インド特許法の基礎(第11回)(1)~出願公開~ - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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インド特許法の基礎(第11回)(1)~出願公開~

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インド特許法の基礎(第11回)(1)

~出願公開~

 

2014年5月13日

執筆者 河野特許事務所

弁理士 安田 恵 

1.はじめに

 2002年特許法改正[1]により,出願公開制度が審査請求制度と共に導入され,特許庁に係属している特許出願は,原則として出願日又は当該出願の優先日から18ヶ月(規則24条)が経過すると公開されることになった(特許法第11A条(1))。また2005年特許法改正[2]により,早期公開請求制度が導入され,出願公開後,特許付与前の発明に対しても一定の保護が与えられるようになった(第11A条(2),(7))。

 

2.出願公開

(1)特許出願は,早期公開の請求が無い限り,図1及び図2に示すように出願日又は当該出願の優先日のいずれか先の日から18ヶ月の期間は公衆に対して公開されない(第11A条(1),第143条、規則24条)。特許出願は,18ヶ月の期間満了後に公開される。長官が特許出願を公開すべき期間は,通常18ヶ月の期間満了の日から1ヶ月と規定されている(規則24条)。

 
図1:出願公開時期(出願日から18ヶ月) 

 

 

図2:出願公開時期(優先日から18ヶ月)

 

 ただし,次のいずれかに該当する場合,特許出願は公開されない(第11A条(3))。

 (a)特許出願に係る発明が国防目的に関する発明として秘密保持の指示(第35条)が発せられている場合,当該特許出願は公開されない(第11A条(3)(a))。長官は,特許出願に係る発明が,中央政府から国防目的に関連するものとして自己に通知された部類に属するものと認めるとき,又は国防目的に関連するものと認めるときは,当該発明に関する情報の公開等を禁止又は制限すべき旨を指示することができる(第35条)。

 ただし,秘密保持の指示が失効した場合,長官は秘密保持の失効後に当該特許出願を公開する(第11A条(4))。秘密保持の失効日が上述の18ヶ月の満了前である場合は,18ヶ月の期間満了を待って当該出願は公開される。

 

 (b)特許出願が第9条(1)に基づいて放棄された場合,当該特許出願は公開されない(第11A条(3)(b))。つまり,仮明細書を添付した特許出願の日から12ヶ月以内に完全明細書を提出しなかった場合,当該特許出願は放棄されたものとみなされる(第9条(1))。かかる規定により放棄されたものとみなされた特許出願は公開されない。

 

 (c)上記18ヶ月の期間満了日より3ヶ月前に取り下げられた特許出願は公開されない(第11A(3)(c))。

 

(2)出願公開の対象となる特許出願

 通常の特許出願はもちろん,分割出願,条約出願(第2条(1)(c),135条),PCT国内段階出願(第7条(1A)),追加特許(第54条)等の出願も出願公開の対象である(第11A条(1),第16条(3),第138条(4),第139条)。日本の場合,日本語でされた国際特許出願については法上の出願公開は行われず[3](184条の9第4項),外国語でされた国際特許出願は国内公表される(184条の9)。公開された発明を保護する補償金請求権はこれらの公開に基づくものである。インドの場合,全ての特許出願は出願公開の対象であり,特許付与前異議申立,出願審査,公開された発明保護の要件となる発明の公開は,第11A条に基づく出願公開である。

 

(3)特殊な特許出願の公開時期

 PCT国内段階出願(第7条(1A)),分割出願(第16条),追加特許(第54条)は,当該出願の優先日から18ヶ月(規則24条)の満了日,又は各出願の現実の出願日のいずれか後の日以後に出願公開される。例えば,優先日から18ヶ月経過後にPCT国内段階出願を行った場合の出願公開時期は図3の様になる。  

 

図3:PCT国内段階出願を行った場合の出願公開時期の一例

 

(4)出願公開の方法および内容

 特許出願は毎週金曜日に発行される特許公報に掲載される。出願公開の内容には,特許出願の出願日,出願番号,出願人の名称及び住所の明細と,要約書が含まれる。特許公報は,インド特許庁のホームページ[4]で確認することができる。特許公報には特許請求の範囲,明細書等の情報は開示されていないが,インド特許庁のデータベース“IPAIRS”[5]で,願書,特許請求の範囲,明細書および図面の内容を確認することができる。また,出願公開の規定に基づくものでは無いが,特許出願の審査手続きにおいて長官が発行した審査報告等の各種通知,出願人が提出した意見書,外国出願に関する情報等も随時公開されている。

 

3.早期公開請求(2005年改正)

 2005年改正により,出願人は早期公開請求を行うことによって,18ヶ月(規則24条)満了前に出願の内容を公開することが可能になった。後述するように,出願公開された発明に対しては,当該発明の特許が公開日に付与されたものとしての権利を有するため(第11A条(7)),出願公開の時期を早めることによって,発明の早期保護が可能になる。また,出願公開の時期を早めることによって実体審査の完了,付与前異議申立期間の満了時期を早め,早期権利化を促すことができる。

 

(1)早期公開請求の要件

 (a)主体的要件

 特許出願の出願人が,自身の出願を公開するように長官に請求することができる(第11A条(2))。

 

 (b)客体的要件(請求対象)

 早期公開の対象は,完全明細書が添付された通常の特許出願(第7条)である(第11A条(2))。請求対象には,分割出願(第16条),条約出願(第2条(1)(c),135条),PCT国内段階出願(第7条(1A)),追加特許(第54条)等の出願も含まれる。

 

 (c)時期的要件

 早期公開の請求は,18ヶ月(規則24条)の満了前に行わなければならない(第11A条(2))。18ヶ月の満了後は,早期公開の請求が行われずとも当然に公開されるべきだからである。

 なお,実際には18ヶ月(規則24条)の期間満了後,相当の期間が経過しても出願公開されないケースもある。この場合,第11A条に規定する早期公開の請求は行うことができないが,出願公開が遅延している旨を長官に上申することにより,出願公開の遅延を解消することができる。

 

 (d)手続的要件

 早期公開の請求は様式9により行わなければならない(規則24A条)。また出願人は,所定の手数料(第142条,規則7条)を納付しなければならない。なお,2014年特許規則[6]が2014年2月28日に公布され,即日施行された。改正2014年特許規則により,早期公開の手数料が変更された。2014年特許規則によれば,出願人が個人,スモールエンティティ,スモールエンティティ以外の法人のいずれに該当するか,電子手続きか,紙媒体による手続きか等により,手数料が異なる。通常の法人が電子手続きを行う場合の早期公開の手数料は12500ルピーである。

 

(2)早期公開請求の効果

 適法に早期公開の請求がされた場合,長官はできる限り速やかに特許出願を公開しなければならない(第11A条(2))。ただし,特許出願が第11A条(3)(a)~(c)に該当する場合は早期公開を請求しても出願公開されない。早期公開の請求があった場合に長官が出願公開を行うべき時期は,図4に示すように請求があってから1ヶ月である(規則24条)。インドでは規則通りに手続きが進まないことがあるが,手続きの電子化が進んでおり,出願公開は比較的速やかに行われている。例えば,2014年2月28日に出願され,早期公開請求された特許出願(1028/CHE/2014)は2014年3月7日に出願公開されている。

 

図4:早期審査請求を行った場合の出願公開時期

 

 

⇒第2回に続く

 

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[1] “The Patents (Amendment) Act 2002, 25 June 2002”, Sec. 9 (http://ipindia.nic.in/ipr/patent/patents.htm)

[2] “The Patents (Amendment) Act 2005”, Sec. 10 (http://ipindia.nic.in/ipr/patent/patents.htm)

[3] 運用上,再公表公報として公開されている。

[4] “Publications”メニュー中の”Paten Office Journal” (http://ipindia.nic.in/ipr/patent/patents.htm)

[5] http://ipindiaservices.gov.in/patentsearch/search/index.aspx

[6] http://www.ipindia.nic.in/iponew/patent_Amendment_Rules_2014.pdf

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