中国商標判例紹介(6)(第2回):中国悪意登録商標に対する著作権の活用 - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
河野特許事務所 弁理士
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対象:特許・商標・著作権

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中国商標判例紹介(6)(第2回):中国悪意登録商標に対する著作権の活用

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中国悪意登録商標に対する著作権の活用

~著作権の存在により先取り登録商標の取り消しに成功した事例~

中国商標判例紹介(6)(第2回)

2014年7月11日

執筆者 河野特許事務所 弁理士 河野 英仁

 

 

米国NBA産物株式有限公司

                           原告(一審原告)

v.

国家工商行政管理総局商標評審委員

                           被告(一審被告)

3.高級人民法院での争点

争点 如何にして当事者が主張する先著作権の帰属を認定するか

 高級人民法院では、原告の図形に著作権が認められるか否か、また当該著作権により商標登録を取り消すことができるか否かが問題となった。

 

 

4.高級人民法院法院の判断

結論:原告が先の著作権を享有する事を推定できる。

 商標法第32条に規定する“先に存在する他人の権利”とは、登録商標権以外のその他先に存在する民事権利または民事権益をいい、これには先著作権も含まれる。米国及び中国は共に《文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約》の加盟国であり、条約に基づき加盟国の国民の作品に対し本国著作権法に基づき保護を与えなければならない。

 

 本案において,原告は米国企業であり,“ブルズ図形”は米国全国バスケットボールリーグシカゴブルズチームのチームマークである。同時に原告の先登録の引用商標であり,当該図形は独創性及び美感を有しており,《中華人民共和国著作権法》にいう美術作品に属し,保護を受ける事ができる。

 

 “主張する側が挙証する”という基本原則に基づき,原告は、本美術作品の著作権を主張し,証拠を提出して証明しなければならない。評審委員会及び北京市第一中級人民法院は共に,商標登録証では著作権帰属を証明することができないと判断したが、高級人民法院は、商標登録証に加え、原告が提出した会社の規約等の証拠をも総合的に考慮し、ブルズ図形についての著作権の帰属について検討を行った。

 

 シカゴブルズチームは米国全国バスケットボールリーグのチームクラブの一つであり、原告は異議過程において会社の登録規約を提出した。当該規約には、原告がNBA協会に所属するチームクラブのサービス標章、商標、商号、版権に対し権利を有することが示されている。

 

 また,引用商標図形と原告が主張する先著作権の作品“ブルズ図形”は同一であり,引用商標の申請日は268商標申請日よりも前であることから、“ブルズ図形”作品の創作完成時期は、268商標の申請日の前であることが証明できる。高級人民法院は、これらに反証する証拠が存在しないことから、原告が“ブルズ図形”美術作品の著作権者であると推定した。

 

 268商標は、ブルズ図形に加え文字“華歆”を含んでいるが、ブルズ図形部分が占める割合が大きく,該図形と原告が有する先著作権の“ブルズ図形”美術作品の構図方式、表現手法、整体効果等の面において極めて近似しており,実質的に似通っている。

 

 以上の理由により、高級人民法院は、268商標の登録は、原告が享有する先著作権を侵害すると判断した。

 

 

5.結論

 北京市高級人民法院は、中国商標法第32条が適用されないとした評審委員会の審決及び北京市第一中級人民法院の判決を取り消した。

 

 

6.コメント

 本事件では、悪意のある商標登録に対し著作権を活用した事例として参考となる。中国では指定商品及び役務の区分は日本よりも細分化されており、ありとあらゆる商品及び役務を商標権にてカバーすることは事実上不可能である。

 

 本事件の如く先に存在する著作権を立証できれば、悪意のある第三者の商標登録を無効とする事ができる。しかしながら、本事件の如く人民法院は証拠に対して極めて厳格な態度をとっている。著作権を主張する側は、「いつ」、「だれが」、著作物を創作したかの確固たる証拠を提出する必要がある。シカゴブルズのような世界的に著名なスポーツチームでさえ、北京市第一中級人民法院は、証拠不十分として著作権の存在を認めず、高級人民法院も間接的に著作権の帰属を推定したにすぎないのである。

 

 中国国家版権局にて著作権登録を行っておけば、創作完成時期及び著作権者が示された著作権証を証拠として提出でき、容易に勝訴することができる。中国ではコアとなる商品及び役務について徹底した商標登録を行うと共に補完的に著作権登録を行うべきである。

以上


 

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