び原告の控えめな計算を参考とすれば,2007年から2014年のアップル公司の販売収入は少なくとも3000億ドルに達しており,その計算からすれば,IDC公司がアップル公司に与えた特許許可費率はわずか0.0187%程度である。

 

 インターデジタル公司の《2010年年報》内容に基づけば,2009年,被告はサムスン電子有限公司及びその子会社と、特許許可協議《2009年サムスンPLA》を契約し,サムスン公司に非独占性、全世界範囲内での2G、3G標準下での終端設備及び基礎設備の固定特許権使用費として,総額4億ドル,許可期間は2012年までであった。STRATEGY ANALYTICS 研究機構の全世界携帯電話機市場の分析によれば,サムスン公司は2007から2011年の販売額はそれぞれ:242.13億ドル、262.22億ドル、274.78億ドル、330.34億ドル、451.94億ドルであり,Strategy Analytics公司とサムスン公司の予測では2012年の販売額は536.10億ドル。許可費率計算に基づけば,IDC公司がサムスン公司に与えた特許許可費率は約0.19%である。

 

 以上からすれば、被告が原告に許可した特許許可使用率はそのアップル公司に許可した約100倍,IDC公司がサムスン公司に許可した特許許可使用率の約10であるということが分かる。

 

 原審法院は、被告が、アップル公司及びサムスン公司との間での特許許可において,許可使用の特許及びその範囲が全世界範囲内である一方,本案原告が被告に要求した許可特許は中国だけでの標準必要特許であることを考慮すれば、被告がアップル公司に許可した許可費率が0.0187%という基礎において,特許許可使用費率を0.019%に確定したのは妥当である。

 

 以上の理由により、高級人民法院は0.019%とした原審法院の判断は妥当でないとする被告の主張を退けた。

 

 

5.結論

 高級人民法院は、被告は原告に対し標準必要特許及び出願について使用許諾義務があり、かつ、その使用費率は0.019%であるとした中級人民法院の判断を支持する判決をなした。

 

 

6.コメント

 標準技術特許及びFRAND義務を巡る紛争に関し、中国にて初めて人民法院にて争われた事例である。高級人民法院は原告及び被告が加盟している団体のFRAND義務、民法通則、契約法及び専利法の関連規定を考慮し、被告にFRAND義務を課し、原告に中国特許について使用許諾を認める判決を下した。

 

 さらに、被告と、アップル及びサムスンとの間で設定された使用許諾費率を参照し、原告に対する中国標準特許の使用許諾費率を決定した。被告に対し原告はアップルの約100倍、サムスンの約10倍の使用許諾費率を設定しており、明らかに公平、合理、非差別の義務に反することとなる。高級人民法院は、被告がサムスンとの交渉時に訴訟を提起した状況下での契約であったこと等を考慮し、より正常な状況下で契約がなされたアップルに対する使用許諾率を参照し、同等の使用許諾費率を設定した。今後同様の事件において参考となる事例である。

 

 なお、国家標準特許[1]については国家標準委員会、国家知識産権局が制定した「国家標準と特許に関する管理規定」が2014年1月1日より暫定施行されている。

 

 同規定第9条は以下のとおり規定している。

 

 第9条 国家標準が改訂過程にあり特許に関係する場合、全国専業標準化技術委員会または管理集約単位は適時に特許権者または特許出願人に特許実施許可声明を出すよう要求しなければならない。該声明は特許権者または特許出願人により以下の3つの内容から選択された一つでなければならない。

 

  (一)特許権者または特許出願人は公平、合理、非差別を基礎として,無償でいかなる組織または個人に、国家標準を実施する際その特許を実施することを許可することに同意する;

 

  (二)特許権者または特許出願人は、公平、合理、非差別を基礎として,有償でいかなる組織または個人に、国家標準を実施する際にその特許を実施することを許可することに同意する;

 

  (三)特許権者または特許出願人は、以上2種の方式に基づく特許実施許可に同意しない。

 

 国家標準に関しては本判決を受けて「公平、合理、非差別」を条件とすることを要求している。

 

以上

 


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[1]標準は、国家標準、業界標準、地方標準及び企業標準の4つに分類される。

国家標準は、全国的に統一する必要性のある技術に対して、国務院標準化行政主管部門により制定される標準である。

業界標準は、国家標準は存在しないものの、ある業界について全国的に統一の必要性ある技術に対し、国務院関係行政機関(情報産業部等)により制定され、さらに上層の国務院標準化行政主管部門に登録された標準である。

地方標準は、国家標準および業界標準は存在しないものの、各地方(省、自治区、直轄市)において統一する必要性ある工業製品の安全性や衛生面に係る標準であって、省、自治区、直轄市の標準化行政主管部門により制定され、その上層の国務院関係行政機関と国務院標準化行政主管部門に登録された標準である。

 企業標準は、各企業により制定されるものであり、地方政府の標準化行政主管部門と関係行政主管部門に登録する必要がある標準である。

 

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