(前回の続き)
それでは「ジゼル」Act 2 のご紹介に参りましょう。
Act 1 の明るかった村の風景とは打って代わり、Act 2 の場面は失恋のショックで心臓が破れて亡くなってしまったジゼルの墓地(森の中)になります。
月夜の中、愛するジゼルのお墓の前で彼女への祈りを捧げる傷心の森番ヒラリオンは、気づくと周囲に怪しい鬼火が燃え出した事に怯えて、その場から逃げ出します。
そこに現れたのは、冷たく神秘的な光を放つ美しいウィリー(※)の女王ミルタ。
※ ウィリーというのは、ドイツの "ウィリー伝説" に伝わる妖精の事で、結婚を前にして浮気な恋人に捨てられ婚約のまま死んでしまった踊り好きな娘が、生前満たされなかった踊りへの情熱と異性への復讐心から、安らかな眠りにつけずに彷徨っている魂で、
彼女達は、深夜になると墓を抜け出しては森の中に群れ集まり、通りがかりの若者を捕らえては死ぬまで踊らせるという、美しくも恐ろしい妖婦の様な妖精の事です。
彼女達は花嫁の白い衣裳を装い、頭に花冠をかぶり、エルフの様に怪しい美しさを携えて月光の中を夜な夜な踊るのです。
✿「ジゼル」Act 2 より ✿
( Act 2 の冒頭で踊られる、女王ミルタのソロのシーン )
ミルタ・・・・・市川 忍 (私の元教え子。今はフリーで活躍しています)
このミルタのソロの後に、ウィリー達が彼女に呼び集められて踊られる有名な群舞のシーンがあるのですが、これが本当に大変美しいアンサンブルで魅せてくれます!☆彡
そしてその後、新たにウィリーとなったジゼルが女王ミルタに呼び出され、命令を受けてソロを踊るシーンも圧巻です!
そうしているうちに、ミルタが獲物(若者)の気配を感じ、ウィリー達に身を隠す様に命令します。
そこへジゼルを失った事で、彼女を本当に愛していた事に気付いたアルブレヒトが彼女のお墓を訪れて来ます。
ウィリーとなったジゼルはその彼との再会の中で、彼が真実自分を愛していた事を理解し彼を許すのです。
この場面も又感動的なシーンです。☆彡
彼を許したジゼルは、彼をウィリー達から守ろうと決意します。
そして彼を安全な場所に導こうとして二人が舞台上から去った所に、道に迷ってウィリーに捕らえられてしまったヒラリオンが再登場し、彼は彼女達の死への舞いに引きずり込まれ、心臓が事切れる寸前に彼女たちによって沼に突き落とされ殺されてしまいます。
その後、アルブレヒトも彼女達に見つかり捕えられてしまい、ミルタはジゼルに彼を踊りに誘い殺す様に命じます。
ジゼルは彼が本当に自分を愛してくれていた事をミルタに伝え、彼を助けて欲しいと懇願しますが、その願いは聞き入れてもらえず、ウィリーになったジゼルはその掟に従うしかありません。
(女王の命令に従いながらも、彼を自分の愛の力で何とか守り抜きたいと願うジゼルと、ウィリー達の踊りに巻き込まれて行くアルブレヒトとの有名なパ・ド・ドゥ=二人の愛の踊り)
そしてあともう少しでアルブレヒトの心臓が破れそうになった時、夜明けを告げる鐘が鳴ります。
朝日を浴びれないミルタを始めとするウィリー達は、お墓に戻らなくてはならない為、アルブレヒトの命は助かるのです。
この様に最後まで、彼を愛の力で守り切ったジゼルも又自分のお墓に帰って行かなくてはなりません。
二人の悲しいお別れです。(;_;)~ ♡
死んでしまったジゼルと、これからも生き続けて行かねばならないアルブレヒトは、お互いを思い合っていても決して結ばれる事はないので、最後は独り舞台に残されたアルブレヒトが、ジゼルに感謝と悲しく切ない思いを残すシーンで幕を閉じます。
ちなみにこの「ジゼル」は、バレエダンサーが男女共に主役を演じてみたい作品として、常にダントツの人気を誇る作品でもあります。
それだけ男女の仲の心の機微が表現された作品という事なのでしょう!
大変深く美しい素敵な作品なので、ご興味のある方は是非どこかの劇場に足をお運びになって観てみて下さいませ~♫ _(_^_)_
有名な古典作品ですので、必ずどこかのバレエ団で上演されているくらいバレエ界ではポピュラーな演目です。(^^♪
このコラムの執筆専門家
- 大園 エリカ
- (東京都 / クラシックバレエ教師・振付家)
- 舞踊家(クラシックバレエ) 元プロバレリーナ
natural & elegance
長年プリマとして国内外で活躍。現役引退後は後進の指導とバレエ作品の振付けに専念。バレエ衣裳や頭飾りを作り続けて得たセンスを生かし、自由な発想でのオリジナルデザインの洋服や小物等を作る事と読書が趣味。著書に「人生の奥行き」(文芸社) 2003年