不利益な遡及立法の合憲性(その4・完) - 会計・経理全般 - 専門家プロファイル

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不利益な遡及立法の合憲性(その4・完)

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  1. 法人・ビジネス
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発表 実務に役立つ判例紹介
ここまで3回に渡って、不利益な遡及立法の合憲性を巡る3つの判例
福岡地裁平成20年1月29日判決(全部取消・納税者勝訴)
東京地裁平成20年2月14日判決(請求棄却)
千葉地裁平成20年5月16日判決(請求棄却)
を検討してきた。

結果は1勝2敗で、納税者には分が悪い結果になっている。
しかし、福岡地裁の論理はオーソドックスな論理展開をしているものの、
東京地裁、千葉地裁の論理には、
本件改正の内容に対する嫌悪感がチラついているように見える。

つまり、公平な課税の実現のためには、法律の大前提であるはずの
法律の遡及適用の禁止を無視してもいいではないかという
先入観が見え隠れするのである。

例えば、千葉地裁では、
「これらの実施を翌年度まで遅らせれば(略)、その間に節税を
ねらいにした不当な低価による土地取引が横行しかねず、これが
資産デフレをもたらすとの懸念によるものであり、特に後者の点は、
現にその与党である自民党の平成16年度税制改正大綱が日本経済新聞に
報道された直後ころから、年内の駆け込み土地売却を勧める税理士等の
提案がインターネットのホームページに掲載される等の動きが
みられたことからも、単なる懸念にとどまらず現実性を帯びていた」
との指摘である。

確かに、この頃、指摘されているような土地売却を謳う税理士は
そこそこいたように思います。大学院でも、修士論文の追い込みで
ありながら、この件への対応に振り回されて、論文どころでは
なくなっていた院生が数名いました。

しかし、節税をねらいにした「不当」な低価については、
不動産屋が個人事業であればともかく、不動産屋が法人であれば、
廉売により購入したら、時価での受贈益課税すべきですよね。
実際に土地が動いていたら、岩瀬事件のように
私法行為による否認を使って、贈与で課税できるのではないでしょうか?
岩瀬事件では「7億円の土地」と「4億円の土地+3億円の現金」の
取引でしたが、一方的な売買だけであれば、この論理を使わないのでしょうか?
そんなに国税庁は、事件毎に態度を変える日和見主義なのでしょうか?

東京地裁や千葉地裁の判断は、
金子先生の分類によっても、狭義の意味での合法的な節税行為になる行為を
脱法行為とでも言うべき「法の網の目を掻い潜る」租税回避と同視する
学問的に見て歪んだ先入観に基づいてなされた判断であると考える。

悪質な「不当な低価」で売買する「不当な課税逃れ」を否認するために、
「私法行為による否認」という論理が生み出されてきたと考えますが、
その結果として、法律が許してきた合法的な節税さえ
法改正の遡及適用によってすべて否認されようというのであろうか。
国税庁および裁判所の判断ミスについて、猛省を求めたい。

遡及適用の問題と租税回避の問題は全く別次元の話であって、
裁判所の判断基準として、「不当」な取引がなされる可能性が
持ち出されること自体、おかしいのではないでしょうか。

また、期間税という問題については、所得税は暦年と決められて、
暦年で法律を適用しなければならないという前提で検討されているように
思いますが、本当にそれでいいのですか?
期間税であるというだけで、遡及適用が一切認められないのは、
予測可能性を著しく害します。

また、東京地裁および千葉地裁は、一応の周知ができていることを
前提に判決はかかれておりますが、それでは信義則の問題はどうでしょうか?
改正前の法律ですから、まさに信義則の対象となる公的見解ですね。
3事例とも更正の請求による事例なので、なんとも言えませんが、
もし平成14年分以前の申告書を用いて申告されて、
間違えて損益通算してしまった方の処分であれば、
少なくとも加算税の取消事由になるでしょうね。

また、一部の税理士の行為が、裁判所に使われてしまった感はありますが、
平成16年1月の税理士会の支部での賀詞交換会の時点で、
どうする?とか、どうした?といった話があったように思います。
本当に周知されていたんですかね?

また、もう1つ、重要な懸念があります。
東京地裁や千葉地裁の論理から言うと、
重要性・緊急性・必要性がそろったら、年の中途でも、
年初にさかのぼって適用することに合理性があると考えられるんですよね?
そうすると、今度の臨時国会で遡及立法されてしまっても、
同じ判断をするんですかね?

これからの税理士はどうやって専門家責任を果たせばいいのでしょうか?
リスクばかり大きくなって、やることの出来る行為は
会計士や弁護士より少ないなんて、この業界に未来はあるのだろうか?

この3事例を読むとそんな重いことを考えずにはいられません。

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