中国特許判例紹介(34)中国最高人民法院の補正の解釈(第1回) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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中国特許判例紹介(34)中国最高人民法院の補正の解釈(第1回)

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中国最高人民法院の補正の解釈

~用語を削除する補正を行う場合の注意点~

中国特許判例紹介(34)(第1回)

2014年6月13日

執筆者 河野特許事務所 弁理士 河野 英仁

 

株式会社島野

                   再審申請人(一審原告、二審上訴人)

v.

中華人民共和国国家知識産権局特許復審委員会

                           再審被申請人(一審被告、二審被上訴人)

 

1.概要

 中国特許実務において他国と大きく相違するのが補正の範囲である。専利法第33条では補正の範囲について以下のとおり規定している。

 

「出願人は、その特許出願書類について補正することができる。ただし、発明及び実用新型の特許出願書類の補正は、原明細書及び特許請求の範囲に記載された範囲を越えてはならない。」

 

 ここで記載された範囲とは、審査指南(審査指南第2部分第8章5.2.1.1)において以下のとおり規定されている。

 

「当初明細書および請求項の文字どおりに記載された内容と、当初明細書および請求項の文字どおり記載された内容と明細書に添付された図面から直接的に、疑う余地も無く確定できる内容を含む。」

 

 このように、文字どおりに記載された内容に加えて、直接的に、疑う余地も無く確定できる内容と記載されているが、実務上は文字どおりの範囲内でしか補正が認められないことが多い。

 

 本事件において原告は請求項に記載された「円形状のボルト孔」を「円形状の孔」とする補正を行ったところ、復審委員会は専利法第33条違反であるとして特許を無効とした[1]。最高人民法院は一部の請求項を除き同じく新規事項に該当するとして特許を無効とする復審委員会の判断を支持した[2]

 

 

2.背景

(1)特許の内容

 株式会社島野(原告)は、自転車のリヤディレーラに関する発明特許権を有している。特許番号はZL02127848.2(以下、848特許という)である。848特許は1994年2月3日になされた原特許出願の分割出願であり、2006年8月30日に公告された。参考図1は848特許の代表図である。 

 

参考図1 848特許の代表図

 

 

 

(2)訴訟の経緯

 2009年12月11日、賽冠公司は特許復審委員会に無効宣告請求を提出した。賽冠公司は、請求項1、2及び6に対してなされた補正は新規事項追加に該当し、専利法第33条の規定に反するから848特許は無効であると主張した。

 

 争点となった文言は、請求項1、2及び6に記載された「円形孔」の文言である。参考図2はブラケット8を示す説明図である。 

 

参考図2 ブラケット8を示す説明図

 

 リヤディレーラ用ブラケットはL字型の形状をなしており、第1連結手段(8a)及び第2連結手段(8b)を両端に備えている。明細書には第1連結手段8aは円形の第1ボルト孔8a、第2連結手段8bは円形の第2ボルト孔8bと記載されており、円形の第1ボルト孔8aに取り付けボルト15が取り付けられ、円形の第2ボルト孔8bに、取り付けボルト16が取り付けられる。

 

 原告は審査の段階で「円形のボルト孔」を「円形孔」に補正した。当該補正に対し復審委員会は以下のように判断した。「円形孔」は「円形のボルト孔」の上位概念であり,かつ「ボルト孔」の含意とは異なる。機械分野において、円形孔は円形ボルト孔、円形ピン孔、円形のスルー孔、円形の止まり孔、円形のステップ孔等、数多くの種類の円形形状の加工孔を含んでいると、当業者は判断する。

 

 従って、原告が請求項1、3及び6の「円形のボルト孔」、「円形ボルト孔」または「ボルト孔」をまとめて、「円形孔」と補正したことは、明らかに当初明細書及び原請求項の記載されていない内容を含んでおり、当業者が原明細書の記載から直接的に、疑う余地もなく確定できるとはいえず、専利法第33条の規定に反し、請求項1、3及び6は無効であると判断した。

 

 原告はこれを不服として上訴したが、北京市第一中級人民法院及び北京市高級人民法院は復審委員会の判断を支持する判決をなした[3]。原告は判決を不服として最高人民法院に再審請求を行った。

 

 

3.最高人民法院での争点

争点:一部の文言を削除する補正が新規事項追加に該当するか否か

 図面(参考図3参照)には、矢印で示す円形の孔8a,8bが記載されており、また明細書には以下の記載がなされていた。

 

 「前記ボルト孔8aや8bに替え、ブラケット8の一端側に開口する切欠き形の孔を採用したり、ブラケット8に付設した連結ボルトを採用するなど、形状や具体的手段が各種異なる構成を採用して実施してもよい。」

 

  

 このような場合に、「円形のボルト孔」のボルトを削除し「円形孔」と補正するが新規事項追加に該当するか否かが問題となった。

 


⇒第2回に続く



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[1] 特許復審委員会 第15307号決定

[2] 最高人民法院2013年12月27日 (2013)行提字第21号

 

[3] 北京市第一中級人民法院判決 (2011)一中知行初字第1139号

北京市高級人民法院判決 (2011)高行終字第1577号

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