日経記事;『東レ「脱自前」で世界攻略 米韓2社を傘下に、連携始動 東南アに汎用品、時間買う』に関する考察 - アライアンス・事業提携 - 専門家プロファイル

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日経記事;『東レ「脱自前」で世界攻略 米韓2社を傘下に、連携始動 東南アに汎用品、時間買う』に関する考察

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おはようございます。
グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー 山本 雅暁です。

7月10日付の日経新聞に、『ビジネスTODAY東レ「脱自前」で世界攻略 米韓2社を傘下に、連携始動 東南アに汎用品、時間買う』 のタイトルで記事が掲載されました。

本日は、この記事に関して考えを述べます。

記事の主な内容は以下の通りです。

『炭素繊維など独自技術で市場を開拓してきた東レが「脱自前主義」を加速させる。計1千億円で買収した韓国の繊維・水処理膜大手、米炭素繊維メーカーの2社と連携策に動き始めた。

狙いは新興国。高性能品から汎用品までそろえた圧倒的な世界シェアを武器に勝負をかける。大型M&A(合併・買収)の封印を解いた日覚(にっかく)昭広社長流のスピード経営は実るか。

「2020年までの長期計画で規模拡大の主戦場は海外。特に韓国は重要拠点だ」。9日、東レの日覚社長は買収した韓国子会社「東レケミカルコリア」(旧ウンジンケミカル)の経営ビジョン発表会で強調した。

買収企業は家庭用浄水器に使う水処理膜に強く、海水淡水化など産業用に強い東レとは補完関係にある。単純合算すると、水処理膜(逆浸透膜)の世界シェアは約30%と「首位の米ダウ・ケミカルに肩を並べる」(東レ)。中間層の台頭で家庭用浄水器が伸びる東南アジアなどを開拓できる。

さらに東レケミカルは特殊なポリエステル短繊維の技術を持つ。同繊維は紙おむつの不織布に使われ、肌触りの良さが特徴だ。東レは昨年6月にインドネシアで紙おむつ向けポリプロピレン長繊維の不織布工場を稼働しており、新興国で伸びる紙おむつ向け材料の品ぞろえ強化も見込める。

一見唐突に見える韓国企業の買収だが、実は両社の関係は40年前にさかのぼる。東レケミカルの前身「第一合繊」はもともと、韓国サムスングループの繊維部門。東レは同社設立にも関わり、ポリエステル繊維製造の技術指導をしてきた。

1990年代にサムスングループの事業再編などで第一合繊が分割された後、東レは08年に一部の部門を子会社化していた。今回は長年続く人的関係を生かして、残る部門を買収した格好だ。

炭素繊維や水処理膜の研究開発を50年近く続けるなど、東レは長年自前主義を貫いてきた。前社長で、現在は経団連会長も務める榊原定征会長がこだわったのが「イノベーション(技術革新)」。

業界トップ企業と共同で新素材を開発する戦略は、米ボーイングや衣料品大手「ユニクロ」との関係構築につながった。

日覚社長は榊原氏が築いた技術力を核にしながら、新興国など成長市場の開拓を優先課題に据える。就任翌年の2011年にはあえて「20年前後に売上高を3兆円に倍増させる」という高い目標を掲げた。

新興国攻略には自前の高性能品だけでは難しく、「量的拡大できる汎用品の品ぞろえが不可欠」(日覚社長)。その不足するピースを補う手段がM&Aだった。

米炭素繊維大手ゾルテックの買収も同じ文脈にある。炭素繊維の世界出荷シェアを2割から3割に高めるだけではない。狙いは汎用品の取得だ。

名古屋市内にある東レの自動車部品の開発拠点「オートモーティブセンター」。国内外の自動車メーカーの開発担当者が通う同センターで今春から、ゾルテック製の炭素繊維を使った自動車部品の研究が始まった。

東レの炭素繊維は米ボーイングやシェールガスの圧力容器にも使われる高性能品に強みがある。自動車でも独ダイムラーと提携し、車体分野への応用を研究中。他社とも共同開発を進めるがコストが高く、現状では高級スポーツカーなどの採用にとどまっていた。

コストが安いゾルテック製を使えば、自動車分野への展開を早めることが可能。対象が500万円の高級車から、100万円台の普及車まで広がる可能性がある。

「日本では最先端品を作り、海外で量的拡大をするのがグローバル経営の基本的な考え方だ」。日覚社長は韓国での会見でこう説明した。すでにM&Aで1千億円を投じたが、16年度までの新中計では別途2千億円の投資枠を確保した。

技術開発や人材育成に長い時間をかけて市場シェアトップの座を手にしてきた東レ。今後のM&Aでも「自前の技術との相乗効果が期待できる案件にしか投資はしない」(日覚社長)。欧米大手との競合が激化するなか、M&A戦略で成長スピードを速める日覚流の手腕が試される。』


東レの炭素繊維技術については、本ブログ・コラムで何度か取り上げました。現在の炭素繊維技術の開発・実用化は、東レや帝人などの国内企業が長年多額の投資を着実に行ってきたことにより実現できたと言って過言ではありません。

この努力が実を結んで、航空機などの業務用途で多くの炭素繊維が使われるようになっています。炭素繊維は、鉄に比べて軽量であり、耐摩耗性、耐熱性、熱伸縮性、耐酸性、電気伝導性に優れているなど数多くの長所・利点をもっています。

炭素繊維の難点は、製造コストの高さ[や加工の難しさになります。これらの点がネックになってなかなか導入が進みませんでした。

産業用途でも最高度の条件が要求される航空機に、東レの炭素繊維が使用されていることは、高性能・高機能分野への実用化は、一つの大きな節目を超えたとみます。

もちろん、今後も東レや帝人などの国内企業は、更なる研究開発を続けて、より高付加価値な炭素繊維製品の開発・実用化を続けることは、確実です。

さらに、炭素繊維の事業領域を広げるためには、大量の鉄製品を使っている自動車需要を取り込む必要があります。

自動車需要を取り込むには、鉄製品と競合できる販売価格帯まで、炭素繊維製品価格を下げることが必要です。

本日の記事にありますように、現時点では、炭素繊維製品は高級スポーツカーに採用されているだけです。

量産車に採用されるには、更なる開発・実用化を進める必要があります。東レや帝人などの国内企業が、今まで行ってきた地道な開発・実用化努力を続ければ、将来、低価格の炭素繊維製品が出ることは確実です。

ポイントは、何時実用化されるかです。

今回、東レは、普及型炭素繊維製品(汎用品)の開発・実用化を、米炭素繊維大手ゾルテックの買収で、当社がもつ技術・ノウハウ・製品を獲得しました。

東レは、炭素繊維製品の開発・実用化を全て自前の研究陣で行ってきました。これは、競争力を最大化して徹底的な差別化・差異化を実現することと、研究開発ノウハウの社外への流出阻止などが主目的となっています。

ゾルテックの買収は、東レが短時間で汎用品の技術・ノウハウを獲得できることを意味します。買収しますので、旧ゾルテックの技術者が大量に辞めない限り、当該知財情報は、社内に残りますし、流出もありません。

東レとゾルテックの技術・ノウハウがうまく融合できれば、東レにとっては、炭素繊維製品の幅が広がりますので、量産車への導入をより短期間に可能にできることになります。

ゾルテックの技術・ノウハウを取り込むことは、今までの東レの自前主義と矛盾することではなく、東レ本体の技術力向上に大いに貢献するとみています。

東レがゾルテックや韓国ウンジンケミカルの買収は、上記目的のためであり、取り込んで消化・発展させていけば、東レの自前技術になります。

世界市場で活動するメーカーの動きは早く、すべての開発・実用化の作業を自前の技術陣だけで行うとすると、他社との開発・実用化競争に遅れをとる可能性があります。

米国の場合、多くの世界企業は、競争力強化のため、M&A手段を多用して、ベンチャーや他企業を買収しています。他社を買収することで、開発・実用化のリードタイムを短くすると共に、買収した企業の商圏も手に入れることができます。

東レが買収した企業とうまく融合して、より高効率な開発体制を構築できれば、さらに競争力が高まります。

今後の東レの事業展開に注目していきます。

ベンチャーや中小企業は、米国や国内大手と同じように、技術力強化や事業領域拡大のために、M&Aを多用することは、難しいです。

しかし、他社の強みを活用して自社の開発・実用化能力や販路開拓の強化などを、M&Aだけでなく、他社との事業連携・協業まで幅広い手段を考え、実行することにより実現できます。

開発・実用化を全て自前で行う方法と、他社の買収や他社との連携・協業の手法を柔軟に行う方法を比較して、競争力強化と開発・実用化のリードタイム短縮をはかる経営姿勢が重要になっています。

東レの動きは、その参考事例の一つになります。

よろしくお願いいたします。

グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー GBM&A 山本 雅暁

 

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